6話
「やった☆ カイルさん、行きましょ」
え? なんで? 3人で行くんじゃないの?
今の話の流れだと、ルミィさんとアリアさんとエリクさんがスイーツを食べに行く流れじゃん? 俺関係無くない?
「はい? 何で俺も? 俺別にスイーツ食べたい気分じゃないんだけど」
と、鍛錬をやりたい俺はその誘いを断ってみるのだが。
何故かアリアさんが俺の肩をポンと叩いて。
「君は魔術も得意だよね? だから甘い物を食べると勉学が捗る事は知っているでしょ?」
何故か好意的な言葉を投げ掛けるアリアさんだ。
今さっきまで、俺に対して敵意を剥きだしていたと思うが一体何があったと言うのだ?
「そりゃまぁ、そうですけど。でも今日は剣の鍛錬するつもりですし」
それと無く断ってみるが、
「魔術の鍛錬も変わらないと思わない?」
アリアさんは粘って来る。
一体何があったんだ? この人クールビューティーとリリアさんが言っていたと思うんだけど、それとは真逆に何故押しを強くしているのだろう?
理解に苦しむ。
「そう言われればそうですけど」
だからと言って、アリアさんの提案に対し断る為の言葉が出て来ないのも事実だ。
「フフッ決まりね」
口元に軽い笑みを浮かべ、少しばかり良さそうな機嫌を見せるアリアさん。
「でも、どうして急にそんな好意的になったんですか?」
「貴方に興味を持った、じゃ不服?」
何処か悪戯っぽい表情を見せるアリアさんだ。
一見クールに見えるのだが、何だかんだ言ってルミィさんと姉妹なんだと感じられる。
「俺に興味を持ったって……?」
「その辺の事はお店の中でしましょう、良いわね?」
アリアさんから、強めの言葉で押される。
何故だかそれに対しNOと言ってはならない気がする。
チラッとルミィさんに視線を送るとすごく嬉しそうな笑顔を見せたままだ。
これを断ってしまったら後が怖い、何と無くそう感じる。
「分かりました」
俺はアリアさんに押し切られる形で、スイーツ店へ同行する事となった。
「なら、善は急げですね。早速行きましょう」
ノリノリなエリクさん先導の元、ヴァイス・リッターを出てスイーツ店へ向けセザールタウン中心部へと向かった訳だ。
今の時刻は朝方であり、昼まではまだまだ時間がある。
この時間帯セザールタウン中心部は主に買い物に赴いた主婦の人達や冒険者ギルドで依頼を受けた冒険者達で賑わっている。
また、街の中心部であり郊外でよく見られる露店よりも、建物の中で構えるお店が多くみられる。
それ等のお店は、飲食品を扱うお店や衣服や小物を扱うお店と言ったこの町に住む一般人に向けた商品を扱うモノもあれば、武器や防具、マジックアイテムや傷薬等冒険者へ向けた商品を扱える店と言ったお店が立ち並んでいる。
その中にある1件の店に辿り着くと、エリクさんが人差し指で眼鏡をクィッと上げてみせ「ここです」と皆に言う。
何と無くエリクさんからは自信を感じる。
特別甘い物が好きとは言えないが、中々期待出来そうだ。
エリクさんが案内した店はレンガで作られ壁の色は白く、ピンク色の屋根の建物で中々おしゃれな印象を感じさせてくれる。
成る程、女の子を誘う為のお店はこういう店が良いのかと、別にその事へ興味が無くても自然とそう思えてしまった。
俺と同じ様な感想を抱いているのか、ルミィさんもアリアさんも中々良い反応をしているみたいで、エリクさんは得意気に応えているみたいだ。
「では、中に入りましょうか」
エリクさんに促され、俺達はお店の中に入った。
お店の中には、木製のテーブルが合計で6台設置されている。
それ等の大きさに大小はあれど、周囲に2人か4人座れる大きさだった。
テーブルの色はこげ茶色であり白を基調とした店舗の色とと上手く噛み合っており非常に良い雰囲気を引き出している。
俺達は店員に店舗内右奥にあるテーブルへと案内された。
