33話
「ルミィさん? おはよう?」
「あはは、もう夕方だけどね、おはよー☆」
俺の挨拶に対し、ルミィさんはニコッと笑顔を見せ返した。
相も変わらずルミィさんの仕草は可愛らしいと思う。
「ねーねー、カイルさん? 明日暇? 暇ならこの前言ったわんわん☆ぱらだいすにいきたいんだー」
今にもはしゃぎ出したそうな雰囲気を出しながら、ルミィさんが言う。
「別に構わないよ?」
「やった☆ じゃ、明日ヴァイス・リッターに集まってから10時から出発しよー」
「良いよ」
わんわん☆ぱらだいすへの誘いに対して俺の了承を得たルミリナさんは、トテトテトテとご機嫌な小走りを見せながら俺の元を去っていった。
―モブ3人衆―
カイルがルミィより、わんわん☆ぱらだいすへ遊びに行く誘いを受けた事を例のモブ3人衆、
つまり、細身の男ウィザードのマーガーに、太った男ファイターのフェートに、ちびな男レンジャーのコーズである。
「むぎぎぎぎぎ、フェート殿、コーズ殿、聞いたでござるか! カイルの輩、拙者等のアイドル、ルミィたんに手を出したでござるッ」
「ブヒブヒ、リリア様だけに満足できないなんて許せないんだなぁ!」
先程のカイルを見たマーガーとフェートが目から血を流しそうな勢いで歯ぎしりをしながら言っている。
「ンな事言ってもよぉ、あんとき結局カイルの野郎はリリア様とお茶出来なかったらしいぜ? 今回だって、カイルの野郎が誘ったんじゃなくルミィの方から誘ってんじゃん」
コーズの言っている事は正論ではあるが、
「むぐぐぐぐぐ、許せないでござる、許せないでござるぅぅぅぅう、拙者だってルミィたんに誘われたいでござるぅぅぅぅぅ」
悔しさに打ちひしがれたマーガーが、地団太を踏みながら両手を握り締め、歯ぎしりをしながら涙を流して言う。
「ったく、で? カイルの野郎が何処に行くかまで分かんねぇぜ? どうしようもねぇし、めんどっちぃからほっとけって」
コーズがくだらないなと言わんばかりにあくびをしたところで、
「アンタ達、今のは本当?」
リリアが、ツカツカツカと足音を立てながらマーガー達の元に近付いた。
「りりりりりりり、リリア様!?!?!?!?!?!?」
リリアが自分達の元へ訪れる事が全く持って予想外の出来事であったのか、マーガーは物凄い勢いで後ずさりをし、そのままドンっと派手な音を立てながら壁にぶつかると口から泡を吹きながらへなへなへなとその場に崩れ落ちたのであった。
「ぶひぶひぶひ! リリア様ぶひ!」
興奮のあまり、フェートがリリアに両手を上げながら駆け寄ろうとするが、
「で? どうなの? おチビさん?」
リリアはコーズに尋ねながら、迫りくるフェートの腹目掛け強烈なストレートを放つ。
「ぶひぶひ!?!?!?!?!?」
リリアから、腹部に強烈なストレートを受けたフェートは口から泡を吹き、気絶しているマーガーの隣まで吹き飛ばされ、白目を向きながらマーガーと同じく気絶をしたのである。
「お、おう、リリア様、どうもカイルの野郎がルミィちゃんとデートするらしいんだ。けどよぉ、行先まで分からねぇから諦めてたところさ」
今のやり取りに、コーズは目を丸くしながらもここまでの経緯をリリアに説明した。
「おチビさん? 私の時は後ろからつけておきながら、ルミィちゃんにはつけないワケ?」
自分の邪魔はするが、リリアにとって恋敵であるルミィの邪魔をしないコーズを不服に思ったのか、リリアはキッっと鋭い睨みをコーズに利かせた。
「ななな、なんの話だ? あん時は偶々リリア様と鉢合わせただけだ」
コーズは、リリアから向けられた鋭い視線を逸らさない様にしているみたいだが、どうしても僅かながらに目を泳がせてしまっており、コーズは嘘をつくのがあまり得意ではないのかもしれない。
「私はセザール学園のレンジャー学部次席で卒業したのよ? あの程度の尾行に気付かないと思われるなんて、随分と舐められたモノね」
リリアはツインテールの左側を触れながらコーズに向け告げる。
「お、おい、俺っちだって伊達にレンジャーやってる訳じゃねぇぜ? 俺っちだって対象に気付かれない様尾行する技能は高いってのにっ」
コーズが自称する通り、コーズの尾行能力は同年代のレンジャーに比べては高い方だ。
それにもかかわらず、高々学校を出たばかりの新人レンジャーに自分が尾行していた事を気付かれてしまった事に対し、コーズは悔しさやその事実を認めたくない感情に襲われている。
「そうね、貴方の尾行スキルは高かったわ、ただそれでも私が見極められただけね」




