表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/50

12話 エルフだけど、エルフじゃない

※エルフに関する設定は、私の妄想の産物であり、ソースはございませんのでご了承ください。

 張り詰めた空気の中、恵庭(えにわ)様が静寂を破った。


「…そろそろ、我々の存在を公にしてもよい頃だと思っておった。この機会に、エルフの里にも伝えようと思う」


恵庭(えにわ)様…」


「儂らがこの隠れ里へ移ってから長い年月が経った。もう、その必要も薄れておるじゃろ」


 と切り出し、エルフの歴史について語り始めた。


「まず、先ほどの問いじゃが――。我らはエルフではない。森小人族(フォレストピクシー)という種族じゃ。少々長いゆえ、フォクシーと略すものもおるな。ワンダよ、エルフと森小人族(フォレストピクシー)…似ておると思わんか?何ゆえだと思う?」


モしカして(もしかして)こンけツ(混血)ナのでスか(なのですか)?」


「その通りじゃ。異世界人というのは、この手の話に長けておるのか?…まぁ、今は置いておこう。今エルフと呼ばれておる種族は、遥か昔に森小人族(フォレストピクシー)と混ざり合った、元は人間族の末裔なのじゃ」


◆ ⁂ ◆


 ――その昔、山の形すら変えてしまうほどの大災害が起きた。森小人族(フォレストピクシー)の里は壊滅的な打撃を受け、土地そのものを捨てての移住を余儀なくされた。


 ようやく暮らせそうな森に辿り着いたものの、生活の再建は困難を極めた。食料はおろか生活の道具すら持ち出せなかったため、全てを0から始めなければいけなかったのだ。


 その日をしのぐことすら難しい中、近くに暮らしていた人族との出会いがあった。自分たちだけでの再建は困難と判断し、彼らに助けを求め、共に暮らすようになった。


 森小人族(フォレストピクシー)は魔力の使い方やその知識、魔力を用いた労働を提供し、人族は食料と生活の場を与えてくれた。こうして、互いに助け合う良好な関係が築かれていった。


 やがて、森小人族(フォレストピクシー)と人族との間に混血の子が生まれ始めた。混血の子ども達は長命で耳が長く、現在“エルフ”と呼ばれる種族の特徴を備えていた。


◆ ⁂ ◆


「我ら森小人族(フォレストピクシー)は魔力の扱いに長けておる。魔力さえあれば何でもできるわけではないが、贅沢をせぬ限り、暮らしていくには困らなんだ。じゃが、里ごと失ってしまってはのう…。見ての通り、我らは体が小さく、力が弱い。魔力で道具を生み出すことはできるが、魔力とて限りがある。避難で疲れ果てた身では、山菜を摘み、獣を狩り、その日の糧を得るだけで精一杯じゃったわい」


「そして、我々エルフのご先祖様と森小人族(フォレストピクシー)が出会った結果、今の私たちエルフがあるのだ」


 美唄さんからの補足が入った。


(美唄さんはいったいいッ!)


 考えることも止めておこう。命の危険を感じた。


「じゃが、そう良いことばかりでもなかった。長命となったエルフたちは、我ら森小人族(フォレストピクシー)を愛でるばかりで、なかなか子を成さなくなってしまったのじゃ。まぁ、儂は可愛いからのう?仕方ないのう?」


(確かに可愛いけども、自信満々だな)


恵庭(えにわ)様、無駄話はお控えください。日が暮れてしまいます」


 ドヤ顔を決めた恵庭様に、案内役の渋い声の少女が鋭く突っ込んだ。小柄で愛くるしい見た目ながら、どうやら”しごでき秘書”ポジションらしい。


「はぁ…。まったく、くーちゃんは堅いのう」


倶知安(くっちゃん)です。正しくお呼びください」


 倶知安(くっちゃん)さんの目がキラリと光る。眼鏡が似合いそうな雰囲気だ。


「このくらい、ええじゃろうに。まぁ、他にも原因はあるんじゃが、儂らがあまりにも可愛い過ぎたせいで、エルフたちの出生率が下がってしまったんじゃ。その対策として、なるべく彼らの前に姿を見せぬようにしたのじゃよ」


「そのための、この隠れ里というわけです」


「儂らとの接触が減ったおかげか、ここ数百年で、ようやく子供が生まれるようになってきたのじゃ。エルフの大人たちの半分ほどは、この事情を知っておる。子供たちには、儂らのことを”近所の子”と説明しておる」


 また、近年ではゴブリンやオークの村とも交流が始まっているようだ。こちらとの交流は一筋縄ではいかないようだが、エルフだけでは難しい事もあるため、徐々に進めていく方針のようだ。


「意外なことに、オークとエルフの混血も生まれておってのう。エルフの数が順調に増えておるなら、儂らが身を隠す理由も、もはや薄れてきたというわけじゃ」


(なるほど。この世界は他種族との交流が盛んなのかな?組み合わせによっては面白いことになりそうだ)


 改めて、この世界への興味が湧いてきたところで、恵庭(えにわ)様から話しかけられた。


「そこでじゃ、ワンダよ。お主の説明と合わせて、儂らの情報開示をしたいのじゃが、どうかの?精霊様の(つか)いと説明すれば、お主の待遇も多少は改善されるじゃろうて」


あリガとうゴザいまス(ありがとうございます)おネガいしマす(お願いします)。…とコろデ(ところで)エルフの(エルフの)ショうシかの(少子化の)ゲんイんは(原因は)他ニモあるト(他にもあると)いっテ(言って)いまシたガ(いましたが)?」


「まぁ、そこまで大きな影響はないとは思うんじゃがの?ワンダよ、くーちゃんのことを女の子だと思っておるじゃろ?こいつは雄じゃよ」


「?!」


 …なるほど、これは人口が減るのもしょうがないね。

 読んでいただき、ありがとうございました!

貴方に、満月の祝福がありますように…


挿絵(By みてみん)

森小人族(フォレストピクシ―)のの一般的な成人の等身イメージ図です。

イメージ考案:ワンパぶいちゃ猫

画像提供者:黒タマナ


 森小人族がいた結果、エルフは少子化になりました。

それなのに、なぜエルフは生まれたのか。

一応作者の考えはあるのですが、読者の皆様の考察も聞きたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