30話
「そ、そうだね、うん、でも、ちょっと明る過ぎるかなぁ」
俺は得意気になっているルミィさんに気を使いながらルミィさんの産み出した光体が明る過ぎる旨を指摘する。
「あ、ほんとだ、ごめんなさーい」
ルミィさんは、小さく舌を出しながらウィンク一つ見せると、産み出した光体の光量を丁度良くなるまで落とした。
「あざといわね」
リリアさんが周りに聞こえない様に小さく呟いていた。
「あの辺りにアンデッド達は居ますね、僕はカイルさん達がやられてしまいそうになったら加勢しますから、頑張ってください」
「分かりました、リリアさん、ルミィさん、俺が先陣を切るから後ろから援護をお願い」
「アンタこそ、やられるんじゃないわよ」
「はぁい☆」
エリクさんに見送られ、俺達はアンデッドの討伐へ向かう。
ライティングにより産み出された照明により、大体50M先にスケルトンとゾンビの混合部隊が居る事を確認した。
大体、数は20位だ。奴等を統率するネクロマンサーは居ないのか、何の目的も無くその辺り一帯をウロウロと歩き回っている。
見る限り、簡単に討伐出来そうだが、もしかしたらこれが討伐しに来た冒険者を誘い出す為の罠の可能性もあり得るから油断はしない方が良いだろう。
しかし、これが冒険者を油断させる為の罠を仕掛ける為にあえてネクロマンサーがこの場に居ないケースで無いとすれば、このアンデッド達を使役したネクロマンサーは何の目的でこのアンデッド達を蘇らせたのか少しばかり気になるところだ。
俺が知る限り、セザールタウン内にアンデッドが出没する話はあれど、セザールタウン内にネクロママンサーが出没する話は聞かない。
つまり、他国に居るネクロママンサーがわざわざセザールタウンまでやって来てネクロマンス法を発動している訳だ。
そんな手間をかけているのにもかかわらず、わざわざ蘇らせたアンデッド達を放置する理由に理解をしかねる訳だ。
「行くぞ!」
アンデッド達に近付いた俺は鞘に納められたソードを引き抜き、身構える。
アンデッド達は、俺が近付いても俺の存在を認識していないのか先程と変わらずこの辺りをウロウロとしているだけだった。
「食らいなさい」
俺の後方に居るリリアさんが、魔法の弓矢を産み出しスケルトンに狙いを定める。
リリアさんが産み出した矢は炎の矢だった。
リリアさんが構える弓より放たれた炎の矢は、ライティングで照らされている周囲を更に明るさせながらスケルトンに命中、スケルトンの身体を炎で包みこんだ。
リリアさんの矢により全身が炎で包み込まれたスケルトンだけども、やはり何事も無かったかの様に周囲をウロついているままだ。
しかし、スケルトンを包み込んだ炎はその骨を焼き尽くすとスケルトンは骨の姿から灰へと変貌させた。
さすがのスケルトンも灰になってしまっては身動きを取る事は出来なかった。
スケルトン1体討伐と見て良いだろう。
このスケルトンが炎に包まれ灰になる間にもリリアさんは別のスケルトンとゾンビに対し炎の矢を放ち、それぞれ全身を炎で包み込ませていた。
「私だって負けませんから!」
ルミィさんが、範囲治療の魔法を、俺が居る場所よりも少し先の、アンデッド達が6体集まっている場所目掛けて発動させた。
術者が定めた場所を中心とし、術者が想定する範囲内に存在する生命体が負った傷を癒す子の魔法、実はアンデッド達にとっては一般的な生命体とは違い真逆の効果となりウィザードが使う攻撃魔法と同じくアンデッド達にダメージを与える事が可能になっている。
「難しい神聖魔法、ルミィさんやるね」
さすがは神聖魔法の専門家であるプリーストと言ったところか、神聖魔法の専門家ではない今の俺にはエリアヒール、なんて比較的高度な神聖魔法を扱う事は出来ない。
「なによ、大したことないじゃない」
リリアさんが少しばかり冷たい声をし、ルミィさんに文句をつけながら多数残っているアンデッド達に魔法矢を放つ。
俺はルミィさんの魔法を大した事無いとは思わないが、確かにルミィさんの放った範囲治療を受けたアンデッド達はダメージを受けた衝撃で少しばかりのけ反ったもののその動きを止める者はいない。
魔法自体は高度であるものの、ルミィさん自体の魔力が高い訳では無いせいで魔法の威力自体は大きくない様だ。
「いや、十分だ」
俺は、ルミィさんがダメージを与えたスケルトンに対し、炎矢の魔法を放つ。
俺が放った炎矢を直撃したスケルトンはその衝撃で全身をバラバラにさせられその場に崩れ落ちた。
リリアさんの魔法矢と違い弓で引き絞り矢を放っていない俺の魔法ではリリアさんと同じ様な威力を出せず、恐らくルミィさんの魔法によりダメージを受けていないアンデッドを1撃で仕留める事は出来ない。




