11話
確かに、攻撃能力の無いプリーストを同行させても、治療術を使う事が無ければプリーストを同行させた意味は無い様に感じるけど、でもそれは結果論に過ぎないと思うし、無理の無い依頼だって何が起こるか分からない訳でその時の為に保険としてプリーストを同行させる訳で、それなのに結果プリーストが治療術を使わなかったからとぞんざいに扱う人が居るのは随分酷い話に思える。
「そうだよなぁ。みんなが何度も傷を負う様な強い魔物と戦うのはプリースト自身も危ないし」
「あはは、そうですよね。でも、そんな強い魔物も誰かが討伐しなきゃダメなんですよね。難しい話って思います」
「確かに、ルミィさんが言う通り誰かが命を張って強い魔物を倒さなきゃダメなんだよね」
けど、それはプリーストだけでなくナイトやファイター、ウィザードも同じか。
目の前にいるプリースト、ルミィさんが可愛いせいか無性にプリーストがそんな危ない事をしなくても良い、と思ってしまう。
が、冷静に考えればプリーストと言っても男プリーストも居る訳だからその辺の所は関係無いのかもしれない。
「あ、カイルさん。あのお店です」
どうやら目的のカフェに到着した様で、ルミィさんが嬉しそうな笑顔を見せながら曽於のカフェを指でさした。
ルミィさんが指をさした先には、レンガ製の建物で壁は白く屋根は濃い目のピンク色で中々に可愛いと感じさせてくれた。
俺はルミィさんと一緒にそのお店の中に入る。
お店の中に入ると、1台辺り周囲に4脚の木製椅子が配置されている木製のテーブルが10台設置されている。それ等の色はこげ茶色であり白を基調とした店舗の色とと上手く噛み合っており非常に良い雰囲気を引き出している。
まだ開店してからあまり時間が経っていないからだろうか? 他のお客さんは左奥の方に4人組の女の子が居るだけだった。
俺とルミィさんは、俺とルミィさんは案内役の女性店員に連れられ、店舗内右奥のテーブルへ案内された。
ルミィさんは、無邪気な笑顔を見せながら店員にチョコレートケーキを注文する。
どうやら、このお店はチョコレートケーキがお勧めらしいのでルミィさんに勧められ俺もチョコレートケーキを注文した。
注文を受けた店員が去ったところで、ルミィさんが俺の目をじっと見据えて、
「ねーねー、カイルさん? カイルさんってー」
ルミィさんが胸元で指を組み、両肘をテーブルに着け僅かに頬を赤らめながらもにこやかな笑顔を見せている。
「カノジョサン居るんだよねー? カイルさんを射止められる女の子ってどんなに凄い人なんだろう? 私、ずっと気になっていたんだ」
言い終わった所でルミィさんは俺に向けていた視線をチラチラと周囲に逸らす。
「いや、いないけど?」
「あはは、そうだよね、カイルさんって女の子達から物凄く人気だもんね、ほら、その、私もセザール教会の中では男の人達から結構人気なんだけどー。私がカイルさんに手だしちゃったら彼女さんに悪いよねー? あ、でも、セザール教会のシスターの中には彼氏さんをとっかえひっかえしている娘も居たから大丈夫なのかな? でも、それだと私も変えられちゃうのかな?」
ルミィさんは俺の言葉を聞いていないのか、終始視線を泳がせながらも一人で勝手に話し出している。
「いや、ルミィさん? 俺に彼女は居ないんだけど?」
俺がルミィさんに対し、もう一度自分に彼女が居ない事を告げる。
ここで店員の人が、先程注文を受けたチョコレートケーキを持ってき、テーブルに置いた。
ルミィさんは目の前に置かれたチョコレートケーキを、フォークを使い1口分の大きさに切った上で口に運び、
「あはははは、チョコレートケーキ美味しいね」
先程までチョコレートケーキに対して強い興味を抱いていたハズのルミィさんが、どこか空気の抜けた風船の様な感情でチョコレートケーキの感想を述べる。
俺もルミィさんと同じ様にチョコレートケーキを切り、口に運ぶ。
「そうだね、美味しい」
気のせいか奥のテーブルに座っている4人の女の子達が此方の方を見ている様な気がした。
「わ、私何言ってるのかな? あはは、ごめんなさい」
口に入れたチョコレートケーキを飲み込んだところで、顔を真っ赤にし手をぶんぶんと振るルミィさん。
その仕草自体可愛く見えてくるのだけども、俺との話が噛み合っていないのは少し気になる所だが。
「およよ? さっきから言ってるけど俺に彼女は居ないけど?」
ルミィさんに対し、俺には彼女が居ない事の3度目のアピールをしたところで、
「えええ? ほんとですか? ほんとうですかー? 嘘じゃないですよねー???」




