7話
俺、何か気に障る事言ったのだろうか? でも怒っている訳じゃ無そうだし気にしても仕方無いだろう。
俺はリリアさんに促されるまま、使用した食器を片付け身支度を整え俺とリリアさんが所属しているパーティギルド、ヴァイス・リッターへ向かう事にした。
俺の家からヴァイス・リッターへ向かう道中、今は朝方だけあり人通りは多い。
主に石造りの街並みを、俺とリリアさんはそれなりの速度で歩き続ける。
俺達は冒険者をやっているだけあり、基礎体力はあるのか周りを歩く一般人よりも歩く速度は速かった。
時折、定期便の馬車が道路の中央付近を翔けていく。
俺の家からヴァイス・リッターの距離がもっと遠ければこれらの馬車に乗る事もあっただろうなと思いながら通り過ぎていく馬車を漠然と眺めていた。
「ヴァイス・リッターはどう?」
「そうね、可も無く不可も無くって所かしら? アンタは?」
「みんないい人達みたいで楽しいよ」
「そうかしら? 大した容姿じゃない癖して一々あたしに絡んで来る男達が多過る以上楽しいとは思えない」
「そうなの?」
「そうよ。ヴァイス・リッターじゃアイドルとして得する事が無いの。けれど、あたしが変な事を行えばあたしの評判が悪くなってしまう、だから出来る限り笑顔をふるまわなければならないの」
そう言うリリアさんであるが、今現在特に笑顔を浮かべている様子はない。
いや、彼女はレンジャーだけあってマフラーで口元を隠しているから表情が分からないだけかもしれないが。
一方の俺はナイトであり、防具はライトメイルと盾を身に着け武器は主にミドルソードを使っている。
「そうなんだ」
「気楽に言わないで欲しいわね。大体、アンタだって異性の対応大変でしょ? ヴァイス・リッター内だけでもアンタを狙っている女の子達の話聞くんだけど」
「そんな事言われてもなぁ、俺ヴァイス・リッターの中だと基本的に鍛錬しかしていないし、確かに女の子達から話し掛けられる事もあるけど大体鍛錬するって言ったらどっかいっちゃうし」
俺の話を聞いたリリアさんが、がっくりと肩を落とし、深いため息を一つ。
「セザール学園を卒業してもアンタはやっぱり鈍感なのね」
「さっきも言われたけど、女の子達が俺に興味無いのに何処が鈍感なんだよ」
「女の子がニコニコしながら話し掛けて来たら、鍛錬なんかほっぽりだして一緒にお茶でもどう? 位フツー言わないかしら? アタシの知っている女の子は大体口を揃えて、笑顔見せてカイルさんに話し掛けても素っ気ない態度取られちゃって、だから邪魔しちゃ悪いと思ってそのまま帰っちゃった、って言って来るわよ?」
「お茶って? 喉が乾いてるなら別に水でよくない? で? わざわざ水を一緒に飲みに行くってちょっと無理があると思うけど」
何故だか、リリアさんが右手で頭を抱え項垂れる。
俺、何かまずい事でも言ったか?
「アンタ、ねぇ? この場合お茶って言ったら、女の子と一緒にカフェに行く事を指す訳。で、そのカフェで美味しいケーキや紅茶ってお洒落なお茶を一緒に飲むのよ」
何だかリリアさんが物凄く呆れている様に見える。
俺、何かまずい事でも言ったのだろうか?
「それは初めて知った。でも、女の子と一緒にカフェに言って何が楽しいのさ? そんな事よりも俺は勉強や鍛錬をやった方が有意義って思うんだけど」
俺はまっとうな意見を言ったつもりであるが、やはりリリアさんが俺に呆れたのか10秒程黙って、
「全く、そんな事だろうと思ったわよ」
「じゃあ、リリアさんはその辺どうなんだよ? 俺、リリアさんが男と遊んでいる所見た記憶無いし」
「あたし? あたしは男達の気持ちを知った上で、笑顔は絶やさず心の中では愚民と思いながら振り払っているわよ」
中々に物凄い言い方だ。
しかし、リリアさん位の美女が言うならまぁそこまで腹立たしく思えて来ないが。
「で、結局特に遊んだ男は居ないと」
「そうよ。金持ちでイケメンで性格も聖人並な男なら相手をしてあげるわ。けれど、世の中そんな男はまず居ない。だからそんな愚かな男達と時間を過ごす位なら勉学や鍛錬に励んだ方がマシだったわ。そうね、そこだけはアナタと同じじゃないかしら?」
「やっぱりそうだよなぁ、リリアさんだって何だかんだ言ってセザール学園全教科2位だったし」
「……全教科トップのアンタに言われるとムカついて来るわね」
「俺、褒めたつもりだったんだけど」
「うるさいわね、せめてレンジャーに関する分野位あたしに勝たせなさいよ」
「けど、俺が手を抜いたら抜いたで文句言うでしょ」
「うっぐ、そ、そんな事ないわ」