57話
「は? 何言ってんの? アンタバカ? 先に約束したのはあたしでしょ? 胸しか能の無い聖女なんかよりアイドルのあたしの方が上でしょ?」
「ふーんだ。カイルさんだって男性だもん、胸も大事だもん」
ルミィさんがリリアさんに向けベロをチラッと出しながら、俺の腕に胸を押し付けて来る。
ルミィさんから伝わる柔らかな感触が腕より俺に幸福感を与えてくれるような気がして来て……。
「アンタ知らないの? 小さい胸を好む男性だって要るのよ? 大きいだけが全てじゃないわ」
キッと唇を噛み締めながら、リリアさんがルミィさんに指摘をする。
「いや、俺は別にどっちでも特に気にも留めてな」
と言ったところで二人から殺気が込められた視線を送りつけられ、俺は背筋が凍り付く感覚に襲われる。
何か不味い事言ったか? と自問自答をした直後、俺の背後で誰かの気配を感じ取った。
「カイル様! わたくしセリカ・ジュピテスはダスト様の許可を頂きカイル様と接触する許可を頂きました。今のお話お聞き致しました。カイル様、明日はわたくしと遊びましょう、お嬢ちゃん達が知らない事をカイル様にやって差し上げとう御座います」
振り返れば、そこにはセリカさんの姿と……。
犬のつけ耳をし、犬のつけ尻尾をしたエリクさんの姿があった。
……。どう言う理屈か知らないが、転移魔法を使って二人が合流し、何だかんだあってここに転移して来たんだろう。
「い、いや、そ、それなら5人で遊ぶ……」
俺が言おうとした言葉を言い切る前に、
「フッフッフ、カイルさん。僕への配慮有難う御座いますワン。しかし、しかしです、カイルさん。僕に名案があります」
エリクさんが眼鏡の中央をクイッと指で少しばかり上げ、
「ズバリ! 3人のファンの数を競うのです! ファンの数が最も多かった女の子が次の休日にカイルさんと一緒に遊ぶ権利を手にするのです!」
エリクさんが、ドヤ顔で提案をした訳だが。
「何? この駄犬。 何でこのアタシが無駄な勝負をしなきゃいけないワケ?」
「え?え? もしかしてリリアちゃん、実はファンの数って全然いなかったりする? あはは? 聖女でごめんなさい。私の信者沢山いるからね」
ルミィさんが得意気な笑みを見せながらリリアさんを煽る。
「おーほっほ、駄犬にしてばいい案を出すじゃない? わたくしのファンならば聖女の信者の比じゃないですわ!」
セリカさんが、口ではリリアさんを煽っているがその視線はリリアさんの胸元へと向いていた。
その視線に気付いたのか分からないが、リリアさんが、
「うっさいわね! だったらやってやろうじゃないの! 後で後悔しても知らないわよ!」
リリアさんが、顔を真っ赤にしながら表面上はルミィさんの挑発に乗った。
「フフフ、素晴らしいです。3人方、勝負と言うモノは1試合だけでは面白くないじゃないですか? 料理勝負、歌唱力勝負この2つを合わせた3本勝負と言うのはどうでしょう?」
エリクさんが、3人に対して更なる提案をする。
「フ、フン。いいわ、その提案受けて立とうじゃない」
エリクさんの提案に対し、リリアさんが少しばかり視線をキョロキョロさせながら返事をする。一見すれば自信無い様に見えるが、普段彼女が作る料理は美味しいと思うし、アイドルである以上歌唱力も有りそうな気がする。
「あ、あわわ、わ、分かりましたエリクさんがそういうのでしたら」
一方のリリアさんは、おどおどしながらエリクさんの提案に了承をした。
何か不安な事があるのだろうか?
「おーほっほっほ。素晴らしい提案ですわ! このわたくしが全ての勝利を収め二人のお嬢ちゃんをひれ伏させてあげますわ!」
「決まりましたね、では後日この勝負を致しましょう! 審査員は僕とカイルさんとアーディるさんの御三方で行いましょう!」
「アーディルさん? 誰ですかそれは?」
聞いた事が無い名前だ。
「ジャイアントゾンビとの戦いでカイルさんを助ける為についてくれたお方ですよ」
「あ、そうですか」
さっきちょっと喋った感じ、何だか軽い様なおじさんに見えたが、まぁ審査員と言う事なら特に気にする事は無いだろう。
って、エリクさん、後日って言ったよな? 明日はどうなるんだ? まぁ、何も無かったらいつも通り鍛錬を刷れば良いのか。
「そうです。さぁ、今日は遅いので僕が転移魔法で皆様を家まで送ります。数日後を楽しみにしてください」
俺達はエリクさんの転移魔法によりそれぞれの家へ送って貰ったのであった。
これで第1巻部分は終わりになります(・ω・)ゝ
ここまで読んで頂き有難う御座いました(^ω^)ノ




