12話
ルミィさんは、ぱぁっと顔を輝かせ前のめりの姿勢になりながら言った。
「嘘言っても仕方ないと思う」
「ほんとーですよね!? お姉ちゃんは女垂らしの男は彼女が居ても可愛い女の子の前では絶対に彼女が居ないって言うんですけど、カイルさんは嘘なんかつかないですよね!?」
瞳孔が少しだけ開いて妙に早口で言うルミィさんで、物凄く興奮している様に見える。
「うん、下らない嘘は付かない主義だからね」
「やったー、じゃー私カイルさんの彼女さんに立候補しちゃいますから☆ えへへ、今に見ていてくださいよ私を惚れさせちゃいますからね☆」
なんだかすっごく嬉しそうにはしゃいでいるルミィさんだけど、何でこんなにはしゃいでいるのかはイマイチ分からないが。
「ルミィさん? 俺なんかの何が良いの???」
俺は少々呆然としながらルミィさんに尋ねる。
「えへへ? 聞いちゃいますか?」
ルミィさんが、物凄く嬉しそうな笑顔を浮かべながら言う。
「あ、ああ。教えてくれ」
「ふふふ。秘密ですよ☆」
ルミィさんは、ウィンク一つ見せ答える。
「そ、そうか、それは残念だ」
俺が少し肩の力を抜くと、ルミィさんが手提げ袋の中に手を入れガサゴソと漁り2枚の紙を取り出す。
「えへへ、カイルさん実は、わんわん☆ぱらだいすの入場券が持ってるんだー」
わんわん☆ぱらだいす? ああ、確かセザールタウンを出て暫く進んだ先にあるコボルド達がその愛くるしい姿を冒険者達に披露する施設で、その愛くるしい姿が女の子達に人気で、絶好のデートスポットって聞いた事があるような無い様な?
「じゃあ、今度暇が出来た時はそこに行く?」
と、俺がルミィさんに対しわんわん☆ぱらだいすへ行く打診をしたところで、俺から見て奥の席に居る女の子達が何やらひそひそと話をしている事に気が付く。
なんだなんだ? その内の1人の女の子がルミィさんの方を見てにやにやしだしたぞ?
ルミィさんが何かしたのだろうか? 別にそんな事は無いと思うんだけど? なら彼女達はルミィさんの事を知っているのだろうか? 確かに、見た感じ4人ともルミィさんと年齢は同じ位に見える。4人とも普段着を着ているみたいで、冒険者では無さそう。
「あらあら? ルミィちゃん、久しぶりジャン」
俺がその4人組に対して考察をしていると、ルミィさんをにやにやしながら見ていた1人の女の子が座っている席から声を掛けた。
「ふぇ?」
突然、背後から自分の名前を呼ばれたルミィさんは、反射的に声がする方向へ振り返ると暫く固まってしまった。
「えー? 教会卒業しちゃっただけであたし達の事わすれちゃったの?」
「そ、そんな事無いよー、いきなりだからびっくりしちゃっただけだよー、あはは、あはははは」
ルミィさんは可愛く笑っている様に見えるが、何だか凍り付いた空気を纏っているようにも感じられる。
4人組女の子1のルミィさんへの問い掛けが終わると、続いて2人目の女の子がルミィさんに話かけた。
「ルミィちゃんさー、一緒に居る人ってカイルさんじゃないのー?」
「ふぇー!? そ、そうだよ?」
ルミィさんが少し迷いながら返事をした。
「ルミィちゃん良いなーみんなのアイドルカイルさんと一緒に居られるなんていいなー」
3人目の女の子が、俺の方へ振り向きながら言う。
は? アイドル? 俺が? なんで? どうして? リリアさんなら兎も角、そんな覚え、俺には無いんだけど!
「いいないいなー、私達とルミィちゃんって友達だよねー? 私もカイルさんとお話したいんだけどなー。ルミィちゃん優しいからねー、カイルさん独り占めなんてしないよねー」
4人目の女の子がルミィさんに対し精神的な揺さぶりをかけるかの様に言う。
「う、うん、そうだよ、みんな友達だよ?」
ルミィさんが、教会の女の子達へ向けていた視線を俺の方へ向け何かを訴えかける。
なんだか唇を噛み締めており、珍しくルミィさんが心の奥底で負の感情を抱いている様に思える。
「カイルさん、ごめんなさい、あの娘達と荒波立てちゃうと私が大変な事になっちゃうから向こうのテーブルに移動したいんですけど、ダメですか?」
ルミィさんが、彼女達に聞こえない様に小声で俺に言う。
特に異論のない俺は、
「いいよ、向こうに移動しよう」
ルミィさんの提案に賛同した。
「ありがとうございます、その、出来るだけあの娘達とは適当な会話で流してほしいなーなんて思っちゃったりしちゃうんですけど、そこまではダメですよね?」
少しばかり恥ずかしそうに言うルミィさん。
「いいよ」




