11話 エルフ流、事情聴取
何をしても裏目に出る、そんな時もありますよね
2025/8/22 加筆修正
ワンダが尋問(拷問)されている広場へ、誰かが入ってきたようだ。
「話を聞いておけと言ったはずだが、なぜ罪人扱いになっている?昆布、どういう状況だ」
「び、美唄様!?」
(あの、非人道的な武器の発明者か!)
声を聴く限りではまともそうだけど、実物はどうなのか…。先ほどリーダーシップを取っていた昆布という女性が『スカートの中を覗いたので縛り付けた』と説明している。
(縛られたのが先だけどね…)
「…そうか。スカートを覗いた罰はもう十分だろう。事情をまだ聴いていないのであれば、まずは拘束を解け。こちらで聴く」
「分かりました…」
返事をした昆布というエルフは不満そうだ。見た目が怪しいとはいえ、そんなに嫌われるようなことをしただろうか?
(幼女に声かけして、スカートを覗いて…。まぁ、印象最悪なのもしょうがない…か?悪気はないんだけど)
美唄さんの指示で、ワンダの拘束が外された。
(痛くはなかったけど、人間扱われないのは精神的に来るな…)
思ったよりも緊張していたらしく、解放されてかなりホッとした。目隠しが外されたことで、新たな登場人物の顔を見る事が出来た。
一人目は、長万部族長。エルフの中でも高齢なのだろう。見た目がかなりしわしわの、おじいちゃんエルフだ。温厚そうな見た目でも、しっかり統率力があるようなので侮れない。
二人目は、男捨離の開発者の美唄さん。顔に目立つやけどの跡があるが、それを差し引いても美人さんだ。カッコよさも兼ね備えていて、女性からの人気が高そうだ。筋肉もしっかりついており、かなり鍛錬を積んでいる様子がうかがえる。
そして、もう一人。
子供(?)が族長の後ろからこちらを覗いている。見た目は10歳にも満たなそうな、幼い印象を受ける。興味津々といった様子で、こちらの様子を伺っている。
(族長のお孫さんかな?)
その女の子(恐らく)が顔を出した途端、周りのエルフの雰囲気が幾分和らいだのを感じた。この里の、アイドル的存在なのかもしれない。彼女の不興を買ってしまった日には、先ほどの比ではない恐ろしい目に合わされそうだ。顰蹙を買わないように、言葉選びは慎重にしていこう。
さて、いきなり重要人物に説明することになってしまった。子供が同席していることに困惑しつつも、交換されて森に来た話から始めていく。
「まダうまくシャべレないのデ、キキとリヅらかっタらすミまセん」
黙って聴く美唄さん、ふむふむとあいずちを打ちながら聴く族長。女の子はというと、大人しく聴いているようだが――。
雰囲気がなんだか、大人の女性のように落ち着いて感じる。観察する様な視線も気になるが、見た目が怪しいからだろうか?
そして、エルフの里へ連れてこられた所まで話が終わった。
美唄さんは、判断するのは自分の仕事ではないと言わんばかりに黙ったままだ。族長は、話を聞いただけではすぐに判断が付かなかったのか、考え込んでいるようだ。
そこへ――。
「族長が呼んでいます」
「「!」」
(族長…?)
唐突に、誰かが渋い声で発言した。見た目とギャップがありすぎて気づくのに遅れたが、女の子の声だったらしい。
(族長はここにいるけど…。もう一人いるのか?)
「ふむ…。美唄よ、儂はここを離れるわけにはいかん。付き添いはお前さんに任せる」
エルフの族長は来ないらしい。
(おじいちゃんだし、あんまり出歩くのは難しいのかな?)
なんて事を考えていたら、見抜かれたのか少し睨まれた気がする。
(T&Sの二人じゃないけど、経験豊富な人なら魔力の動きで考えが読まれるのか?)