エリクさん曰く、ここはチョコレートケーキがお勧めらしい。
全体的に甘みが強いのであるが、ほんのりと苦みがあるチョコレートがその甘さの引き立て役となり美味しさを引き出しているからだそうだ。
また、チョコレートケーキに合わせる飲み物としてハーブティーを勧められる。
このハーブティーはセザールタウン近郊で取れるハーブを数種類ブレンドし煎れたお茶との事でそれが中々良い味を出しているとの事だった。
俺もルミィさんもアリアさんもエリクさんのお勧めに賛同、4人分のチョコレートケーキとハーブティーを店員に注文した。
「それで、アリアさんはどうして俺に興味を持ったのですか?」
店員への注文を終え場が落ち着いた所で俺の方から切り出した。
「そうね、貴方ザナッツ・レヴィンの子孫よね?」
「そうですけど?」
アリアさんが何のためらいも脈略もなく俺の先祖の名前を出した。
「だから貴方には将来性がある、それを感じた、私が貴方に興味を持った理由かしら」
少しばかり適当に誤魔化された様な気がするが。
本当の理由はもっと別の所にある、と直感する訳だがこれは追及するべきなのだろうか?
と思い、アリアさんに返事をしようするまえに
「えええ? カイルさんってあのザナッツ・レヴィン様の子孫なんですか!? 確かにカイルさんと姓は一緒ですけど!?」
アリアさんと対照的に、エリクさんが驚きを隠し切れない声を上げる。
高々血筋が一緒と言うだけでそこまで驚く事なのか?
「はい、そうです」
「だからですか! セザール学園でメインがナイトにも拘らず、学生の中では魔術の扱いが秀でている。その上神聖魔法まで扱える理由が今分かりましたよ」
高々血筋で? 物凄い大袈裟だと思うんだけど。
「そんな大層な事なのですか?」
「大層ですよ。カイルさん、確か地水火風4属性を操れますよね?」
「ええ、そうですけど、それがどうかしましたか?」
「それだけでも滅茶苦茶凄い事なのですよ。魔法を扱う為には人間の素質が必要なのですが、その素質、各々の属性の素質が1つあるだけでも普通に素晴らしい物でして、2つあると天才の領域になります。それが4つとなるとここ10年探しても1人居るか否以下のレベルになります。勿論鍛錬を積み重ねた30歳位の方でしたら4属性扱える人も増えますが、カイルさんと同じ年で4属性扱える事自体奇跡に近いのです」
俺としては、特に深い事を考える事も無く試してみたら使えただけに過ぎないんだけど。
確かに、セザール学園に居た時も2属性扱える人達は教師達から凄く賛美されていた覚えがあるな。
俺に対してもそうだった覚えもある。
出来て当たり前なのに以上の感想を抱いた事は無いんだけど。
「は、はぁ、そうですか。けれど、それが先祖と何か関係がありますか?」
「あります。大ありです。大賢者ザナッツ・レヴィン。その生涯を終得る直前、自らを賢神の石へと変化させ後世へとその力を伝える偉大な御方ですよ。それだけの御方の血を引き継いでいますから、カイルさんはその年で4つの属性を操る事が出来る訳ですよ」
つまり、俺が4属性も魔法を扱えるのは血筋のお陰だったと言う事か。
てっきり鍛錬のたまものだと思っていたが、それはただの才能だったと思い知らされるのも正直しんどいかも知れないが。
エリクさんは悪意があって言っている訳ではなさそうだから、もっと話を聞いた方が良さそうだ。
「そう。だから極めて高い素質のある貴方には高い将来性があるワケ。だからと言って噂通り究極の女垂らしであるならば拒絶以外の選択しか無かったけれど、そんな事は微塵もない。だから私が興味を持ったところね」
随分と腹黒い事を言われている様な気がするが、しかし女性からしたら女垂らしな男を拒絶対象にする事自体間違っているとは思えない。




