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47話

「は? アンタ何言ってるの? 誰がカイルと二人っきりにさせるもんですか!」


 リリアさんが、ゆっくりと立ち上がり俺の背中から顔を覗かせているルミィさんに向け鋭い眼光でにらみつける。


「わわわ、わひぃぃぃ。リリアちゃん怖いよぅぅぅぅぅ」


 わざとらしい悲鳴をあげながら完全に俺の背中に隠れるルミィさん。


「リリアさん? ルミィさんが怖がってるし……ね?」

「何よ、アンタ。この小娘が演技してる事すら分からないの? だからアンタは鈍感って言ってるのよ? 分かる?」


 何故だか知らないが俺に対して捲し立てて来るリリアさん。

 確かにルミィさんが何か企んでいる気がしたけど、だからと言ってルミィさんが演技しているとは思えないんだけども。


「いやいや、リリアさん? 聖女の子孫がそんなあくどい事する訳無いって」

「ふーん? カイル? アイドルのあたしを差し置いてその腹黒聖女の味方しちゃうの? 鈍感だけじゃなくって、非情だったの。あたし、今までカイルの朝ご飯何回作ってあげたのかな? あたしのファンが聞いたら凄く怒るだろうね」


 何処か脅迫染みた声で言うリリアさんだ。

 くぅ。そうやって言われると確かにリリアさんに何度もご飯作って貰ったし、味もすごく良いしそこまでして貰ってリリアさんの味方をしないのは非情と言われても文句が言えない。


「カ、カイルさん!? リリアさんとはそんな仲だったんですか!? 今までずっと私をたぶらかしていたんですかぁ? 酷いですよ、非情すぎますっ」


 何故か知らないけどルミィさんが物凄いショックを受けている様に思える。

 俺がいつどこでルミィさんをたぶらかしたか知りたい位だが。

 うん……? 何だか背中辺りに柔らかな感触を感じるんだけど……?


「たぶらかしたって俺はルミィさんに対してそんな事したつもりないけど」


 あれ? 何かリリアさんが唇をすっごく噛み締めている気がするが……?


「あらぁ? ルミィちゃんだっけー? なんでカイルに胸を押し付けてるのかしら? あたしは料理の話をしただけなんだけど、料理自慢しないってもしかして貴女、料理音痴だったりしちゃう? 聖女様って身体に頼らないと男を落せない残念だったりしちゃうのかしら?」


 リリアさんが物凄く得意気に勝ち誇った表情を浮かべている。


「そ、そんな事無いもん! 私だって料理……位作れるんだから! ふーんだ、男の人を悦ばせる武器が可愛い癖に何がアイドルなのよッ!」


 ルミィさんが俺の背中から飛び出し、リリアさんの胸元を指差しながら言う。


「悦ばせるって何? 身体に頼らなければ勝てない宣言かしら? 聖女の子孫様って随分と可哀想ね」


 リリアさんが顔を真っ赤にしている。

 何だか二人の間で胸の大きさで競っている気がするんだけど、何で競っているのか俺には理解が出来ないんだけど。


「そんな事無いもん! 私だって信者の数なら負けないんだもん!」


 信者の数? 実はルミィさんを信仰する人間が沢山居るのだろうか? いや、確かに聖女の子孫な訳だからそれにあやかってルミィさんを信仰する人間が沢山居ても何の不思議でも無いな。


「信者ですって? あっはっはっは。何よ、ばっかじゃない? アンタ天に召されそうなおじいちゃんまで守備範囲なの? あーやだやだ、セザールタウンの聖女様は老若問わず受け入れちゃう超ビッチとか勘弁してくれないかしら?」


 リリアさんが物凄い剣幕でルミィさんを煽り倒している。

 確かに、聖女様の信者と言えば老若男女様々な人が居ると考えられる。

 一方のリリアさんは、アイドルだけあって天に召されそうなおじいさんまでは居ないだろうな。


「フンッ、貴女だって40代のおじさんが趣味なんでしょ? 太って禿げたおじさんとか私無理なんですけどー?」


 ルミィさんが言う通り、アイドルらしいリリアさんのファンになる人の中には40代のおじさんもそれなりに居るだろう。

 天に召されそうなおじいさんに比べれば半分ぐらいの年齢なんだけど、でも男性としてみるとどうなのかと言われたらどう考えても無理がある様な気はする。


「いやー二人共、別にファンや信者の人全てを手中に収める訳じゃないでしょ? それなら……」


 俺が二人の間に立って仲裁しようとしたら、


「カイルさんは黙っていて下さい!」

「女泣かせの鈍感野郎は何もしゃべらないで頂戴」


 ほぼ同時のタイミングで二人から咎められてしまった。

 このままじゃ、ジャイアントゾンビ討伐がままならないんだけども。


「そうは言っても俺達はジャイアントゾンビを討伐しに来た訳であって、リリアさんとルミィさんの喧嘩を眺めに来た訳じゃないんだけど」


 幸いな事にまだまだジャイアントゾンビとの距離は十分にある。

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