4話
「いや、全然覚えていない」
「釣れないわね。まぁ良いわよ、ほら、3人目吐きなさい」
「確か、2年の5月位。俺が鍛錬しているとレティナ……だっけ? その娘が近付いて来て、少し話し込んでいるとその彼氏のグレッド君がやって来て、俺の彼女に何をーって話になったんだ。そしたらレティナさんが俺の魅力を熱く語り出して、続いてグレッド君も俺の魅力を熱く語り出す。で、何か知らんけど二人揃ってお前みたいな奴とは別れると言い、二人同時に俺と付き合うと言い出したんだ」
「ふーん。レティナって娘は筋肉が凄い位しか感想が出て来ないわね。それでも一部の男子から人気は合ったけど。それで、勢いあまってグレッド君と付き合った訳ね」
リリアさんからは何が何でも俺をゲイに仕立て上げたい意思を強く感じる。
「そんな事は無い。二人共勝手に付き合っている事にしてとは言ったよ、レティナさんだけだとグレッド君が可哀想だから」
「何その意味の分からない優しさ。普通は男だからって無条件で突っぱねると思うんだけど」
リリアさんが呆れながら言う。
しかし、優しいと言われても反応に困ったりもするのだが。
「今思えば確かにそうだよね。それで、5人目かな? 5人目は確か、ルミィさんだった様な覚えがある。彼女もまた熱心に頼み込んだっけ。付き合ってる人沢山居るの知っているけど私もその中に入れてって言っていた気がする。勿論勝手に付き合っている事にして良いけどと返事はしたんだけど。そう言えば、ルミィちゃんはそれ以来2日に1回ペースで俺に会いに来たような?」
「それだけ会っておいて記憶にないって、随分と酷いわね。やっぱり貴方、グレッド君が本命なのね」
ルミィちゃんに対しては言い訳もできないが、リリアさんのこの熱意には逆に感心してしまう。
「そんなこたぁ無い。で、6人目。確か2年生の8月位、何か私アイドルなのと宣言して告白してきたっけ、名前はラミィって言ってたような?」
「はぁぁぁ???? 何あの泥棒猫!? あたしに黙ってカイルに手を出すなんて許せない!」
いや、他の5人は良いのかよ。
「だから、勝手に付き合っている事にしているだけだってば」
「知らないわよ、あたしが許さないって言ったら許さないの。考えてもみなさい? 同業者よ? 同業者、同業者がカイルに手を出すなんて太陽が許してもあたしが許さないの」
なんだかデタラメな理論だ。
「セザール学園なら良いのかよ」
「そうよ、良いわ。考えてみ見なさい? 彼等はあたし達の仲間よ? 仲間がカイルに手を出す事位器の大きいあたしは許すに決まっているじゃない」
さも、当然に言う。
「はいはい、そうですか。それで、最後言うね。確かレンジャー学部の……誰だっけ? えっと、確か弓使いで……」
俺が記憶を辿ると、リリアさんが押し黙り口を開く。
何だか目が座っていて怖い。
「……あの娘でしょ、銀髪の弓使い」
「誰それ? その娘が俺に告白して来たとかマジで記憶に無い」
「良いの、あたしが決めたからそうなの、そうしなさい」
何故か俺に告白して来たレンジャー学部の女性を強引に決めるリリアさんだ。
そう言えば、その日を境に何故かリリアさんが度々俺の家に訪れてご飯を作ってくれるようになったような……???
ダメだ、鍛錬と勉学に集中し過ぎて全く思い出せない。
「そうっすか」
どうせリリアさんに何言っても無駄だろう。
(それがあたしなんて言える訳無いじゃないの! あたしならカイルのホンモノになれると思っていたなんてそんな事言えない、言える訳無いじゃない!)
