26話
―セリカ視点―
ヴァイス・リッターとは違うパーティギルドの1つであるシュバルツ・サーヴァラーと言う名のパーティギルドがある。
シュバルツ・サーヴァラーのギルドハウスは石造りの建物であり、壁は紫色をベースとし、屋根の色は黒色とやや不気味な印象を抱いているこの建物は、ギルドマスターであるダスト・マッカードをトップとし、以下ギルドメンバー全てをウィザードで固めている、ウィザード専門のギルドである。
カイル達の所属するヴァイス・リッターとはあまり仲が宜しくなく、時折主にダストとヴァイス・リッターのギルドマスターであるルッセル・フォワードが衝突をする事がある様だ。
何故ダストとルッセルが衝突するかと言うと、ダストがルッセルに対し一方的な劣等感を抱いているからである。
ダストは、ギルドマスターとしての成果や一戦士としての戦闘能力こそ高いものの、男性の平均身長よりも低い160cmであり、一方のルッセルは男性の平均身長よりも高い180cmである。容姿の淡麗度合いも、ダストに比べルッセルの方が秀でており、女性からの人気もダストが地であればルッセルは天と言う程の大きな差が生じている。
勿論、ダストそのものはギルドマスターの地位についている事もあり一般的に見れば優秀な人物であるのだが、自身とルッセルとを比べた際の差があまりにも大きすぎるが故にダストはルッセルに対し非常に強い嫉妬心を抱いているのである。
そんなダストとは違い、ルッセルは全く持ってダストに対しては同じギルドマスターであること以外に興味関心を抱いていないのであった。
この様な人物特性を持つダスト・マッカードをギルドマスターとして置くパーティギルド、シュヴァルツ・サーヴァーにセリカ・ジュピテスは所属していた。
女性の平均よりも少しばかり高い背丈で美人か可愛いならば美人にカテゴライズされる容姿を持ち、肩程まで伸びた青紫色のサラサラなストレートヘアーが印象的なセリカ。
シュヴァルツ・サーヴァラーに所属している通り彼女は18歳のウィザードである。黒色を好み、ウィザードとして身に纏う衣服も黒一色で固めており、今は身に着けていないが彼女が被るウィザード用の帽子には美しい黄色みを帯びた三日月型のアクセサリーが付けられており、黒猫の使い魔である『みー太君』を使役し肩に乗せている。
「失礼します、ダスト様」
ダストに呼ばれたセリカは、ダストの部屋に訪れた。
「早かったな、セリカ……っておいおいおいおいおいーーーーー!」
自分の部屋に訪れたセリカを見たダストは、専用の机を前に、椅子に座っている状態で右手をぶんぶんと大きく振り、左手で目を覆い隠しながら視線を大きく外した。
「ダスト様? 申し訳ありません、私としては可能な限り急いで参りました所存で御座います。いまわたくしが身に纏っているこのバスタオル1枚、その1枚を身に纏う時間すらも遅いと申されるのでしたらわたくしの判断ミスで御座います。わたくしが居ましたシャワールームよりダスト様のお部屋までの道中、他の方々に対しわたくしのあらでもない姿を見られてしまうのは、その姿を見た方々に申し訳ないと思いましたが、このギルドは主に女性ウィザードで構成されている手前、ダスト様のご命令を優先させバスタオルすらまとわぬ姿で訪れるべきでございました。申し訳御座いません、ダスト様がわたくしの貧相なお身体をお望みで御座いますならば、せめてものお詫びと致しましてこのバスタオルをお脱ぎいたします」
現在、ダストの目の前に訪れたセリカはシャワーを浴びた直後可能な限り急ぎダストの部屋を訪れた為、身体にバスタオルを巻き、重要な部分を必要最低限隠しているだけの状態だ。
セリカは、左手で目を覆い隠しながらセリカから大きく視線を外しているダストの前で、身体を巻くバスタオルを固定させる為、奥にねじ込んでいる部分を外側に外し身体に固定させていたバスタオルを解く。
セリカの手によって身体への固定を外されたバスタオルは、ストッと音を立てセリカの身体より外される。
セリカの身体からバスタオルが外された事により、一糸纏わぬセリカの裸体が晒される事になる。
全体的に細身でありながらも、胸部や臀部、太ももと付くべき部分にはしっかりとした肉付きをしており、男性からすればモデル並みに魅力的な肉体だろう。
セリカ自身、自分を貧相な身体と言っていたが全く持ってそんな事は無く、ふくよかに育っている胸部は女性の平均よりも1ランクは上であり、しっかりとした大きさを誇っている。
「ち、ちがうちがうちがう、逆だ逆、幾ら俺様の命令だからって着る物位ちゃんと着ろよ! 俺様はルッセルの野郎とは違うからな! ギルドマスターの権力を使って女の子をあーだこーだする趣味はねぇんだ! だからせめて今脱いだモノを着ろ! ちがう! 普段着に着替えてから出直せ!」
どうやら、物凄い勘違いをしているセリカに対し、ダストはセリカに向ける視線を大きく外したまま、セリカに対して命令を下した。
「……ダスト様がそうおっしゃられるのでしたら従いさせて頂きます」
まるでセリカは、ダストが望むならば最後までと思っていたのだがそれを否定され残念であると言いたげな空気を出しながら、今しがた脱ぎ捨てたバスタオルを拾い上げ再度身体に纏うと一旦ダストの部屋を出て、着替えを済ませた後再びダストの前に現れたのである。




