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43話

「エリクさん? エリザさんはセリカさんを紹介しに来てるみたいですよ?」


 俺は心の中で抱いた意味が分からない思考を振り払い、一度深呼吸し自分に泣きすがりつくエリクさんを優しく振りほどいた。


「カ、カイルさん!? それはほんとですか! シュバルツ・サーヴァーラーに住むあの漆黒の美女! セリカさんですか! 噂によれば実はSっ気が凄いらしいけど、でもそれがまた良いんですよ! へへへ、セリカさんにがんじがらめに縛られて命令されるなんてまさにドリームオブドリームじゃないですか!」


 セリカさんが自分に興味を持っていると改めて認識したエリクさんは、両拳を握り締め、瞳を輝かせながら早口で捲し立てて来た。

 残念ながら俺はエリクさんが言う様な趣味は持ち合わせていないのだけども、エリクさんがそうされたいならそれで良いんじゃないかなー、多分。

 しかしエリクさん、他のパーティギルドの女の子の事もしっかり把握しているって名実共に女垂らしである事は伊達じゃないとも痛感させられるな。


「セリカさんの方がエリクさんに用があるみたいですし、相思相愛みたいで良かったじゃないですか」


 それにしても、エリクさんなんて名実共女垂らしな男に興味を持つってすごく珍しい人と思うんだけど、一体セリカさんってどんな人なのだろうか? ってのは気になるところかな。


「ふふふふふ、エリザさん! 漆黒の堕天使エリク・ロードを美しき可憐な美ウィザード、セリカ様の元へ案内するが良い!」


 不敵な笑いを見せながら眼鏡をきらりと光らせ、やっぱりメガネをクィッと上げるエリクさんだ。


「えへへへ、エリクさんがセリカ様に興味があって良かったですにゃー」


 エリザさんは猫の被り物を手で撫でながら、こっちはこっちで怪しげな笑顔を見せながら言う。


「ははははは、時は満ちたり、セリカ様の元へ、いざ参らん!」


 エリクさんは、額に手を充てながら転移魔法を発動させた。

 セリカさんとやらが今いる場所は、探知系の魔法を使えばエリクさんには分かるだろう。

 エリザさんは、セリカさんがエリクさんに用件があると言っていたけど、その状況でもエリクさんはセリカさんからぼろぼろな目に遭いそうな気がするのは気のせいだろうか?


「えへへへへ、これでエリクさんはセリカ様とピーな事になりますにー」


 エリザさんが、相も変わらず怪しげな妄想を始めた様だ。

 一体エリカさんがどんな妄想をしているのか、いつか聞いてみたい気持ちが湧くけどもなんだか聞いてはいけない気もするから気にしても仕方ないんだよな、多分。


―エリク―


 セザールタウン外れの墓地。

 セリカはそこでエリクを待っていた。

 深夜の様に人の気配すらしない不気味な気配が漂う空間、なんてことは無く昼間の墓地は先祖のお参り等で訪れる人々がちらほら見受けられ活気で溢れるとまではいかないが不気味な気配が漂い何時幽霊が現れてもおかしくない、なんてことは無かった。

 三日月型のアクセサリーが印象的なウィザードハットを被る全身黒づくめのウィザードは黒色の宝石を右手に持ちながら空を見上げる。使い魔であるみー太君の姿は居ない。

 かれこれ一時間は待った、なんて事は無く恐らくはエリクの魔力を探知したのかここに辿り着いたのはほんの数分前の事であった。

 この宝石を使いエリクの魔力を奪い取って凄いアンデッドを召喚する。そしてセザールタウンに危害を与え、憧れのダスト様に認められ、あわよくばあんなことやこんなことをするのだ、と妄想をしている内に、にへらと顔が緩みだす。

 セリカの妄想が頂点に差し掛かろうとしたところで、突然空間に光が溢れ出し何者かが姿を現した。


「漆黒の堕天使エリク・ロードただいま参上!」


 セリカの耳に、聞き覚えの無い声が聞こえた。

 ダスト様との妄想が良いところだったのに、何て空気の読めない奴なんだとセリカは1つ舌打ちをし、声の主を睨みつける。


「誰? このチビ、悪いけど私は高魔力のウィザードと待ち合わせているのよ、高魔力でもイケメンですらないチビがこの私に気安く話しかけるんじゃないわ、分かったならとっとと失せて頂戴」


 セリカは蔑む様な視線で、自分よりも背が低いエリクを見据えながら吐き捨てる。

 女の私よりも10cmは背が低いチビなんて有り得ない、とっとと転生した方が貴方の為と思いながらもさすがに初対面の人間にそこまで言うのはどうかと思いセリカは再び空を見上げ、ダスト様との妄想の続きを始める。


「あああっ、良いです、実に素晴らしいですその罵倒、背中がゾクゾクしますよっ、さすがはエリザさん、僕の趣味を分かっていらっしゃる! 僕は貴女の事を見た事はありませんが、貴女は僕の事を見た事があるのでしょう、そして一目惚れをした訳ですね! 恥かしさのあまりそれを隠す為あえて罵倒から始まる、実にグレートです! いやぁ、エリザさん実に素晴らしいギルドメンバーじゃないですか!」

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