サイドストーリー 01話 エルフの里
いつも読んでいただいてありがとうございます!
こちらは、本編とはあまり関係が無い小話となっております。
2025/8/23 微修正
恵庭族長と長万部族長から、森小人族とエルフの歴史に関して情報公開が終わったあとの、エルフの里の片隅で…。
森小人族の男性と、エルフの少女が何か話している。
「一族の決まりで、正体を明かすわけにはいかなかったんだ。騙すつもりは無かったんだけど、実は僕…もう大人なんだ。ごめんなさい」
「うんん、”くー君”は悪くないんでしょ?族長さまの言いつけは、ちゃんと守らなきゃだもんね!」
「えーちゃんは、ほんとに賢いな」
「えへへ。でも、”くー君”が大人だったなんて…こんなに小さいのに!」
少女は”くー君”の頭の上に手をかざし、背比べをする。今はまだくー君の方が少しだけ背が高い。でも、成長期まっただ中の少女は、来年には彼を追い越してしまうだろう。
(私が、もっと大きくなったら───)
「森小人族は、成人でこの大きさなんだから…しょうがないだろ!」
種族の特性とはいえ、自分の小柄な体を気にしていたのかもしれない。コンプレックスを刺激され、思わず子どもっぽい口調に戻ってしまった”くー君”。
「大丈夫だよ!”くー君”がちっちゃくても、あたしが面倒見てあげるから!」
(おんぶも抱っこも、お料理も、あんな事やこんな事も…ぜ~んぶ!)
「いいってば、大人なんだから自分でできるし」
少しだけ頬をふくらませて、照れ隠しのように”くー君”は言う。そんな様子を、少女はニコニコしながら見ている。
(ふふっ、大人ぶってる”くー君”かぁわいい〜♡)
「だ〜め!あたしが面倒みるの!」
押しの強さに根負けしたのか、”くー君”はしぶしぶその言葉を受け入れる。えーちゃんは真剣そのものだが、彼にとってはまだ子どもの戯れなのかもしれない。
――彼女がすでに「結婚」という未来を、本気で見据えていることなど、つゆほども知らずに。
「あ~あ!あたしも早く大人になりたいな~!」
(来年には私は92才になるし、”くー君”は大人なんだから。結婚したって、誰も文句言わないよね?”くー君”は私のモノ。絶対に、誰にも、渡さない!)
「そんなに焦らなくても、時間が経てば自然に成長するよ。それより、今この時間を大切にしようよ」
「そういうことじゃないの!もう、大人なのにそんなことも分からないの?」
(でも、そんな所も好き!もっと、もっと”くー君”のことが知りたい!)
「うるさいなぁ…。ほら、皆準備で忙しいんだから手伝いに行こうよ」
「宴会か~。料理班を手伝えば、つまみ食いできるかな?”くー君”は、大人だからお酒飲むの?」
(大人の”くー君”の好物は何かなー?作り方覚えなきゃ!お酒も一緒に飲みたいな~)
「僕は、付き合いで少し飲むくらいだよ。えーちゃんは、まだ飲んじゃダメだからね?」
「えーっ!ちょっとくらい良いじゃん。”くー君”のケチ!」
(お酒そんなに好きじゃないのかな?酔っぱらった”くー君”、見てみたかったのになぁ~)
「大人になったらね。ほら、お手伝いに行くよ!」
「じゃぁ、大人になったら一緒に飲もうね!約束だよ!」
(お酒ってどんな味なのかな~?まぁ、”くー君”と一緒に飲めるなら何でも楽しいよね!)
「分かった、大人になったらね。約束だ」
幼いながらも密かな恋心を抱いていた少女は、想い人が”本当は大人”だったと知り、胸をときめかせた。遠い未来だと思っていたその夢が、思いがけず手の届くところまでやってきた気がして――。
(夢で終わらせるなんて…絶対にない!)
その小さな胸に芽吹いた決意は、静かに、けれど強かに。自分の理想の未来へと、少女は一歩ずつ、計画を進めていくのだった。
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…
仕事ができる人は、やっぱり憧れますね




