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Screw  作者: SUGAR
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クロフォードとマイルズの仕事

 クロフォードとマイルズが組むことになったのは、3日前の指示による。二人は麻薬捜査官で、その存在はアメリカのテレビドラマや映画のように派手さはないが、全世界の大抵の国に存在する。

 二人に与えられた任務は、近年、国際的に問題になっているいわゆる「脱法ドラッグ」の取り締まりだった。国際機関との連携で新規リストアップされた規制薬物の取り締まりに動くことになったからだ。

 「脱法ドラッグ」とは構造、薬効等既知の麻薬類と酷似しながら、法律的に取締リストに挙がっていないため世の中に流出しているものをいう。「合法」と称しているものもいるが使用を公認されたものではないので、あくまでも「非合法ではない」というだけのかなり黒にちかいグレーゾーンにあるといっていい。

 これらの新規麻薬に押されてか、今ではコカインなどの麻薬類の値崩れが進んでいる。特にコカインは、一部ではコーヒー一杯の値段より安いという現象さえ見られた。

 新規麻薬の多くが合成麻薬で、一般的にケミカルドラッグと呼ばれる。規制法案では限定された一つ一つの成分を指定していくため、構造のごく一部を変換することで「別の物質」に塗り替えた物がどんどん生み出されていく。その為「デザイナーズ・ドラッグ」と呼ばれることもある。殆どの場合、錠剤タイプで飲むだけという手軽さと値段の安さが原因で急速に汚染が進んでいる。その一部がようやく規制リストに加筆された。

 規制適用されたのがつい数日前、しかも扱っている業者には罪悪感が薄く、挙句インターネットが普及した今では昔のように街角の売人たちを挙げれば組織が挙がるというわけにはいかない。以前のような企業体のごときトップダウンの組織は影が薄くなりこれらの流通さえ、生産、仲介買い付け等々末端にいたるまでの分業化が進んでいる。末端から生産流通に至る過程が多すぎて一つを断てば別の経路ができてしまうため、生産の大元を適正化することが最大の効果をもたらすことになる。

 つまりは製造の大元を探し出すのが、捜査の究極の目的ともいえるだろう。

「組むのは初めてだな、よろしく頼む。バーナビー・マイルズだ」

 穏やかな笑みを浮かべ、マイルズは握手のために手を差し出した。二人は数年、同じ部署に所属していながら、殆ど初対面だった。二人とも年齢は30代後半、捜査官としては中堅の位置に属する。

 少しだけ長めにカットされた金髪をきれいに纏めてダークブルーのスーツをマジメそうにきっちりと着ている相手にクロフォードは少し首を傾げたまま微笑んだ。

 クロフォードはその容姿から局内の女性達の秋波を浴びているが、本人は全く気にも留めていない。一方でマイルズは「極めて」とか「美貌の」とか言われるほどではないにしろ、そこそこ整った容姿に穏やかな雰囲気をもった男でこちらも女性たちの人気は高い。しかし、本人には全く自覚がなかった。

 なるほど、と女性達の目の高さに納得しながらクロフォードは握手を返す。

 「ああ、宜しく。リース・クロフォードだ。」差し出した手を握り返す手は、容姿に似合った美しい手が想像されたが、マイルズが意外に思うほど、節が太くて皮膚はカサついていた。

 任務が、いわゆる新規麻薬の取締役であったため、二人はその薬物に対する知識を習得することからはじめなければならなかった。化学組成から主な原料、作用、毒性、流通し始めたと思しき時期、地域、かかわっていそうな組織、等々。事件現場でいちいち資料を開くことは出来ない。頭に詰め込まねばならない資料は山ほどある。局内の資料室で、資料の山に埋もれながら目を通し、必要とあらばそのほかの資料も探し出す。ある程度のデータを叩き込んだら実際の操作のためにオフィスから出ることになるだろう。




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