17話
「否定出来ないわね、自己顕示欲の高い女は相手を陥れる為なら手段を択ば無い傾向は否定出来ない」
「だ、だよね、だよね? カイルさん私の友達に興味無さそうだったし、その噂の方が間違ってるんじゃないかなー?」
ルミィは、アリアに向ける視線をチラチラとさせながら、一旦精神を落ち着かせ様と紅茶を1口程飲んだ。
アリアはそんなルミィの様子を見、更に1つ程間をおいて、
「カイルって奴がルミィと別れた後、こっそり貴女の友達と会っていた、なんて事は無いの?」
「そんな事無いよ? 私と一緒にヴァイス・リッターに戻って、カイルさんは訓練場に向かったからねー」
「そう言われてみればそうね。私がヴァイス・リッターを後にする直前にもカイルって奴は訓練場に居た」
アリアは、カイルがやる事をやった後に訓練場に向かったかもしれないと思ったが、訓練場で剣を振っていたカイルは疲労の色が濃かった事を思い出し、それならば他の女の子と遊んでいた可能性は低いだろうと判断をした。
「ね、ね? カイルさんは女の子をもてあそぶ様な人じゃないよ?」
ルミィは、姉に対して少々上目遣いをしながら言う。
そんな仕草を見たアリアは少々押し黙って、
「アンタねぇ? そう言うのは男を口説き落としたい時に使うモノでしょ? 姉、女の私に使ってどうするのよ?」
アリアは少々呆れながらルミィに言う。
「えへへ、だってー」
ルミィは、はにかみんだ笑みを見せながらアリアに返事をした。
「全く、女の武器を使いこなすと言うかあざといと言うか、そういうところはホントお母さんに似てるわね」
再度、ルミィに対し呆れながら言うアリアであるが、
「あ、う、うん、そ、そうだよね」
アリアが母親の話題を出した瞬間、ルミィは何かを思い出したのか俯いてしまう。
「ごめん、お父さんとお母さんの事思い出させたみたいね」
アリアは、父親と母親の事を思い出し、涙をこらえている様に見えるルミィを見ながら、自分は父親と母親との死別に対し、仕方が無い事であると割り切り、この様な状況になってしまった以上ルミィにとって唯一の家族であり姉である自分自身が生活の柱となり支えていかなければならないと覚悟を決めていた。
しかし、自分よりも3歳幼いルミィが自分と同じ様に割り切れる訳が無いのは仕方無いと思い、アリアは少しばかり目を閉じたのである。
「そ、そんな事、無い……よ?」
ルミィは、父親と母親と死別しなければならなくなった3年前の悲劇を思い出し、ぽたっ、ぽたっと抑えきれなくなった涙を膝の上に落とした。
ルミィが過去の悲しみに耐えられない事を察知したアリアは席を立ち、ルミィの近くに移動し、ルミィの背中にそっと手を触れ、
「ルミィ? お姉ちゃんが居るから安心して? 最初はお父さんとお母さんが残したお金が減っていく事が不安だったけど、でも、エリク君を上手く利用出来る様になってからは収入面が安定したの。私が若くて綺麗な内に稼げるだけ稼げられれば私とルミとの生活は安定するから」
アリアは、そっとルリィをなだめる様に言う。
「うっぐ……で、でもそれじゃお姉ちゃんがぁ……」
ルミィは、涙で赤く腫らした目のまま涙声でアリアに返事をする。
「私の事は気にしたらダメよ? 私はお父さんに似ているし、お父さんの話だと聖女として名を連ねたひいお婆さんにも似ているから大丈夫よ」
アリアが口にするひいお婆さん。
彼女は若き頃、コルト大陸の危機を救った英雄パーティに所属していた聖女として今も尚その名を連ねている。
彼女は寿命を迎える間際自等の魂を触媒とし聖神の杖と言う杖を生み出しその魂を宿し、再度訪れる災厄に備えとある神殿にて安置されている。
同様に、彼女が所属している英雄パーティの他メンバーも自らの魂を触媒とした武具へと変貌させ各々が望んだ場所に安置されているのである。
それらの、彼等の魂を触媒とし産み出された武具はコルト大陸内で神遺物と呼ばれ語り継がれているのであった。
「大丈夫じゃないよぉ……お姉ちゃんまでいなくなっちゃったらいやだよぉ……」
「心配しないでルミィ? もし、私が居なくなっても、ルミィは素敵な旦那さんを見付けて幸せな家庭を築けば良いの」
アリアは、柔らかな笑顔を浮かべながらルミィに言う。
「ヤダ、それじゃお姉ちゃんは!? お姉ちゃんだって幸せな家庭築いてよ」
アリアの言葉を受け、アリアと死別してしまう未来を想像してしまったルミィはその悲しみに溢れる世界に負けたのか、大粒の涙を瞳から零す。




