21話
「ブヒヒそれがそうもいかないんだなぁ。君もリリア様の事は知っているんだなぁ?」
「ウッ、リリア様、だと!?!?!?!?」
ファイターより、リリアの名前を聞いたレンジャーは、思わず目を見開きしばし唖然とした。
「拙者の情報網によると、ルミィちゃんだけでなく、カイルはリリア様にも手を出したでござる。これは断じて許されぬ愚行で御座る! せめて、せめて我等の手でリリア様を救済せねばならぬではないで御座ろうか!」
ウィザードが、拳を天高く突き上げ更なる力説をした。
「クッ、本当は俺っちもカイルの女事情に興味はねぇ、けど、けど、リリア様に手を出しちまったとなれば、そうだな、お前達との恩もある、微力ながら俺っちも協力すっぜ!」
レンジャーがサムズアップを見せ、この二人に協力する意思を見せた。
「あら? 貴方達、私達に協力してくれるのかしら?」
彼等の隣でこの話を聞いていた3人組の女の内、鉄製の軽い鎧を身に纏い腰にレイピアを収めた鞘を携える女ナイトが彼等に声を掛けた。
彼女もまた、話した言葉こそやや明るく聞こえるが、何処か陰鬱なオーラを纏い近付き難い印象を抱いている。
彼女なりに努力を経たのか、細身で美しい肉体を持っているのであるが、悲しい事か女性としての武器で胸部につくハズである筋肉と脂肪が複合されたモノは乏しく、彼女の胸元からは哀愁が漂っていた。
恐らくは、その悲しき胸部が彼女から自信を奪い何処か陰鬱なオーラを発する事となったのであろう。
「貴方達がカイル様からリリアやルミィを剥がしてくれればカイル様は私達のモノに出来るからな」
とても女性の口調とは思えない言動をする彼女は、男ファイターと同じ装備をし、悲しい事か体形までもが彼と似ているのであった。
それでも、胸部に至っては全身についている脂肪のお陰かそれなりに見えなくも無く、一部のコアな男性に需要が無い訳でも無い為男ファイターと比べれば異性関係で悲惨な目に遭う事は少ないのかもしれない。
しかしながら、一般的な美的感覚を持つ男性からすれば彼女から迫られた日には拷問と感じてしまうのだろうが。
「カイル様のぴー、えへへ、えへへへ」
これまた背の低い女ウィザードがニヤニヤとしながら小声で呟く。
彼女は頭に猫のぬいぐるみの様なモノを被り、目の下には濃い隈を作っている。
男ウィザードや女ナイトも陰鬱と感じ取られたが、彼女はそれを遥か凌駕するレベルの闇と暗さと陰鬱さと全てを兼ね備えた、まさに闇の住人とでも言う表現が似合いそうなほど負のオーラを纏って居たのである。
そんな彼女の胸部は、女ナイトよりもマシではあるが残念ながら可愛いと言う表現が似合いそうなものであり、女性の武器として扱うには少々無謀な領域ではあったがそれなりの需要は見込める為、それを武器に攻め込んで全く勝算を作れないと言う事は無さそうであった。
ただ、本人はどうやらカイルに関する妄想をしているらしく、実際にあれこれするよりも何か怪しげな事を妄想する事の方が好きそうに見えるのであった。
「うむ、貴殿達と拙者達とは利害が一致しそうに御座るな、ここは共闘致すに御座る。ならば拙者の予測を貴殿達に伝えようぞ。女垂らしなカイルは、リリア様にも手を出すでござる。
カイルは威力こそ強く無かれ多種多様な魔法を扱う故、恐らくリリア様に睡眠魔法を掛け昨日カイルがルミィちゃんと行ったお店に向うでござろう」
何だかよく分からない男ウィザードの迷推理に対して、
「ブヒブヒ、名推理なんだな」
「おお、そうだな、私もそう思うぞ」
ファイター二人が、うんうんと頷き彼の迷推理に賛同する。
「えへ、えへへ、カイルさんがリリアさんを眠らせてぴーでぴーなことしちゃうんですかにゃー?」
わざわざ魔法を使ってまで眠らせたとなれば、女ウィザードの推理の方が正しそうに聞こえる。
正しそうに聞こえるのだが、何やらカイルとリリアとの間に生じる危ない妄想をしているのか、にへにへした目つきで少しばかり涎が垂れており、そんな様子では彼女の推理に対する信憑性を抱きたいと言う気持ちが失せてしまう。
「まぁ、俺っちもそこのウィザードちゃんの予想は無くもねぇと思うが、幾ら女垂らしのカイルとは言え下手すりゃ犯罪に片足突っ込んじまう様な真似はしないと思うぜ?」
「そうで御座ろう、うむ、拙者の名推理を褒められのは悪い気はしないでござる」
自身の迷推理を名推理と信じて疑わない男ウィザードが少々得意気に言う。
「いや、わりーけど、アンタの予想は無理があるぜ? わざわざ魔法で眠らせてまでお茶をするなんて奇特な男なんて居たら驚きもんだぜ?」
男レンジャーが、やはり呆れながら男ウィザードに対して言う。
「ぬぅ、万が一にも拙者が睡眠魔法を覚えた暁にはやってやらぬ事も無いで御座る」
「おいおい、マジかよ。まぁ良いさ、リリア様を尾行すれば良いさ、その辺レンジャーの俺っちなら得意分野だ、任せときな」




