15話
「あはは、ごめんごめん、ルミィちゃんはカイルさんが大好きだもんねー? もう、しょうがないなぁ、私達だって悪魔じゃないからー、カイルさんを取って食べたりしないよー、あ、でもちょっとつまみ食い位はしちゃうかもねー」
ルミィさんの右隣りに座る女の子が、やはり小悪魔的な空気を見せながら悪戯的にルミィさんをからかって見せる。
「そ、そんなのダメだよっ」
ルミィさんが、むすーっとした表情を見せながら右隣りに居る女の子に対して軽くにらみを利かせた。
「やだなー、冗談に決まってるよ。そんなことしたら他の派閥の女の子達から何されるか分からないからねー」
「そーそー、だから私達はカイルさんづてに男の人を紹介してくれればいいかなー、セザール教会って女の子ばかりで男の人との出会い無いもんねー」
俺の右隣に座る女の子が言う。
彼女の言う通り、共学であったセザール学園とは違いシスターしか居ないセザール教会では確かに男の人との出会いは乏しい。
まぁ、改めてルミィさんからこの女の子達に男の人を紹介してくれと頼まれた時考える事にしよう。
この後も暫くの間女の子達との談笑を続け、お昼位になりお店への客足が伸び始めた所で解散し、俺とルミィさんは一度ヴァイス・リッターへ戻ったのだった。
―ルミィ―
カイルと共にヴァイス・リッターへと戻ったルミィは、ヴァイス・リッター内でカイルと別れた後、折角あこがれのカイルとのデートのつもりであったが教会に所属していた際のシスター達と偶然出会ってしまう、想定外の悲劇に見舞われ少しばかり気落ちしながらも自らが扱う、魔法の対象者が受けた傷を治療する治療術等の魔法の練度を上げる為にヴァイス・リッターに設置されている自習室へと向かい勉強をしていたのであった。
ルミィが向かった自習室では、ルミィの他にも主にウィザードやプリーストの人達が、各々の扱う魔法に対する練度を上げる為に必要な勉強をしているのであった。
ルミィは、3時間魔法についての勉学を行った後ヴァイス・リッターを後にし、自宅へ戻る為の道中で姉アリアと共に今夜食べるご飯の購入をし、帰宅したのであった。
ルミィが現在姉のアリアと一緒に住んでいる家は、6人程の家族が住むに丁度良い広さの家である。
一般家庭としては十分な広さを持つ家であるが、帰宅したルミィを迎える家族は誰も居なかった。
ヴァイス・リッターより帰宅したルミィは、リビングに明かりを灯すと身に着けているプリースト用の衣服から部屋着へと着替え、キッチンへ向かいヤカンに水を入れコンロの上に置き、コンロに配置されている調理用の炎を発生させる為のマジックアイテムを起動させ熱湯をを作り出す。続いて棚にしまってある紅茶の葉とティーカップを取り出し、ティーカップの上から熱湯を紅茶の葉にくぐらせ、自分の分と姉アリアの分の紅茶を完成させリビングの中央に配置されている食事用のテーブルの上に運んだ。
飲み物の準備を済ませたルミィは、ヴァイス・リッターから自宅へ戻る途中にあるお店で購入した晩御飯として食べる為のサンドイッチを自分と姉の分のお皿の上に乗せテーブルの上に置き、晩御飯の用意を終えると自室に移動し姉の帰りを待ったのであった。
「ただいま」
ルミィが自室に移動し、10分程経過したところで姉のアリアが帰宅した。
「あ、お姉ちゃんおかえりー」
姉の帰宅を知ったルミィは、自室からリビングへ移動し夕食を並べたテーブルの前に配置されている椅子に座った。
一方、帰宅したアリアは今着ているプリースト様の衣服から部屋着へ着替えた後予めルミィがアリア用に並べた、ルミィから見て対面の位置にある椅子に座った。
「ねーねー、お姉ちゃん? エリクさんとはどうだったの?」
食前の挨拶を済ませたルミィは、サンドイッチを手にとりながらアリアに尋ねる。
「いつも通りのエリク君だったわ、相も変わらず女性を見たら飛び付こうとしたわよ」
「ええ!? お姉ちゃんと一緒だったのに? 酷いね」
「と言っても、エリク君の視線の動きと表情で分かっただけだから未遂ってところね」
ルミィの質問に対し、アリアは眉一つ動かすことなく淡々と返事をした。
「折角お姉ちゃんと一緒なのに、未遂でも酷いよ?」
「そう? 私から見てエリク君はお金を稼ぐ為に必要な道具でしかない以上、私以外の男に目移りされたところで何も思わない」
アリアが言う通り、アリアにとってエリクとは冒険者が依頼を請ける際に利用する冒険者ギルドにて、高い報酬を得られるランクの高い依頼をこなす為に必要な駒としか思っていない。
プリーストであるアリアにとって、魔物を討伐出来る攻撃力を持つ冒険者は貴重な存在であるそれ故に出来るだけ強く且出来るだけ自分に害がない高ランク冒険者と仲よくしておく必要がある。
エリクは高ランク冒険者であり、現在彼が付いているクラスはウィザードの上位であるハイ・ウィザードであり、エリクは言動こそ女性にだらしないのであるが、女性に対し身体的に害を与えると言う事は無く、実はエリクはアリアにとってさほど害がある訳でも無い。




