5話「セザールタウンのアイドルリリア・ロジフォードさん」
1章
と、ここまでは愉快な? 仲間達の集まるギルド、ヴァイス・リッターに所属する俺の近い未来のお話である。
あのままの流れで、トレントを倒すなんて超王道の冒険者としての話を展開してもきっと面白くないだろうなぁと思うのは俺の主観であるが、何でもないありふれた冒険者としてのお話をするよりも、もっとこう、女の子達とドタバタしたお話をしたいと言うのはきっと俺含めた男性陣の願望、だと思いたい。
さて、どこまで時間を巻き戻したかと言うと。
俺がセザール学園を卒業し、冒険者としての門出を果たして初めての冒険をこなしたりしてなんやかんやあって、ヴァイス・リッターに所属する事になった所で大丈夫と思う、多分。
と言う訳で、俺は今現在自宅に居る訳だ。
時間は、朝日が昇ってしばらく経った所で大体午前8時位でそろそろ気力を振り絞ってベッドから脱出せねばならない。
むぐ、だが、しかし、後5分、後5分だけ寝かせてくれ。
とそんな愚行を自分以外誰も居ない自宅で実行してしまえば1時間以上時間が流れてしまうのだがしかし、布団がいざなう誘惑に負け、ベッドの中で再び目を閉じる。
ベッドの中で2度寝と言う禁戒を犯した俺の脳内に、夢が展開され無事入眠をしてしまう。
学生時代の夢だ。
金髪ツインテールの美少女、レンジャー学部に所属する弓使いのリリア・ロジフォードさんだ。
その美貌は素晴らしいモノがあり、アクアカラーの瞳がその魅力を際立たせている。
噂に寄ると、俺が通っていた学校、セザール学園の男子生徒達がリリアさんのトリコになっただけでは無く、周辺に設立されている別学校の男子生徒達までもがリリアさんのトリコになっているとかなんとか。それで、なんと彼女のファンクラブがあるとか無いとからしい。
「起きなさい。朝よ、いつまで寝ているのかしら?」
夢の中でリリアさんが俺を起こそうとする。
いや、今気持ちよく眠っているんだから起こさないでくれよ。
「そう。リリア様が折角貴様を起こしに来たと言うのにシカトとは良い度胸ね」
そんな事言われましても僕は寝ていますから返事は出来ませ……。
ん……??? 何か腰の辺りに重量感を覚える様な? それで居て少しばかり柔らかい感触を覚えるのだけ……。
「ふーん? リリア様が貴方様の上に座ってやってもまだ起きない、と」
何か知らんけど、俺の上のリリアさんが座っているらしい。
夢だからまぁ、いいんだけどそれにしても重いなリリアさん。
現実でリリアさんに対して重いなんて言ったらものすごい勢いで吹っ飛ばされそうだからとてもじゃないけど言えないけども。
「全く。貴方が起きないならば勝手にやらせて貰うわ」
ここで、自分の身体が感じていた重量感から解放される。
不思議と夢であるにも関わらず開放感を覚えた訳であった。
今度はキッチンの方から何かが焼ける良い音がした。
これはつまり、誰かが料理をしていると言う事だ。
そうかそうか、リリアさんが俺の為に料理を作ってくれているんだな、金髪ツインテールの美少女が俺の為に料理を作ってくれる、今日は実にいい夢じゃないか。
「朝ご飯出来たわよ、いい加減起きなさい」
再びリリアさんの声が聞える。
何だか妙にリアルな声で、俺の耳に直接聞こえている気がする。
まさか、セザールタウンのアイドルと噂されるあのリリアさんが俺の部屋に居る訳なんて無い。
つまり、今日の夢はリアルさまで実現されているみたいだ。
「全く、世話焼かせるわね」
リリアさんがため息をついたと思えば、何やらカンカンカンと金属と金属がぶつかり合う甲高い音が俺の耳に響き渡る。
夢にしてもあまりにも大きな音だったせいで、俺は慌てて跳ね起きる。
ベッドの上から身体を起こしてみるとそこには右手にフライパンを持ち左手に金属製のフライ返しを持ち立っているリリアさんの姿が!
「えええ? リリリリリリリアさん!?!?!?!?」
「何よ? 居たら悪かったかしら? 失礼しちゃうわね」
溜息を一つ、ジト目で見下ろすリリアさんだ。
「は、はははは、いや、はは、ごめん」
「謝らないでくれる? あたしはルッセルさんから命じられてやっているだけよ? 貴方の健康面が心配だからって。ルッセルさんから聞いていなかったかしら?」
そう言えば、昨日ルッセルさんから明日以降俺の健康面のフォローをして貰う為に朝食を作って貰う様に頼んでおいた人が居るって聞いた様な? すっかり忘れていたし、そもそもリリアさんみたいな美人な人に来てもらえるなんて全く想像も出来ていなかった訳で、驚くなと言う方が無理な話だ。




