6話「」
「そう言えばそんな話も聞いた様な? でもまさかリリアさんに話が来たなんて予想外だ」
「何言ってんの? アンタはセザール学園であたしよりも良い成績を出したのよ? いい加減其処等辺の凡人と同じ考えでいるの、やめてくれない?」
リリアさんが言う通り、俺が卒業をしたセザール学園で俺は全教科トップの成績に対してリリアさんは2位の成績だった。
だからと言って俺自身セザール学園を首席で卒業した事を凄いとは思わないし、それよりもセザールタウンのアイドルであるリリアさんの方が凄いと思う。
「そんな事言われても、リリアさんってセザールタウンのアイドルって聞くけど、俺と比べ物にならない位凄くない?」
「勝手に男達が盛り上がっているだけよ、それにアンタだって女子の間では人気高いわよ? アンタがあまりにも鈍感過ぎるから気付いていないでしょうが」
は? 俺が女子の間で人気が高い? どういう事だよ。
そりゃ、ルッセルさんみたいなイケメンだったら分かるけどさ、イケメンでギルドを束ねる有能なリーダーとくれば放っておく女の子なんて探す方が難しいって思うよ。
「鈍感って、俺は日々鍛錬を行っていただけだよ」
「あらそう? あたしの耳にはアンタに告白をしてもあっけなく無視されたって話を山ほど聞いたけど?」
「何それ? 俺、女子から告白された事なんて一度も無いんだけど」
「ふーん? そう? 意味の無い嘘付く訳?」
じぃーっと俺の目を見据えるリリアさん。
「んな事、嘘ついても意味無いと思うが」
「否定しないわ、仕方無いわねアンタを陥れたい誰かがウソをついた事にしておいてあげるわ、感謝なさい」
一旦話を締めたリリアさんが、左手に持っているフライ返しをテーブルの方へ向ける。
このまま話続けてもラチが空かないと思った俺は、リリアさんに合わせテーブルの方へ移動した。
「おお、これは凄い」
テーブルの手前に配置されている椅子に座った俺は美味しそうな料理を前にし、歓喜の声を上げる。
テーブルの上に置かれた皿には、ほど良くとろとろになっているスクランブルエッグに焼いたソーセージが4本乗せられており、皿の隅にはそれ等に付ける為のケチャップも乗せられていた。
また、主食として皿の隣にあるバスケットの中には手の平サイズのロールパンが6つ入っていた。
「フン、この程度凄いの内に入らないわ、私を甘く見ないで頂戴」
リリアさんはプイッとそっぽを向きながら言う。
少しばかり口元が緩んでいる様な気がするが、本人がそう言うならそうなのだろう。
「そなの? 俺料理は出来ないから十分凄いと思うけど」
「そ、そこまで言うなら仕方ないわ、そういう事にしておいてあげるから有難く思いなさい?」
リリアさんが、俺に人差し指を向けながら言う。
やっぱり口元が緩んでいる様に見え、内心嬉しかったのだろうか? と言う疑問が生じながらも作って貰った料理を口に運ぶ。
とろとろのスクランブルエッグは口の中で溶ける様であり、卵自体の味とケチャップの程良い甘味と酸味が交わり合い絶妙な美味しさを引き立てている。
ロールパンとの相性も良く、気が付けばスクランブルエッグと一緒に2つのロールパンを食べていた。
続いてソーセージであるが上手く茹で上げられており、程良い熱さを帯びている。
口に運べば、パリッと音を立て中から濃厚な肉汁が口に広がる。
これは美味しい、と思いながらロールパンを口に運び、気が付けば3本のソーセージと3つのロールパンを食し終えていた。
最後のロールパンとソーセージ、皿に残っているスクランブルエッグを数秒見詰め、俺はロールパンを縦方向で二つに、半分ほどの深さで割る。
その中にソーセージを挟み、上から残ったスクランブルエッグとケチャップを掛けエッグホットドックを作り、口に運ぶ。
美味い! 思った通りソーセージの美味さとスクランブルエッグのマイルドさが噛み合い絶妙な味加減を引き出している。
くそう、こんなに美味しいなら最初からこうしておけばよかった!
と少しばかり後悔をしながらリリアさんが作ってくれた朝食を食べ終えた。
「御馳走様でした」
「お粗末様ね。量が足りなかった事は悪かったわ」
リリアさんがトレードマークとも言えるツインテールの左側を右手で撫でながら言う。
相変わらず表情は硬いままではあるが……。
「い、いやそんな事無いって、作ってくれただけでも有難いし? そ、そりゃあんな美味しい物もっと食べられたら良いけどさ」
「そ、そんな事どうでも良いわよ、ほ、ほらさっさとヴァイス・リッターに行くわよ」
再びそっぽを向くリリアさんだ。




