冬のいつ春
湯の匂いがしていた。
ちょうど、これぐらいの時間だった。
近所の工場で、お風呂が湧いていた。
工員さんらが、一風呂浴びてから、
帰っていたのだろう。
バレンタインデーのことなんて、
何も知らなかった。
チョコレートは、たまに来る、
叔母さんに買ってもらうものだった。
トタン板の屋根の軒先が、
明るい窓から見えていた。
テレビには、サリーちゃんの
再放送が映っていた。
それを妹が見ていた。
冬の終わりは、いつになるだろう。
ずいぶん、日が長くなっている。
ブラインドの向こうが明るかった。
午後五時半が、まだ明るかった。
父は自転車で、六時に帰っていた。
母も自転車で、六時前に帰っていた。
家のお風呂を、薪で沸かしていた。
祖母ちゃんと沸かしていた。
いつの間にか、春になってゆく。
今年も、春になってゆく。
世界は、健康になれるだろうか。
みんな、幸せになれるだろうか。
さてと、今日も生かされているから、
お家に帰ることにしよう。