運命の歯車が動き出す。
この小説の舞台は帝国。 主人公は少女。何と、3つもの名前を持っている。
たくさんの不幸に見舞われるが、己の能力を使って、
必死に生きていく物語。 少女の成長を最後までぜひ、
見守ってください!!
「さあ、始めましょう。社交界デビューを。」 そう言うとリーベは、新たな色の仮面をつけた。 弱々しいリーベはもういない。そこにいるのは、帝国で唯一の公女 スミェールチ・リーベだった。
さあ、始めよう。スミェールチ・リーベの仮面劇を。
ー遡ること1年前ー
孤児院の前に捨てられていた私は、ずっと孤児院で育った。
私がいた孤児院はマザーがかつて大神殿に努めていた
司祭だったこともあり、援助金が少し多めに配られていた。
マザーは私達に文字や数字など、基本的な教養を教えてくれた。
私達は普段、花や木彫りの飾り、薬草を売って生活をしていた。あの日もいつもどおり花を売っていた。
あの事故が起こるまでは。
私が花を売っているのに気がついた孤児院の子供が
私に駆け寄ろうと道に飛び出して馬車に引かれかけた。私が
かばったので怪我はなかったものの、私は頭に怪我を負った。
馬車の持ち主は、あの悪名高き〈スミェールチ公爵家〉だった。
どんな怖い顔をしてる人だろうか。 死ぬ覚悟もしようと決めたとき馬車から出てきたのはキラキラした服を着た優しい顔の男性だった。
「大丈夫かい? お嬢さんたち。」
こんなに優しそうな人が本当にあのスミェールチ公爵家の人間なのかと、とても驚いた。
少し呆然としていたが、我に返って急いで孤児院の子供を帰した。 優しそうな顔の裏にある敵意。 急いで帰さなければと、本能的に思った。しかし、その敵意は私達に向けられているものではなかった。
「あの子を帰したのはいい判断だね。さあ、怪我の手当をしに行
こうか。」
言われるがまま、私は公爵邸についた。
公爵邸は他のどの屋敷よりも大きかった。玄関への道には左右に使用人がズラリと並んでいた。中に入ると目に入ったのは、 肖像画だった。 真ん中に公爵様。その横には、絶世の美女と
歌われている公爵夫人。 その下に、公爵様と公爵夫人の子息
「さあ、来なさい。」
連れて行かれたのは、医務室らしきところだった。 そのまま、
手当をしてもらい、気づいたら公爵様が前に座っていた。
「すまなかった。我々の不注意で君たちを危険にさらしてしまった。何かお詫びをしたいのだが… 何せ人に詫びたがないから詫び方がわからない。だから、何か望むことを何でもしようと思う。何でも1つしてほしいことを言ってくれ。金・権力・地位・豪華な宝石やドレス。私にできないことはない。」……
(どうしよう。お金があれば、孤児院に恩返しができる。
だけど、いずれなくなってしまう。宝石やドレスは論外。地位
や権力はあって損はない。 せっかくなら、全部欲しいな。
「決めました。私をあなたの娘にして下さい。 今公爵様が言っ
たものすべてを貰えますから。」
エステレラはニコッと笑った。
「ハハハッ。面白い子だ。 だが、公爵家の一員になるには、
覚悟だけじゃためだ。己の能力を証明しなさい。」
エステレラは自信満々に 「勿論。」 と言った。
「私は土属性ですから、外に行きましょう。」
外に出たエステレラは土属性の上級魔法【大地の怒り】を使った。
「素晴らしい。 だが、家族にするかは、私一人だけでは
決められないんだ。妻を呼ぶから待っていてくれ。」
そうしてやって来たのは、絶世の美女公爵夫人だった。シンプルなドレスを着ているのに、公爵夫人の周りはキラキラしていた。
「きれい。」 エステレラはポツンと呟いた。
「あら、ありがとう。」ニコッと笑った公爵夫人の顔は
更に眩しかった。 「それで、お嬢さんは何を見せてくれるの?」 「夫人にとてもお似合いのものですよ。」
するとエステレラは土属性の上級魔法【花園】を使った。
「すごいわ! とてもきれいね。」 (公爵夫人も満足そう。)
「公爵夫人の美貌には敵いませんが、花のように美しい公爵夫人を
思い浮かべて作りました。」
これでダメだったら、お金をもらおう。そう決めたとき、
「ぜひ、うちの子になってちょうだい。」と公爵夫人が言って くれた。 「これで、君も公爵家の一員になれるよ。」
公爵様も認めてくれた。
エステレラは、これからの生活に期待を膨らませた。
〜「身の程をわきまえなさい。」豆知識!〜
・この国の身分は低い方から順に、平民→商人→騎士→貴族
(男爵→子爵→伯爵→侯爵→公爵)となっている!
・この国の公爵家は4つ。 侯爵家は6つ。
辺境伯以外は、伯爵以下の者はだいたい公爵家や侯爵家
の指示のもと動く!
・この国は女性も爵位を継げる。
・魔法の属性は、火・水・土・風・光・闇の6つ。
基本は1人1属性。魔力が多ければ、属性も多くなる。
(魔法属性にとらわれす皆が使えるのは、生活魔法のみ。
侍従は、生活魔法を磨く者が多い。)
・魔法は初級・中級・上級に分かれる。上級に近づくほど、
魔力の消費は激しい。
・この国は、皇室・神殿・魔法の集いの3つの権力に別れてい
る。
・魔法を使って主な仕事をする者は、魔法の集いに入らないと
いけない。
・魔法の集いの位は魔力量で決まる。低い方から順に
魔法使い→魔道士→魔術師→魔女見習い→魔女
(魔女は3人)