世界の謎
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◇◇◇世界の謎◇◇◇
月の綺麗な夜だった。
いつもの様に俺は横になり、体を休める。
標高は、徐々に高くなってきているようだが、夜でも寒くはない。
俺は布を一枚敷いただけで、一晩眠れる。
その代わり、景色は寒々しい。まるで冬景色のような、枯れ木と枯れ草が続いている。
ツンツン
ツンツン
触手を感じて顔を上げると、クリーム色の発光に包まれた絵里が、人間の姿で笑っていた。
そうか。
今夜は満月だ。
絵里も俺の隣で横になる。
『何悩んでるの?』
発行体とはいえ、目を凝らせば、絵里の素のままの姿を見てしまいそうだ。
俺は顔を横に向けた。
「絵里、この世界に来た時に、王が言ったこと覚えてる?」
『この国、ユーテラス国だっけ、は、空から災いが落ちてくると、野山の生き物が、魔物となって襲ってくる……だっけ?』
「そうそう。それで、とくに、直撃を受けたものは魔獣となって、人々の命を奪うようになるっと。だけど、この世界の人は、戦いに慣れていないし、武器や魔術を使っても、魔獣を倒せない、って言った」
『それが、司の悩み?』
「うん……悩みっていうか、疑問だな。今まで何体も、魔物らしきものを倒してきたけど、俺と絵里とで倒せるくらいだから、この国の人が倒せない、なんてことあるのかなって。
だって、俺たち五人と絵里まで含めて、召喚できるような魔力がある世界でさ、ちょっと凶悪な猛獣だからって、まったく倒すことができない、なんておかしくないか?」
『たしかにね』
「だから、俺は考えた。
ひょっとしたら、『魔獣を倒せない』じゃなく、『魔獣を自分たちで、倒したくない』のかなって」
『どうして?』
絵里が体を貼り付けてくる。
なんだか。
くすぐったい。
「自分たちで倒したら、呪いを受けるから、とか? いや、うーん、まだ仮説」
絵里は俺の顔を覗き込む。
『ねえ、私のイソギンちゃんの体も、呪い?』
「呪いとは、多分違うけど」
絵里の瞳に、ゆらゆらと満月が映る。
『もし、呪いだったら……解けるかも……キスで』
俺の心臓は、石が投げ込まれたように波立つ。
「た、試して、みる?」
自分で言いながら、俺は焦る。
なんでこんなセリフ、言ってしまったんだ、俺!
絵里はふわっと笑う。
『目を閉じて、司』
…………
チュッ
絵里の唇は柔らかく、甘い香りがして、ネバネバしていて……
えっ?
ネバネバ!?
『今のは触手だよ。えへへ』
イソギンチャク姿の絵里が、俺の襟元にいた。
俺は、思いきり残念で、ほんの少しほっとした。
ハレーションを起こしながら、月は中空に座す。
呪い、か。
あるいは、それに近いかもしれない。
満ちていた月が欠け始める。
新月の頃。
荒野というべき、見渡す限り何もない場所に辿り着く。
絵里の発光は益々鮮やかになる。
魔物の威力も増している。
多分、魔物の王だという、魔獣の本拠地に近い。
「ギュアアアアア!!」
「グオオオオオ!」
近くで魔物の咆哮が聞こえた。
一体や二体ではない数の、魔物の叫び声だ。
俺は駆け出した。
◇◇◇変貌◇◇◇
「おい沢野、なんとかしろ! 斎木はバックから火を放て! 俺は、切り込む!」
そう言って、遠藤は大型の魔物一体に切りかかる。
俺は両手を使って、炎の球体を次々に、数体の魔物にぶつける。
沢野は火球が当たって焼けた敵の体に、思いきり拳を叩きこむ。
いつもの必勝パターンのはずだ。
だが。
倒せない!
俺たちを取り囲む魔物は、体高が二メートル以上あって、ゴリラのような顔と体をしている。
胸板は分厚く、全身剛毛で覆われている。
遠藤が勢いよく、斜めに腹を切っても、奴らの体表に薄く血が滲むだけだ。
そのうちの一体が、遠藤の剣を奪い、折り曲げようとする。
軽い金属音を残し、遠藤の剣は折れた。
また、他の奴は、俺が放った火球を呑み込んだと思ったら、威力を増して吐き出した。
空気が焼ける。
コイツらは。
むちゃくちゃ強い!
「いったん下がって、身体強化するから」
葛西の指示で遠藤、沢野、そして俺は、洞窟の出口近くに下がる。
連中は、じりじり迫ってくる。
「シールド!」
たまらず俺は、風のシールドを張る。
ふと見れば、沢野の拳は血に塗れ、指が手の甲側に曲がっている。
「沢野、お前!」
「まいったな、打ち込んだ時に拳を潰したよ……」
沢野の額には、大粒の汗が浮かんでは落ちる。
剣を折られた遠藤は、膝をついていた。
息も荒い。
「遠藤、大丈夫か?」
「腹が……腹が痛くて、力が出ねえ……」
確かに遠藤の顔色は真っ青だ。
「葛西、治癒できるか?」
葛西は手をかざしつつ、俺に向かって首を振った。
「なんか、やってもやっても、遠藤の体の芯に入っていかないの、治癒の光が!」
魔物たちは、力技で、俺の張ったシールドを破ろうとしている。
普通の魔物なら、俺のシールドに触れただけで、体中刻まれるというのに!
バリバリバリバリ!!
シールドはあとかたもなく破られた。
先頭にいた魔物の腕が、沢野の首を掴んで圧をかける。
その時だった。
ドサッ!
ドサッ!
俺の目の前に、魔物の腕が飛んできた。
いや、腕だけではない。
ゴリラのような顔貌が、胴体から落ちて転がってきたのだ!
何!
どうした! いったい!
「洞窟に戻れ!」
声がした。
覚えのある声だった。
まさか!
「早く!」
俺たちが逃げるように洞窟内に入った瞬間だった。
洞窟内部をも揺らすような、地響きが起こった。
重低音のそれは、何回も続いた。
風よりも強力な音だった。
たとえて言うならば、巨大ハリケーンが通り過ぎるような。
俺たちが魔物討伐を、アイツに委ね、息をひそめていた時。
遠藤の体は、変貌を遂げようとしていた。
ようやく合流した司とその他。
次回、世界の謎が解けるだろうか。
変貌したという遠藤はどうなるのか?