おや? リリアさんがまた押し黙っているが、まぁ良いや次の話題に移ろうか。
と思っていたら先にリリアさんの口が開き、
「それが、アナタが7股していた噂の真相なのね。しっかりアナタ自身が付き合っている事にして良いと言っていたワケ、しかもそれを知っても相手は引き下がらない。カイル、アナタびっくりする位モテているじゃない」
「モテている? なんで? 告白なんて普通はもっともっとされるもんじゃないの?」
物凄く悪気が無く言っているが、確か学園生活中、異性から100人に告白された自慢をしていた女の子が居た覚えがある。
勿論誰かは覚えていないが。
「あのねぇ、7人からも告白されたのよ? 学生生活を送っても誰からも告白されない可哀想な男だって沢山居るの、分かってる?」
「全然」
「はぁ、もう良いわ、折角貴方が調子に乗った所、あたしは100人から告白された。アイドルには適わないと自慢したかったけれど諦めるわ」
どうやら、その女の子はリリアさんみたいだ。
「それはまぁ、随分と凄いお話で」
「そうでしょ? もっと褒め称えなさいよ」
「ハイハイ……」
話の流れでリリアさんを褒めなければならなくてげんなりした所で、ヴァイス・リッターのギルドハウスが見えて来たのであった。
「随分早く付いたわね。あたしが特定の男性と一緒に居る所をギルドメンバーに見られたら面倒な事になるからあたしは先に行くわ」
「結構歩くスピード速かったからね。それなら俺は少しゆっくりしながらギルドハウスの中に入るよ」
(そういう意味で言った訳じゃないのに。カイルってただの鈍感かしら?)
ツカツカツカと、ここまで来るよりも更に歩く速度をあげたリリアさんが俺の視界から消えるまであまり時間は掛からなかった。
俺は、リリアさんに言った通りゆっくりと歩きながらギルドハウスの門を潜った。
門の両隣には来訪者を歓迎するかの様に、白い騎士の石像が設置されている。
また、ギルドハウスも白を基調としたデザインだ。
何故そうなのかと言われたら、どうやらヴァイス・リッターという言葉は他国の言葉であり、翻訳すると白い騎士という意味だからでありギルドハウスはそれに因んだ設計をしているとの事だった。
このギルドハウスは、中に200人の冒険者が滞在可能な広さで、敷地も広い。
本棟の他にも別棟があり、簡易的な訓練場、勉学に必要な書物が揃えられた部屋、食堂や医務室、緊急時に宿泊が可能な部屋が複数、会議を行う為の部屋と言った様々な設備が整えられていた。
「やぁ、カイルさん、おはようございます」
ヴァイス・リッターの門をくぐり暫く歩いた所でウィザードのエリクさんが出迎える。
彼は緑色のとんがり帽子と丸眼鏡が特徴である。
外見からして優秀そうなウィザードであるが、それはその通りであり彼は冒険者ランクSに加えてここのサブマスターも務めている。
実力は折り紙付きと言う奴だ。
「おはようございます、エリクさん。今日も宜しくお願いします」
俺は丁重なお辞儀をし、エリクさんに挨拶を返す。
「ははは、カイルさん、そこまで丁重にしなくても良いですよ」
それだけの実力と地位がありながらもフランクなエリクさんだ。
どう見てもとても良い人にしか見えない。
「あ、カイルさんだーおはよー」
今度はギルドハウスの奥から、トタトタトタと足音を立て右手を軽く振りながら俺の元へ駆け寄って来る女の子が挨拶をする。
随分と嬉しそうにしているのだけど何か良い事があったのだろうか?
いや、それよりもこの娘誰だっけ?
髪の色はピンクで、髪質はふわふわとしていて長さは鎖骨位。
後頭部には赤色で大きめのリボンを身に着けている。
俺以外の男が見たら、滅茶苦茶可愛い女の子だと言うのは何となく分かる。
そう言えば、俺と勝手に付き合っている事にして良いって許可を出した5人目の女の子に似ている気がする。
彼女は教会に所属する娘だったから卒業したら今頃はプリーストになっていると思うし目の前にいる女の子も偶然プリーストだから。
まぁ、ただの偶然か。
「おはよう」
彼女が誰か分からなくても挨拶は返す事が出来るからと適当に挨拶を返す。




