56話
肋骨の鎧が剥ぎ取られ剥き出しになったジャイアントゾンビの心臓目掛け、カイルの剣による突き攻撃が炸裂、カイルの身体ごと心臓を突き抜け、ジャイアントゾンビの心臓は爆散。
ジャイアントゾンビを突き抜けたカイルは体勢を跳躍後の落下体勢に切り替え鮮やかに着地をする。
「やったか!?」
自分もリリアもルミィも魔法力を使い果たした。
それ故にカイルはこれでジャイアントゾンビを討伐出来て欲しいと願いながらジャイアントゾンビの行く末を見守る。
「ああカイル様……わたくしの召喚致しましたジャイアントゾンビの核が心臓にある事がご存じでしたなんてわたくしセリカは不覚をとりました」
先程リリアが乱射していた矢を自身の魔法防御力により耐え凌いでいたセリカがカイルにゆっくりと近付き、言う。
セリカがカイルに言うと同時に、核を失ったジャイアントゾンビは肉体を維持する事が不可能となり、崩れ去った。
セリカの魔法により産み出されたからか、崩れ去ったジャイアントゾンビの身体は間も無く土へと吸収され還って行ったのであった。
「チッ、まだセリカさんが残っていた」
カイルは魔力が尽きているが、3対1なら有利を取れる問題無いと思い、息を飲み身構える。
「4対1の状況で戦いを挑む程わたくしは愚かで御座いません。今日の所は退散させていただきますが、またカイル様とお会いしとう御座います」
セリカはカイルに向け丁重な一礼を見せると、転移魔法を使いその場から消え去った。
「良い連携だったな」
近くの草むらから、30歳位の剣士が拍手をしながらカイル達の元へ近付いて来た。
先程カイルに助言を送った者だろう。
「いえ、それ程でもありません」
「ハッハッハ、噂に聞いた通り謙虚な奴だな! 悪いこっちゃねぇがよ、もっと堂々としちまえってよ」
剣士が豪快に笑いながらカイルの背中を叩く。
「そうよカイル、もっと堂々としなさい」
剣士に続きリリアもカイルに言う。
「おっと、オメェ、両手に花じゃねぇか、全く羨ましいモンだぜ」
「そうなんですか? 俺は鍛錬や勉学に頭がいっぱいで女性の事はあまり関心が無いんですよ」
「おいおい、もったいねぇなぁ、俺が若い時なんか如何に女を振り向かせ様か必死だったぜ?」
剣士が、再度豪快に笑いながらカイルに言う。
「は、はぁ?」
「大丈夫だ、ちょっと女のケツ追い回した位で強くなれねぇ訳じゃねぇからよ、ちょっとぐらいオメェも女に興味持った方が人生楽しくなるぜ?」
「心得ておきます」
「おうよ、風邪引いてもマズいしな、ここいらで帰ろうか」
剣士は道具袋の中から転移アイテムを取り出し、その効果を発揮させカイル達をヴァイス・リッターへ転移させたのであった。
*
ジャイアントゾンビの討伐を終えヴァイス・リッターへと戻った俺は一度自宅へ戻り衣服を身に纏った後、ヴァイス・リッターに居るルッセルさんへジャイアントゾンビ討伐の報告を行った。
ルッセルさんへの報告を済ませ、俺とリリアさんとルミィさんが帰路へ着いたところで、
「今日はアタシのお陰で上手く行ったのよ、感謝しなさい」
と、リリアさんが言う。
確かにリリアさんのお陰で俺はセリカさんから受けた魔法を解く事が出来たし別にリリアさんが言う事は間違いではない。
「そうだな、有難う。改めて感謝する」
「そうよ、だから明日あたしと一緒に遊びに行きなさい」
リリアさんが鼻歌を混じらせながら言う、何だかご機嫌そうなのでそれは何よりだと思う。
「別に構わない」
「あーーーーリリアちゃんずるいよっ! 私だって頑張ったんだから! ジャイアントゾンビのトドメ刺したの私の魔法のお陰もあるんだよ!」
ムッとした表情を浮かべながら、ルミィさんが自分の成果を大体的に告げる。
確かに、ルミィさんが撃った神聖魔法のお陰でジャイアントゾンビに対してトドメの一撃を刺す事が出来た。
「ああ。ルミィさんの聖光アレのお陰で俺はジャイアントゾンビにとどめを刺す事が出来た、有難う」
「えへへー? そうでしょそうでしょ? だから、明日は私と遊んで下さいよぉ」
ルミィさんはニマニマとしながら、俺にべったりとくっつく。
「あ、ああ、ならリリアさんと3人であそぼ……」




