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10話 エルフは最恐の一角

ブクマ登録してくださった方が、初めて出ました!

総合評価もありがとうございます!!!

2025/8/22 加筆修正

 お客の腹も落ち着き、お酒が進んで居酒屋食堂がますます騒がしくなる頃。エルフの話が一段落した所で、栗林(くりりん)が同情の声をあげた。


「かぁーっ!お前さんも運が無いねぇ。最初に出会ったのが、よりにもよってエルフとはなぁ!」


「えぇ…。でも、あの森から一番近くに住んでいたのが彼女たちだったので、仕方がないかと。ただ、第一印象が最悪だったのが悔やまれますね」


「ひどい仕打ちを受けたってのに、お人好しだなぁ」


「僕の見た目が悪いのも、原因の一つですし。誤解が解けてからは、色々と良くしてくれましたから感謝していますよ。彼女たちとの出会いがなければ、今ごろ森の土に還っていたかもしれません」


 あんな出会いではあったが、感謝もしているのだ。お詫びの品として、ズボンをいただいたり、外套も修繕してくれた。


(「下半身丸出しでみっともないから早く履け」といった感じで渡されたけど)


 緑猿(モザルという名前らしい)に毟り取られた髪の毛()の代わりを持って来てもらったり。


(これは素直にありがたかったな)


 エルフの里でよく飲まれるお茶も、たくさんご馳走になった。ドクダミ茶、カキの葉茶、クマザサ茶、イチョウ葉茶などバリエーションが豊かだったが、なかでもほうじ茶の香りが気に入った。


(近くを通ったら、枝葉と交換してもらいに寄ろうかな?枝葉はあらかじめ用意しておこう。下手すると、数日拘束されかねない!)


 あとは、自分の体についての新情報を得られたのも大きいだろう。体から生えてくる枝葉には”周りの植物の成長を促進する”という不思議な効果があったのだ。


 故郷の森に居た時も、お昼寝から起きたら植物に埋もれていたことがあった。エルフの識者によれば『大樹は余剰エネルギーを周りへ分け与えることがある』そうだ。ワンダの体が倒木から作られたと聞いて『恐らく、元の大樹の記憶が残っておるのだろう。優しい心の持ち主に違いない、体を労わりなさい』と言われた。


 尚、ワンダから枝葉の採集は、その後も変わらず続けられた。


「酷くないですか?僕は体を労りたいのに、あの人達ったら一日中毟ってくるんですよ」


「まぁ、生活が向上するとなれば自然主義のエルフといえど、なりふり構わずなのかねぇ」


「役に立ってるんだし、僕だって嫌じゃないですよ。ただね?『寝ているだけで仕事した顔をして、良いご身分ですね』なんて冷たい目と皮肉を貰いながら、来る日も来る日も毟られるのはしんどかったですよ」


「なんでぇ、さっき感謝していると言ってたくせに。ひっひっひ、やっぱり根に持ってるじゃねぇか」


「そりゃそうですよ!未だにあれより酷い体験はしてないですからね?」


「はっはっは、そりゃぁ大変だったなぁ。まぁ、飲め飲め。嫌なことは、飲んで忘れちまえ!」


「そうですね、今日は久しぶりに飲みたい気分です」


 栗林(くりりん)さんの注文と合わせて、ヒサアという飲み物を頼んでもらった。


「この体になってから、お酒を飲んだのは初めてです。酔わないと思うけど、悪くないですね」


「そうだろ?こういう席では、雰囲気に流されるままってのも良いもんさ。まぁ、かみさんは良い顔しねぇけどな。ひっひっひ」


 この商人、家では奥さんに頭が上がらないんだろう。だが、仲が悪いわけではなさそうだった。


「そういえば、鬼族と会ったことはあるかい?」


「鬼族…。ギルドの受付で何度か見かけたことはありますが、何か?」


「鬼族はな、エルフの次に植物の栽培に長けているんだ。特に農作物に関しては、完全に鬼族の方が上だな。何しろ、エルフの連中は森にある物を採っては、残りをまた育てているだけだからな。それで一つの村が維持できてるんだから、大したもんだが」


「確かに森から採集するだけで、大きな畑とかは作ってなかったみたいですね」


「そうだろ?それに、よそ者に対して知識を教えるっていう気が無いんだ。森の奥に引きこもってるせいか、あいつらにとっては常識でも、外では価値があるっていうのが分からねぇのさ。前に、薬草について相談しに行ったら『なんでそんな事も知らないんだ?』だとよ。挙句の果てに『森が教えてくれるから、森に聞け』と来たもんだ。付き合ってられねぇよ」


「それは、身に覚えがありますね…」


(排他的なところはあるよね。まぁ、僕は魔法を教えてもらったし、栗林(くりりん)さんの、好感度が低かっただけかもしれないけど…)


「そんなわけで、知識があってもエルフを頼るのはなかなか難しいんだ。だから、体の事で何か困ったら鬼族を頼ってみるといい」


「分かりました、貴重な情報ありがとうございます」


「なに、この程度の事気にするな。町で商売してりゃ、ある程度の情報は集まってくるもんさ」


「貴方にとっては常識なのでしょう。でも、その価値は把握しているわけですね?」


()()()と違ってな!がっはっはっ!お前さんと飲むと、酒が進みすぎちまうな!もう一杯行くか!?」


「では、もう一杯」


 思った以上に、有益な情報が得られた。少し柄が悪いが、なかなかやり手の商人だったようだ。引き続き、思い出話を対価に情報交換を進める。


 今夜は長くなりそうだ――。


 そんな予感を抱きつつ、この商人とは良い関係が築けそうだと、巡り合わせに感謝するのだった。

 読んでいただき、ありがとうございました!

貴方に、満月の祝福がありますように…

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