クロフォードの経歴と二人の懇親会
すこしづつ仲良くなっていきます・・・
「6年近く、ある組織に潜入していた。禁煙なんてお綺麗なこと言っているのは表の稼業の象徴さ。酒、タバコ、女は当たり前。コカイン、ヘロイン、奴らに食い込む為に何でもやった。むろん、中毒なんかにならないように用心深く計算してね。ヘヴィースモカーってのは薬の量を抑えるのに、良い隠れ蓑になる」
マイルズは、彼の資料を脳裏に思い浮かべる。同様にクロフォードはマイルズの資料を受け取ってるはずだ。
クロフォードは今まで3件の潜入捜査に関わっていた。クロフォードが説明したのは南米のカルテルと繋がる組織を一斉検挙した時のことだろう。その他にも、香港に2年、東欧に3年とクロフォードが捜査官になってからの大部分の時間を潜入捜査で過ごしてきていた。麻薬捜査官として囮操作を含め潜入捜査はある。が、彼のような長期間、しかも3件の潜入捜査を行ったという事例はマイルズはほかで聞いたことがなかった。
「あんたは地道な捜査が得意だってな。多分、上もこれ以上私を潜入捜査に使うわけに行かなくなって、地道な捜査を勉強させようって言うんだろう」
「・・・何故、そんなに潜入捜査ばかり?」
「巡りあわせだろ。だが、もう、・・顔が売れすぎた」
クロフォードは少し遠くを見るような目で、煙を吐き出した。
結局、昼間の約束をその日の内に果たすことになり、二人はマイルズ行きつけのパブに向かった。
「何か腹に入れていくかい?」
「いや、夜は余り、・・・酒が夕食みたいなモンだな」
朝と昼はがっちり食べる主義なんだが、とクロフォードは健康的だか不健康だかわからない生活スタイルを吐露する。マイルズはその言葉で、昼間の食事を納得しながらも、すきっ腹に酒をいれるわけにも行かず、適当な軽食をとった。彼を飲みに誘いだしたのは、クロフォードの昼間の言葉に、解説がもらえるかも、という下心があった。「わからないことが、最大の原因だ・・・」