「お任せください。よし、すぐに向かうぞ」
どうやら、目的地は里の外のようだ。
ギッシ、ギィ…、ギッシ、ギィ…
と体を軋ませながら歩き始めたのだが、杖も無いので歩く速度はかなり遅くなってしまう。
「そんな速度では、日が暮れてしまう。抱えていくぞ?」
じれったくなったのか、美唄さんに担がれてしまった。美女にお米様抱っこされる人形。別におかしくはない。ただし、かなり大股でガシガシ歩くせいで、体がかなり揺らされている。
(これは、しばらく休憩しないと、気持ち悪くて喋れないな)
そんな事よりも。ワンダは、先ほどから刺すような視線を感じていたが、あえて考えないようにしていた。
『憧れの美唄様に抱っこされている、気に入らない奴』
嫉妬の矛先がそこら中から突き刺さって来るが、自分の意志ではないのでどうしようもない。
(早めに歩く練習をしないと、益々肩身が狭くなりそうだ…)
練習不足を後悔していると、いつの間にか里を抜けて森の中にいた。
「かなリとオいノですカ?」
酔いに耐えながら、聞いてみると
「いや、すぐそこだ」
実に簡潔な返事が返ってくる。質実剛健な人なのかもしれない。
女の子はというと、テテテッと身軽に、先導をしているのか少し前を駆けている。先ほども感じたが、少女にも女性にも見える不思議な雰囲気だ。しばらく歩くうちに、藤の花がそこら中に咲いているのが見えてきた。
ちょうど夕日が差し込んできて、幻想的な風景を浮かび上がらせている。藤の花で作り出された庭園の様な空間の奥に、天然の植物だけで作られた秘密基地の様な場所が現れた。まるで、某アニメのトンネルのようだ。それにしても、歩いているうちに突然現れたような不思議な感覚だ。
(夕日で目がくらんで、見落としたのかな?)
女の子は、秘密基地のようなトンネルの先に生えている樹の一つを『トントトンッ』とドアをノックするように叩いた。
ギィ~ッ
軋む音と共に、樹の一部が上に開く。動くまで、どこが開くのか全く分からなかった。かなりのステルス性能だ。狭い入口から中に入ると、女の子のサイズであれば2~3人なら生活できそうな広さがあった。そこへワンダと美唄さんが入ったので、かなり窮屈になってしまった。
その部屋の奥に、女の子と同じサイズの、小さいおばあさんが座っていた。
「やぁ、いらっしゃい。わざわざ来てもらってすまないねぇ」
「お久しぶりです」
「美唄ちゃんも、元気そうで何よりだよ。入って入って」
簡単な挨拶から始まり、案内してくれた女の子からワンダの説明がされる。
(まだ気持ち悪いから助かる…)
失礼のない態度をとりつつ、しばらく休憩をとった。
「…ふむ。光の集まりのような方々は、きっと精霊様じゃろう。ワンダと言ったか?其方の体の作りは、見た目よりもなかなか複雑なようじゃ。普通の職人では、時間をかけてもこれだけの代物を作れる者はいないだろうよ。特に、内側に闇属性魔力を固定しながら外側を緑属性魔力で成形するなんて、かなりの魔力操作技術が必要になるだろうね。闇と緑は普通なら反発するもんさね」
そんな高等技術が使われているとは思っていなかった。サクサク加工するものだから、魔法なら簡単なのかなと勝手に思い込んでいたのだ。なにより、初めて会った相手だったから、比較対象が無かったのもあるだろう。
(しかし、闇属性魔力なんて名前からして怪しいから、あえて説明を省いていたのに。あっさり見破られたな)
族長クラスは魔力でなんでもお見通しか、と戦慄していると…。
「嫌な感じはしていたが、闇属性の使い手だったか!」
突然、美唄さんが敵意をむき出しにして、掴みかかろうとして来た。
(やっぱり、闇属性は忌避されてるのか。面倒なことになったな…)
「これ、騒ぐんじゃないよ。まったく、昔っからそそっかしいんじゃから」
「恵庭様!子供の頃の話は辞めてください!」
「儂からみれば、お前もまだまだ子供よ。ほれ、黙って聴いとれ」
渋々、元の位置に戻る美唄さん。あの女傑がまるで赤子扱いだ。
「それで、闇と緑のバランスだがね。今まで、枝葉が伸びて来た時に困ったことは起きなかったかい?」
「ひニあタルとネムくなリますガ、かンけイあリますカ?」
「眠くなる、か…。枝葉が伸びると、緑属性が活性化する。緑属性に押しのけられた闇属性が圧迫されたのだろう。夜の場合は、闇属性が活性…いや、拡散してしまって動き辛くなるのかい?」
「言ワれてミれバ、そウかモしれマせん」
「ふむ…。外から見ただけじゃぁ、こんな所かね。解体できればもう少し分かりそうなんだが」
(解体…?!実験動物扱いは勘弁!)
慌てて話題をそらそうと、疑問に思ったことをそのまま口にしてしまう。
「あノ、エルフのサとのひトよりもカなりモノ知リですガ、あなタはエルフとハちガうノですカ?」
ファンタジーで言うと、ハイエルフとかかな?という考えから出た質問だったが…。
「「ッ!?」」
空気が、一瞬で張り詰めた。地雷だったようだ。
後悔先に立たず。ワンダは、無事に生きて帰れるのだろうか?
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…




