24話 評価の変化、新しい出会いの予感
人を変えるのは不可能に近い。自分が変わるのが、一番手っ取り早い。
2025/8/27 加筆修正
昆布さんに籠を持ってもらったまま、エルフの里まで戻って来た。
「かなり時間がかかってしまいましたね。明日はもう少し早めに迎えに行きます」
「すみマせン、よロしクおねガいしマす」
(歩くだけなら、遅い以外は問題なさそうだな。あとは、荷物を持ったまま同じように歩けるかどうか…。また、杖も試してみようかな?)
考え事をしながら歩いていると、前方が何やら騒がしい。あれは…昆布さんとよく一緒にいる人たちだ。
「え!?昆布、あいつと仲良く歩いてる!」「しかも、薪拾いに行ったくせに手ぶらじゃん。自分の荷物持たせて何様よ」「精霊様の遣いだかなんだか知らないけど、ちょっと言ってやろうよ」
こちらの行く手を遮るように囲むと、鬼の首を取ったようにまくし立てて来た。
「ちょっとあんた!自分の荷物くらい自分で持ちなさいよ!」「「「そうよ!そうよ!」」」
「ア…、エッと…」
(それはそうだけど…持ってくれている理由を説明しても、聞いてくれないだろうなぁ。どうしよう…)
と、対応に困って口ごもるワンダ。
それを見かねてか、昆布さんが前に出て、毅然とした態度で言ってくれた。
「皆さん、道を空けてください。枝葉の収穫が遅れてしまいます」
「ちょっと昆布、なんでこんな奴に優しくするのよ」
「見た目は本当に悪いですが、そんなに悪い人じゃ無さそうですよ。では、先を急ぎますので」
「えぇ…?」「ほんとにどうしたの?」「何か変な物でも食べた…?」
昆布さんが庇ったことで、困惑する女性たち。
女性達から離れたところで、昆布さんにお礼を言う。
「かバッてくれテ、ありガとうゴザいましタ」
「別に、まだ完全に信用したわけではありませんから。あくまでも、子ども達の信頼を信用しただけです」
『まだ様子見中』と釘を刺されてしまった。それでも、率先してワンダに辛く当たっていた昆布さんが、擁護に回ってくれた意味は大きい。これをきっかけに、里の人たちの目も、少しずつ変わり始めるかもしれない。
薪置き場に籠を降ろすと、そのまま枝葉の収穫場へと向かう。美唄さんであれば、籠をしょったままワンダを小脇に抱えて移動したに違いない。でも、昆布さんは籠を降ろした後でも、ワンダに歩調を合わせて歩いてくれている。
(最初は怖い人かと思ってたけど、仲良くなったら頼れるお姉さんって感じだな)
「おソくテすみマせン」
「ほんとですよ。でも、自分なりに努力する姿勢はえらいと思いますよ」
「ありガとうごザいマす」
(弟には手を焼かされてるけど、褒めるのも上手だし人を育てるのも上手そうだな)
『杖があったら、もう少し早く歩けるかもしれないので試してみたい』と伝えると『採集中に探してみます』と言ってくれた。
◆ ⁂ ◆
「遅かったですね」
「すみません、遅くなりました」
「おマたセしテすみマせン」
収穫場に到着した時には美唄さんしかおらず、他のメンバーは既に採集へ出発していた。さっそく服を脱がしてもらって、土の上に横になる。昆布さんは、今日の水撒き係が採集から戻ってくると、交代して採集へ向かった。
(そういえば、報酬はお茶とマルベリー以外にもあるのかな?)
美唄さんの手が空いたタイミングで、聞いてみる。
「ビバいさン、キョうのほうシュうなのデすガ」
「今日はお茶にしますか?」
「いエ、おカねデもラえタりハしマせんカ?」
「申し訳ありません。里の中では、物々交換が主でお金のやり取りは行っていないのです」
「そうナんデすカ」
「里のはずれの方に、商店があります。お茶の葉などを持って行けば、買取してもらえますよ。収穫が終わったらご案内しましょう」
「なるホド、ありガとうゴザいます」
こんな森の中に商店があるとは驚いた。
(外部とやり取りする、窓口的な場所なのかな?)
今日の報酬をお茶の葉にしてもらい、試しに買い取ってもらう事にした。
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…




