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28話

 セリカは志向を巡らせる。確かダスト様は、この杖は魔族からもらったものだと言っていた。

 現在のセザール国においてネクロマンス法を扱えるのは居ない、時折アンデッドが出現する騒ぎが生じるが、その時の犯人は魔族か、或いは他国を縄張りとする邪教徒集団か。

 一応セザール国内に潜伏する邪教徒集団の可能性も無くは無いが、アンデッド大量発生の犯人としてセザール国内の邪教徒が表立って出た事は、少なくともセリカは知らない。

 発生したアンデッド達を下手に処理し、自分の身に危険が及ぶ位ならばこのまま大量に産み出したアンデッド達を放置した方が良いだろう、セリカはそう判断する。

ダスト様からはセザール国を混乱させろと言われている以上、ダスト様から何かある事は無いだろう。

 このままアンデッド達を放置すれば、その内民家がアンデッド達人襲撃され彼等が衛兵に通報、冒険者ギルドに伝わりこのアンデッド達を討伐する冒険者が送り込まれ200体程度の下級アンデッド相手ならば明日の朝を迎えずとも全て討伐されるだろう。

 これならアンデッドを大量発生させた犯人が誰か分からずこの件は闇に葬られる事に期待出来る。

 セリカは僅かながらに罪悪感を抱きながらも、まだ人々が寝静まる時間ではないから大丈夫と自分に言い聞かせながらシュヴァルツ・サーヴァラーへ戻ったのであった。


―カイル視点―


 セリカが共同墓地にて大量のアンデッドを召喚してから2時間程経過した。

 現在21時、カイル・レヴィンは剣の鍛錬を終え帰宅しようと準備を整えているところだった。


「大変です!」


 俺が訓練場を後にすると、神妙な顔をしながら俺の元に走ってくるエリクさんの姿があった。

 珍しく、女を垂らしていそうな雰囲気を感じられない真面目な顔をしている。


「どうしたのですか?」


 俺がエリクさんに事情を尋ねると、


「カイルさん! 丁度良かった、今さっきルッセルさんから、セザールタウン共同墓地で大量の下級アンデッドが発生したから討伐出来る人が居ないか探してくれって頼まれたんですよ。相手が下級アンデッドだから出来るだけ僕じゃなくって新人に近いギルドメンバーに頼んでくれって。時間が時間だから頼める冒険者も少ないけど、でもこの時間まで鍛錬しているギルドメンバーが居るから少なくともその人には頼めるからって」


 まるでその討伐メンバーに俺を指名している様に聞こえなくも無いけど、でもルッセルさんの言う通り下級アンデッド相手ならば新人の実践練習にはもってこいだ。

 今までの鍛錬で肉体は疲弊しているが、精神力の鍛錬と思って討伐に向かった方が良いだろう。


「俺は構いませんけど」


 俺がエリクさんにアンデッド討伐に参加の意を示すと、


「カイル? そんなところで何をしているの? まさかあたしを待ち伏せていたんじゃないでしょうね?」


 同じくこの時間まで主に弓術の鍛錬を行っていたリリアさんがやって来た。


「リリアさん、実は……」


 エリクさんが、リリアさんに対しアンデッド討伐の件を説明する。


「仕方ないわね、カイルがどうしてもアンデッドを討伐したいっていうならあたしも協力するわ」


 別にどうしても討伐したい訳でも無いけど、まぁ良いや。


「あ、カイルさんだ☆ えへへ? 帰る時間一緒だね、一緒に帰ろうよー?」


 どうやら、この時間まで神聖魔法の勉強をしていたと予想出来るルミィさんが俺を見付け、小走りで駆け寄ると俺の腕を取ってべったりとくっつきながら言う。


「いや、実は今から共同墓地に発生した大量のアンデッドを討伐しに行くんだ」

「ふぇ!? こ、こんな時間から!?!? す、すごいね、カイルさん」


 確かにルミィさんが驚く通り、こんな時間から魔物討伐を行うのは珍しい。


「フフフ、ルミィさん、折角ですからご一緒どうですか? なぁに、ルッセルさんからは新人の育成をしたいと言われていますから問題ありませんよ」


 エリクさんが、ルミィさんを口説いているのかと言わんばかりの怪しい口調でルミィさんを誘う。

 誰がどう考えたって、こんな言われ方をすれば断る以外の選択肢はないのだけど。

 エリクさんに言われたルミィさんは、キョロキョロと周囲を見渡し、リリアさんを視界に収めたところで一瞬止目た後顔を元の位置に戻して、


「カイルさんが頑張るなら私も頑張っちゃう☆」


 ルミィさんが、絡めていた俺の腕をぎゅっと締めながら言う。

 結果、俺とルミィさんは物凄い密着している状態となっている。


「カ、カイルさん!? 非常に羨ましいです、ですから戦いが終わった後僕にもその場所を譲ってくれませんか!?」

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