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26話 初めての休日、初めての外出

長くなりそうなので前後で分割しました

2025/8/27 加筆修正

 今日はあいにくの曇天だ。


 枝葉(グローリー)の収穫には向かないだろうということで、この里に来てから初めての休日となった。


 あれから数日。天気も良かったので、報酬のお茶の葉とマルベリーで小さい背負子(しょいこ)がいっぱいになった。千歳(ちとせ)さんの商店に持って行きたいが、美唄(びばい)さんも、昆布(こんぶ)さんも用事があるそうだ。道は整備されていないが危険はないと聞いたので、時間はかかりそうだが一人で行ってみることにした。


 天気が良い日の薪拾いと枝葉(グローリー)の収穫は、すっかり日課として馴染んでいた。今後は、曇りの日に千歳(ちとせ)さんのお店へ納品に向かうのが、新たな日課になりそうだ。


(雨の日はどうしようかな?外にいると根が生えてきて動けなくなりそうだし、屋内作業を何か考えないと)


 現状、強く握っても滑るので、杖で歩く時も体重をかける事ができないのだ。小さい物を摘まむのも厳しいので、物作り系は難しいだろう。


(その辺も、千歳(ちとせ)さんに相談してみようかな)


 千歳(ちとせ)さんはかなり物知りだと聞いているので、色々と相談に乗ってもらいたい。相談したい内容を思い浮かべながら、身支度を整えていく。


(雨の日の内職の件と、杖があれば買ってみようかな?報酬の買取価格と、商人の品揃えも聞いてみたいな。後は…)


 T&Sに貰ったマッシュルームレザー製の白い外套の上から背負子(しょいこ)を背負い、両手に昆布(こんぶ)さんが拾ってきてくれた杖を装備する。


 里を出る前に、昆布(こんぶ)さんへ商店に行ってくると伝えると『雨が降りそうだから早く帰ってきた方が良いですよ』と言われた。空を見上げると薄曇りで、日は差していないが太陽の位置はなんとか分かる。


(納品して、商品を見て、相談して…お昼までに帰ってくれば大丈夫かな?)


 毎朝歩く練習をした結果、歩く速度はそこそこ速くなった。美唄(びばい)さんの歩幅に合わせて大股で歩いていたが、普通の歩幅で足の回転を上げるのが一番早い事が分かった。今では、お喋りしながら歩く子ども達になら付いて行けるようになっている。


 これも、美唄(びばい)さんの全力疾走を参考にしたおかげだ。目に集中すると良く見えるようになったように、足に集中すると早く動かせるようになってきたのだ。ただ、動かすことに集中しすぎて周りに気が回らず、薪拾いに行く途中で木に頭突きしてひっくり返ってしまった。


 クソガキ1号&2号には馬鹿にされ、昆布(こんぶ)さんには呆れられてしまった。助け起こしてくれたのは、母恋(ぼこい)ちゃんだけだった。


(商店で何かいい物があったら、母恋(ぼこい)ちゃんのお土産に買って帰ろう)


 ギッシ、ギィ、ギッシ、ギィ


 里から離れるにつれて、人が歩いた跡は見えなくなり、大自然の領域へと踏み込む。


 前回は担がれての高速移動だったので道は分からないが、方向だけは分かっている。千歳(ちとせ)さんに繋がっている大樹が木々の上に頭一つ突き出しているので、かなり遠いが目印になってくれている。


(今の速度なら…1時間あれば辿り着けるかな?)


 もっと里の近くに植えてもらえば良かったのにと思ったが、移動できないからか本体を植える場所にはとてもこだわるらしい。寿命は6000年を超える、とても長寿な種族なので、数千年先を見据えて自分の居場所を決めるには、考えなければいけない事が多いのだろう。


 千歳(ちとせ)さんは、森小人族(フォレストピクシ―)が元々住んでいた森にいた、ドライアド族の子孫なのだそうだ。避難してきた当時、まだ子どもだった恵庭(えにわ)族長と千歳(ちとせ)さんは幼馴染らしい。


(災害で同じ故郷を追われた者同士、立場は違えど里を支える為に頑張って来たのかな)


 商店が生まれたきっかけは、エルフの里の生活が安定したことで食料が余り始めたのを聞いた千歳(ちとせ)さんからの提案らしい。その時は『話し相手が欲しいから』と言っていたそうだが、里の役に立つために何かしたかったのではないだろうか。


 今まで商品の補充は、美唄(びばい)さんが月に一回、顔を出す程度だったようだ。外からの商人も頻繁に訪れるわけではないので、籠などの加工品やドライフルーツ、腐葉土などの長期間劣化しづらいものばかりらしい。


◆ ⁂ ◆


 商店に関する話を思い出しながら、歩くこと30分程。木々の間から見える千歳(ちとせ)さんの本体は、近づいてはいるがまだ半分も来ていないようだ。


(慣れてない道とはいえ、美唄(びばい)さんの全力疾走早すぎでしょ…。この前は5分くらいで着いたよね?)


 改めて、彼女の規格外な身体能力を身に染みて感じるワンダ。


 ギッシ、ギィ、ギッシ、ギィ


 商店までは、もう少しかかりそうだ。


(『商店は里のはずれにある』って言ってたけど、ここら辺もまだ里扱いなのかな?まぁ、美唄(びばい)さんにとっては数分の距離なんだろうけど…)


 この辺りまで来ると人の痕跡が全く無く、完全に自然の支配領域だ。大型の熊や鹿のような動物が遠くに見えたが、臆病な性格なようで近づいてくる様子はない。


 この森は樹の密度が低く、曇り空でも光が入ってきて明るい。話に聞いていた通り危険は無さそうなので、散歩のような気分で自然豊かな景色を楽しみながらゆっくりと商店を目指す。


 ギッシ、ギィ、ギッシ、ギィ

 読んでいただき、ありがとうございました!

貴方に、満月の祝福がありますように…


 子供の頃、考え事をしながら歩いていて顔面を強打しました。

歯ぐきからダラダラと流血しながら帰宅する小学生、そんな子供時代でした。

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