10話
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カイルと別れたあたしは1人で先にヴァイスリッターの中に入ったんだ。
ヴァイス・リッターの門をくぐって少し歩いただけで、何人かのギルドメンバーと目が遭ったの。
多分あたしのファンの人達かな? 男の人が多いけど、女の人もいるみたい。
「リリア様ーーーーー」
「おーホンモノのリリア様だ!」
「こっち、こっち見てくれー」
「きゃー素敵ーーー」
あたしと目が遭ったファンの人達は嬉しそうに声を上げてくれる。
多分大した事じゃないけれど、これだけでもすごく気持ちが良い。
「みんなー☆ おはよー☆」
あたしは、ファンの人達に向けてとびっきりの笑顔を見せ、手を大きく振って小さなファンサービスをしてあげた。
「「「「リリア様! おはようございまーす!!!!」」」」
ファンの人達があたしに向かって深々と一礼をしながら挨拶を返してくれる。
確かにあたしは駆け出しアイドルなんだけど、ここでは新米のレンジャーなんだし、何もそこまで丁重にならなくても良いのに。
なんて思うんだけど。
「今日も張り切って頑張ろうねー☆」
「「「「はい! リリア様!」」」」
なんでこの人達はあたしの事を様付けるんだろう?
気にしても仕方ないのかな?
なんて思っていると、エリクさんが誰かに挨拶をしているみたい。
カイルかしら?
何と無く気になったあたしは、身近にある建物の壁を蹴り上げ屋根の上に登って見せた。
その様子を見たファンの人達が歓喜の声を上げてくれる。
だからあたしは屋根の上から彼等を見下ろし笑顔を見せ、もう一度手を振ってあげた。
別にレンジャーのあたしからすれば大した事じゃ無いけれど。
でも、たったそれだけの事だけれども彼等は喜んでくれるみたい。
これがアイドルなんだって改めて実感しながら心が満たされていくんだけど。
(つっ、あのプリーストが居やがんの!?)
ピンク色のプリースト。
聖女の家系に産まれた正真正銘のプリースト、ルミィ。
あんな相手が恋のライバルだなんて、どう考えたってあたしに勝ち目が無い。
どんな男特に冒険者達なら喉から手が出る程欲しいと思える魅力的な女の子。
可愛い上に胸も大きいから猶更腹が立つ。
自分の胸を見て思わずため息が零れてしまうが、同時に自分の気分が悪意に満ちてしまう。
(チッ、天は何物与えれば気が済むのよ、あたしなんてそんな血筋何て何一つ無いのにさっ。それだけじゃなくって胸まで与えるなんてッなによなによなによ!!!!)
そんな事考えたって何も解決しない事はあたし自信分かっている。
せめてもの救いは、カイルが頭可笑しい位女性に興味関心が無い事。
胸が大きかろうが何だろうが一切合切興味が無い、男性として機能不全を起こしているんじゃないかと心配になる位に興味が無い。
「リリア様ーーー!!!!」
ファンの声援。
さっきまでいた人達とは別の人だ。
いけない、あたしとした事が。
確かルミィは料理が壊滅的に下手だって噂がある。
あたしは料理が得意、だからそこに付け入る隙はあるし、あたしには沢山のファンがいるんだ。
沢山のファンが欲しがるあたしを手にすれば、カイルのステイタスだって凄く上がる。
だから、あたしは凄いアイドルになって見せるんだ。
いいえ、アイツを振り向かせてやりたいからこの道も目指す事にしたんだ。
「はーい」
あたしは平静さを取り戻し、そのファンの人に対し笑顔を見せ手を振る。
「頑張ってくださーい」
「ありがとー」
ファンの人も笑顔を返してくれた。
満足してくれたのかな? 何処かの建物に向かっていったみたい。
(あの小娘。カイルにべったりくっついちゃって!)
平静を取り戻したと思ったら、ルミィとか言う小娘はカイルにべったりとくっついている。
あたしだってそうしたいのに!!! 凄く腹立つ。
アリアさん?
ルミィを止めてくれている……?
いえ、違う、4人でスイーツ店に行くの!?
なんでよ!
気が付けばあたしは唇を噛み締めていた。
レンジャーであるあたしは、少し遠くで展開されてる会話内容を把握出来る技術を持っているんだ。
だから遠くで話しているカイル達の会話内容を傍受する事が出来た。
でも、余計な事聞かない方が良かったかもしれない。
……カイルが女性に一切興味無いって分かっているんだけどさ。




