14話
確かルミィさんは俺の彼女に立候補すると言っていたけど、俺がルミィさんと知り合ったのはヴァイス・リッターだったから一目惚れって事は無いよな?
「そ、そんな事無いもん! 一目惚れなんかじゃないもん!」
ルミィさんは頭を左右にフルフルフルと振り、その女の子の言葉を否定する。
「あ、そうだよねー。ルミィちゃん、教会に居た時の頃からカイルさんにお熱だったもんねー? あはっ? 確かカイルさんのブロマイドを秘密裏に入手してこっそり見てたよねー?」
今度はルミィさんの左隣に居る女の子がルミィさんをからかうかの様に言う。
いやいやいや、俺のブロマイドってどーゆーこと? 一体どんな手段で手に入れたか気になるぞ!?
「みんなだってカイルさんに興味深々だったじゃん!」
むすーっとしながらぷくぅーっと頬を膨らませながら周りの女の子達に抗議するルミィさんだ。
「えー、そうだよー? 私達はルミィちゃんと違って興味深々なだけだよー?」
と、今度は俺の右に座る女の子が俺の右肩辺りにもたれかかった。
ふわっとした髪の感触が右肩から伝わると同時に少しばかり胸の鼓動が上がった事を感じさせる。
「わー、わー、カイルさん! ダメですーーー!」
何故かルミィさんが、俺とその女の子との接触を止めようとする。
「えー? なんでーダメなのー? カイルさんはみんなのカイルさんだよー?」
その女の子が何やら心の奥底に小悪魔を宿しているかの様な笑みを見せ、ルミィさんの右隣りに座る女の子が何かを閃いたかの様に手をポンと叩いて、
「あっ、ルミィちゃん? 一目惚れなんかじゃないっていったよねー? まさかまさかー? ルミィちゃんってさぁ、たしかー、ヴァイス・リッターってパーティーギルドに入ってたよねー? ひょっとして、ひょっとしちゃうけどー? ねぇ? ほらぁ、セザールタウンってたくさん人居るのに偶然カイルさんを見付けて偶然逆ナンしちゃったーなんてあるのかなー?」
女の子の誘導尋問染みた質問に対し、ルミィさんが俺に同じパーティギルドと言う事は言ってはダメと言いたげに目で合図をする。
俺はその合図を受け取り、パーティギルドの件は何も言わない様にしようと思うが、
「ぐ、偶然だもん」
当のルミィさんは、自分の右隣りに座る女の子に対して目線を合わせる事無く自分の目の前にあるチョコレートケーキに向けたのである。
これじゃ、私は嘘を言っていますと宣言している様なモノにみえてしまうが。
その事に気付いたのか、その女の子はいたずら好きな少女の様な笑みを浮かべて、
「へーへー、そーなんだー、それじゃー、ルミィちゃんはカイルさんを付け狙うストーカーさんなのかなー? あはっ、まさかルミィちゃんがそんな犯罪染みた事しないよね? あっ、でもでも、カイルさんを付け狙うストーカーさんは沢山居るから大丈夫なのかなー?」
と、ルミィさんに揺さぶりを掛けた。
俺が知る限り、その女の子が言う様なストーカーとやらが自分についている心当たりはない。
が、それにも関わらずストーカーとやらが沢山居るってのは一体どういう事だろう?
「う、うぅ……。 カ、カイルさんに、ストーカーなんてしてないよぉ」
ルミィさんが、チョコレートケーキが乗った皿をフォークでツンツンしながら、今にも涙目になりそうな声で細々と言う。
「でも、すごいねー。偶然カイルさんを見付けてー、偶然カイルさんがどの女の子からもちょっかい掛けられていなくてカイルさん一人で居たんだよねー?」
俺の右隣りに座っている女の子が、ルミィさんに揺さぶりを掛けた。
揺さぶられたルミィさんは、言葉を詰まらせ視線をキョロキョロとさせる。
「へー、そんな偶然あるじゃん?」
「なんか怪しいよねー」
「カイルさんが1人で歩いてるとかありえないよー」
その仕草を見逃さなかったのか、残った3人の女の子達もルミィさんが何かを隠していると勘付いたのか、彼女達はルミィ対し畳み込むかの様に揺さぶりを掛けた。
「うぅ……じ、実は私とカイルさんは同じヴァイス・リッターに所属してるんだ」
ルミィさんは、半分ほど残っているチョコレートケーキに向け視線を落したまま細々と4人の女の子達に告げた。
多分ルミィさんはこの事を隠したかったのだけども、数の圧力に屈してしまった形で俺とルミィさんがヴァイス・リッターに所属している事を言う事になってしまったみたいだ。
「へへへーやっぱりそうだったんだー? なんかそんな感じがしたんだよねー」
ルミィさんから真実を吐き出させた、とルミィさんの右隣りに座る女の子が得意気に言う。
「いいじゃん、いいじゃん? あたし達セザール教会のシスター達もカイルさんに近付けるじゃん?」
「うぅーそうだけどぉ」
俺とルミィさんがヴァイス・リッターと言う同じ組織に属している事で自分達も俺との接点を持ちやすくなったのか、4人の女の子達は妙に嬉しそうにしている様に見える。




