ベアトリックスの幻惑
「私は、王立育成機関 セラフ 調査隊所属!
アールグレイ・ロジィラっす。気軽にグレイって呼んでぐれい!」
「え?あれ?」
「ミモザ・レイダー…君は持病があるようっすね。」
「え?そうなの?」
「そうか…いきなりだよね…悪い悪い…」
「たとえば、これは私の概念に基づくエフェクトを用いた幻術の一つであり、あなたも学べばあなたの概念に基づいてエフェクトを発揮することができる。」
「あの…理解できません…」
「あなたはとても眠くなりやすかったり…。ナルコレプシーという体質を患っているでしょう?それに、あなたは概念を意図せず捻じ曲げてしまう。だから少し伝えるのは難しいかも…」
「??」
「まだ、わかんねぇよな。それだけこの場所では世界が変わる様な学びをする場所なんだぜ?」
「学生寮にようこそ、ミモザ。」
「うぅ…よく分からない…頭が…」
「ちょっといいか?」
「え…嫌っ!離して!」
「君は見ている世界が膨大過ぎるんだろうね。それに耐えられなくなってきている。
まず、落ち着いてほしい…。このラムネを飲んで。
まず、寝ること。それが大事だ。」
「んぇ…。きもぢわるぃ…。」
聞こえてしまう…全てが明晰に…膨大な情報量に脳が追い付かない…。眠い…。でも…。なんだか心地いい…。何かが入ってくる…。
私は一体…。
黒い影が私に語り掛ける。
「ミモザ…君は見えているか?その精神を統一させて一度俯瞰してほしい。」
「え…」
「君は…バアル王と何を会話した?」
気持ち悪い…。
気持ち悪い…。
気持ち悪い…。
「そんなことより記憶を追想しろ。
分かる筈なのに…これは通過儀礼なんだよ…。
君が学ぶためにこれは必要過程だ。」
「そんなことより?信じられない…。私は成霊になったのに…。
気持ち悪い…。どうしてそんなことをするの…?
お父さんは?お母さんは?
会わせてよ!」
「みんなが君を愛してた?君がレイダー家の遺伝子を持っているからだ。甘やかされて育てられて来たんだろ。
お前の根源は超越する概念だ…。学べば分かるはず。」
「私が…私がレイダー家だから?ねぇ!許せない!私、そんなことで…
─────
パンッ
「あ…あれ?私…。」
私は怯えながら目を開くと目の前にはアールグレイが居た。
「幻術だよ…。」
「え…?」
「君には幻術を見せた。」
「?」
「ミモザは記憶を欠落している。意識というエフェクトを代償にしていた。
現在、彼女は被験者となっている。」
「じゃあ…バアル王は…?」
「すべて知っている。」
「一体何を始める気なんだ?」
「さぁな?でも…きっととんでもないことだ…。」
「だな…。」
「ミモザ…君はレイダー家の子か…。」
「バアル王に任せられたんだ!景気付けにクェドナを食おうぜ?」
「あ…ああ…。」
「私もクェドナ食べれるの?」
「ちょっと待て!」
「なんだ?」
「いや…風の流れが少し、不思議な感じしないか?」
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邪悪な風が通る。
「アスタロト…ほら…見えるかい?」
「私は『目』を媒介として視覚を有することはできません。よって私は見る、ではなく、悟っているのです。」
「おいおい、それじゃあ俺が格好付かない返答じゃないか…。」
「格好なんて、どうでもいいじゃないですか…。」