41話
―セリカ視点―
翌昼。
いつも通りシュヴァルツ・サーヴァラーにセリカは滞在していた。
「みゃーお♪」
みー太君がしっぽを振り振りしながらご機嫌な様子でセリカの元にやって来た。
「みー太君? ご機嫌そうね、何か良い事あったの?」
セリカがみー太君に尋ねると、みー太君はセリカの身体を駆け登りセリカの右肩にちょこんと座って見せる。
「みゃんみゃん☆」
「へー、そっかぁ、それは良かったね。ねぇ、みー太君、私、魔力を強化したいんだけど、何かしらないかしら? みー太君ってヴァイス・リッターに入り浸っているから何か心当たりがあるって思ったのよ」
「みゃお? みゃーお!」
セリカの問い掛けに対し、みー太は口にくわえている青い宝石をセリカに見せる。
「コバルトが手に入ったの? すごいねー」
「みゃー☆」
「私が貰っちゃって良いの? ありがとね」
セリカはみー太君の頭を指先でそっと撫でながらみー太君に感謝の意を伝える。
「みゃーお☆ みゃみゃみゃみゃん?」
「ハイ・ウィザードのエリク? 女性にだらしないって噂は聞くけど私はそういうの興味がないから意識もしてないよ」
エリクの女垂らしさは、セリカの耳にも伝わっているのだがセリカ自身それに対してどうでも良いらしく、セリカはエリクの認識すらしていない様だ。
「みゃみゃみゃ!」
「そのエリクって人が物凄い魔力を持っている? そうね、ハイ・ウィザードだから魔力はあると思うよ。でも、その人にネクロマンス法を使わさせるのは難しいな」
「みゃん!」
「魔力を奪い取れば良い? そうね、やってみるわ、ありがとね、みー太君」
みー太君より、デカいアンデッドを呼び出す為に必要な魔力を確保するヒントを得たセリカは、みー太君の頭を指でそっと撫でると、その為に必要な作戦を練る為に自宅へ戻ったのであった。
自宅に戻ったセリカは、エリクとやらに遭遇する方法を考える。
みー太君が、ヴァイス・リッターに出入りしているから彼女に頼もう。
その後は? 自分が知っている限り、エリクは女が好きとの事。
自分の容姿に自信があるかと問われれば絶対にあるとは言い切れないが、無いともこれはこれで絶対に無いと言い切れない。
少なくとも胸の大きさだけでもその他女性の平均よりはあるつもりで、それだけでも女性の平均点を越えていると思う。
いや、女好きな男にすら相手にされないならそれはそれで衝撃的な事であり、もしそうなったならば自分を見つめなおすいい機会になり得る。
出来れば良い方に転んで欲しいけども、最悪の方に転んでも悪くはない、ならばエリクとコンタクトを取った後の事は心配しなくて良いだろう。
そう言えば、ヴァイス・リッターにはあのカイル・レヴィンが居る。
最悪の結果になっても、足掻きに足掻いて彼との接点を持つ手もある。
いえ、女好きにすら相手にされない容姿で、女性から強い人気を誇る彼と接するのは彼に悪くないか? 容姿がダメでも性格で勝負すれば、身体で勝負だって出来る。
その時は、悲観的に考えなくても、大丈夫と割り切ろう。
続いて、エリクと接した際魔力を奪い取る方法だけど。
黒魔術の力を秘めた宝石があったはず、黒魔術系統に長けた人間以外が触れた場合、その者の魔力を奪い取り宝石に吸い込む力のある宝石が。
セリカは、自宅にある棚の中にしまわれているその宝石を探し出し、見付け手に取る。
直径3センチ程の大きさで円形で赤色を帯びるこの宝石、黒魔術を扱う事の出来るセリカやエリザと言った黒魔術を得意とするウィザードが触れても宝石に魔力を吸い取られる事は無く、逆に宝石に集められた魔力を自分のモノとして引き出す事が出来る。
勿論、エリクが黒魔術に長けているならば話は変わるが、ハイ・ウィザードと言うクラスについて黒魔術を会得する者は滅多に聞かない。
また、黒魔術を扱える人間の中にエリクの名が刻まれていたと言う記憶はない。
幾らセリカがエリクに対し記憶が無いと言えど、同じ黒魔術を学んだウィザードならば最悪最低限の記憶位は残っているだろう。
ならば、恐らくはこの宝石を何らかの手段を用いてエリクに触れさせてしまえば、彼の魔力を奪い取る事が出来るだろう。
この魔力を元に、巨大なアンデッド召喚を試みればセザールタウンを上手く混乱させる事が出来そうだ。
大雑把とは言え、巨大なアンデッドを召喚する為のプランが浮かんだセリカは、そのプランの練度を上げる為プランの試案を続けたのであった。




