54話
「問題大有りだよ! てか、今何て言った!? 俺の服だけ燃やすってリリアさん!? 反対しておいて俺が脱がされる事を望んでないか!?」
「何事も事故は起こり得るモノよ、その時は不可抗力と諦めて頂戴」
「何淡々と説明してるんだ!? 分かってるなら事故が起きても問題無い調整してくれませんか!?」
「不安ならアンタも魔法抵抗をかけるといいわ、けどあたしもアナタにバレ無い様に威力を上げるけど」
「分かった、そうするよ……っておい! 結局服を燃やす気満々じゃないか! てか、バラしてんじゃねぇか!」
「大丈夫、証拠は無い」
リリアは、ジャイアントゾンビの左脚部目掛け矢を放ち、ジャイアントゾンビの左脚部にダメージを与える。
「ああっ、わたくしの可愛いジャイアントゾンビが、よくも、許せませんわ、覚悟なさい」
今更ジャイアントゾンビを傷つけられた事に腹立てるセリカが、カイルを縛り付けている鎖に向け、魔法を放つ。
「ちょ、まっ、おいっ!」
カイルを拘束している魔法鎖がもぞもぞと動きだしカイルが身に着けている服の中に潜り込み、内から外に広がる動きを見せる。
ビリビリビリ、と音を立てカイルが身に着けていた服が破れ、カイルは上半身の裸体を晒してしまう。
「わー、カイルさんの肉体凄いです☆」
カイルの美しい筋肉に包まれた、鍛え抜かれた肉体を見たルミィが思わず感嘆の声を上げる。
「くっ、やるじゃない、あ、あたしだって負けてないけどっ」
リリアは自分の腹部や腕部をチラチラ見ながら少しばかり悔しがっている。
「うふふふふ、さすがはセザール学園の貴公子カイル様、素晴らしい肉体美ですわ!」
「うるせぇ! 俺は全教科トップの成績で卒業したんだ、そんなの当たり前だ!」
カイルには自分の肉体を晒す趣味は無いのか、上半身を裸にされた事で羞恥心を抱いている様でセリカに対して怒鳴り散らす。
「さぁ、カイル様お次はお穿きになられますズボンを……」
セリカは怪しげな笑みを浮かべ、杖の先端をカイルのズボンへと向ける。
このままセリカの魔法が発動すれば、カイルが実は変質者でない限りその中に履くパンツが姿を現す事になるだろう。
「あわわ、このままじゃカイルさんのズボンが引き裂かれちゃいます!?」
ルミィがおどおどした様子を見せるが、先程ルミィが行っていた発言を考えるとそれが本心なのか演技なのか分からない。
「このっ! 変態っ!」
リリアが顔を真っ赤にしながらカイルに文句をつける。
今さっきまでの言動と反応が180度違うのは、リリアが素直じゃないからなのだろうか?
「変態って、俺だって脱ぎたくて脱ごうとしている訳じゃない!」
「うるさい! あたしはアンタの上半身に多少興味があったわよ、それを、この変態、ド変態、あたしに近付くな、寄るな、失せろ!!!」
リリアは、自分の足元にある土を掴み、カイルに対し投げつける。
「知らねぇよ! 俺は鎖に縛られて動けない、近付きたくても近付けねぇよ! つーか、俺だって見られたくねぇって! だから見えないところまで離れろよ!」
「うるさい、うるさい! あたしが離れたらあのデカブツはどうするのよ!」
リリアは、カイルに対して何度も土を投げつける。
「リリアさんは弓で戦ってるんだから別に離れても攻撃できるだろ!」
カイルに指摘され、リリアは一瞬真顔になるが……。
「何よ、それじゃあたしの攻撃が当てられないじゃない!」
「はぁ? 俺の身体を視認できる距離まで離れてあんなデカブツに矢を当てられない程下手糞だったか? いいや、リリアさんが放つ矢は魔力である程度の誘導性能持たせられるだろ、当てられない理由は特に浮かばないぞ!?」
「う、うるさい! あたしの精神が乱れるから当てられなくなるのよ!」
「は? 俺が穿いている衣服が全部破られた方が精神乱れるんじゃないのか? 現に、俺に土をあほみたいに投げてる時点でリリアさんの精神は十分乱れてると思うんだけど?」
カイルより論理的な指摘を受けたリリアは言い返す言葉が浮かばないのか、顔を真っ赤にしたまま小さく歯ぎしりをしている。
「あら~金髪のお嬢ちゃん? 欲望には素直になった方が良いわよ? 見たいものは素直に見たいと言えばいいのよ? ほーら、わたくし達3人で見れば怖いものは無いわよ?」
セリカは、何かを想像している様な宜しくない笑みを浮かべながらリリアに言うが……。
「黙れ黙れ黙れ! カイルの裸は誰にも見せさせない! このあたしが許さない!」
何故だか分からないが怒り狂ったリリアが、狙いも何も定める事すら行わず、魔法により産み出される矢を魔法により産み出した弓により乱射。
それぞれ放たれた矢は、今までジャイアントゾンビに向けて放った炎属性だけでなく、氷属性、地属性風属性とありったけの属性を乱射した。
リリアが乱射している魔法の矢はジャイアントゾンビに当たり、被弾箇所が炎上と思いきや氷の矢が当たり凍結、岩石の矢が当たり直接の打撃を与え、風属性の矢が肉片を周囲に撒き散らし、当然近くに居るカイルにもそれ等の矢が襲い掛かる。




