正体
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◇◇◇正体とは◇◇◇
ずるずる……
ずるずる……
遠藤の腹から血糊を搔きわけるように、男の腕の太さぐらいの、灰色の何かが這い出す。
ひゅっと息を呑む音。
慌てて治癒の為の手をかざす葛西。
這い出したモノは体を半分立ち上げ、大きく口腔を広げ、あたりを威嚇する。
キシャアア!!
速攻で、沢野が踏みつぶした。緑色の体液が広がった。
「な、なんだ? 今の」
斎木が俺に訊く。
おそらく……
「淡水のサカナを生焼けで食べたってことは、サカナに付いていた寄生虫かな」
「あの、バカでかい芋虫が、か?」
「ああ、おそらく、遠藤の体内で変異して、あの大きさになったんだろう」
放射能。
その単語は、遠藤以外の心に沈んだ。
俺は血だまりを歩きながら、猿型魔物の残骸に目を凝らす。
あるモノを探していた。
「な、なんで、この地に放射能が……」
沢野は呻くように言う。
「最初、俺たちは聞かされた。この地に厄災が『落ちた』って」
「落ちたって……司はなんだと思う?」
「隕石だ」
「!」
探していたモノがあった。
俺の仮説を裏付ける、一つの物証。
俺は残骸からソレを掴む。
「見ろ」
沢野と斎木は、まだ血を滴らせている、それを見つめる。
「さっきの猿の手か?」
そう、俺が摘まみ上げたのは、猿の姿をしていた魔物の手。
「この指先、親指と人差し指で挟んでいるのは、沢野、お前の服の、切れ端じゃないか?」
沢野は思わず、自分の首を触る。
襟元が少し、綻んでいる。
「指先だけで、布を破っていたのか。あのまま掴まれていたら、俺、危なかったな」
「猿っつうか、ゴリラか。剣も魔術も効かない、ムダに強かった奴らだった……」
俺は、言わなければならなかった。
「アイツらは、猿じゃ、ない!」
「えっ、だってどう見ても……」
俺は覚悟を決めた。
コイツラを倒す時に、既に俺は決意していたから。
「この指の使い方、親指を曲げ、人差し指とで物を掴む動作。
これは、猿にはできない。
これが出来るのは、人間だけだ!」
「「「!!!」」」
その場の空気が凍り付いた。
「ま、まさか!」
「魔物はこの地の生き物が、変異したものだと思う。中でもバカ強い魔物、さっきの猿型の魔物は、元は人間だ」
空から降って来た隕石。
この地で激突し、おそらくは、大量の放射線を撒き散らした。
直撃を避けた人と動物は、放射線により、遺伝子変性を起こした。
それゆえ、姿形も性質も、力でさえ、元の生物の能力を、凌駕してしまったのだ。
「王が、この地の魔物や魔獣を倒せないと言ったのは、元々同じ国民であった者たちを、倒したくなかった。つまり、同族を、殺したくなかったからだ」
乾いた風が足元を抜けた。
元はこの地の人間であると薄々分かっていても、俺は躊躇わず、ヤツラを倒した。
その覚悟を、沢野と斎木は分かったのだろう。
口を一文字に結び、二人は無言になる。
その後ろから、葛西が弾んだ声を出す。
「止まった! 血が、遠藤の血が止まった!」
俺たちはいったん、洞窟に戻った。
斎木は浄化の魔術を使い、猿型の魔物の死骸やら何やらを片付けた。
陽が落ちた洞窟内、メンバーは遠藤を除き、車座になる。
「おい司」
斎木が口を開く。
「なんで、お前、この世界の謎みたいなこと、そこまで解けたんだ?」
「えっ? いや、ここまで来る間に、いろいろ考えたから」
「ふうん、頭良いんだ」
沢野が乾パンもどきを飲み込んで、俺に言う。
「お前、俺たちともう一回、一緒に闘ってくれないか、あ、いや。頼む。司くん、一緒に、闘ってください!」
でかい沢野が、体を小さくして頭を下げた。
「俺からも頼む! さっきみたいな魔物、俺たちだけじゃ絶対倒せない!」
斎木も同じく低頭する。
「あ、あたしは、どうでもいいわ」
葛西は横を向く。
その視線の先には、真っ白な顔色で横たわる遠藤がいた。
「でも、これ以上、遠藤は闘えないわ……」
『どうするの、司』
いきなり絵里の声が聞こえた。
俺にだけ、だ。
「一緒には、闘えない」
俺は静かに言う。
あからさまに気落ちする、三人。
「追放して、悪かったよ。許してくれとは、言えないけどな」
ぶつぶつと沢野が言う。
「追放は、別に気にしてないよ」
俺はつとめて優しく告げた。
「正確に言えば、先陣を切るのは俺だ。だから……
みんなは俺の後ろから、支援をして欲しい!」
◇◇◇王宮◇◇◇
「もう、召喚した方々は、魔獣の地へと着く頃だろうか……」
「そうですね」
王付の侍従が答える。
「もしも、この世界の真の謎、召喚の真の目的と方法を知っても、彼らは闘ってくれるだろうか……また、ここへ戻って来てくれるだろうか……」
王の呟きに、侍従は何も答えなかった。
次回、ボス戦か!
謎はまだ、あるのだろうか!