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76.白い牙との別れ

「あんなに気まずい空気を吹っ飛ばすなんてラナの鞍は凄いな。」


「え、鞍のせいなの?褒められたら嬉しいけど。」


落ち着いた白い牙(ヤポンスキー)の3人が話しかけてくる。


「ふう、先程はすまなかった。悪気はなかったんだが…」

「すまなかっタ。」

「申し訳ありませんでした。お話の途中で失礼かとは思いますが

 そろそろお暇させていただきます。同胞達も待っているでしょうから。」


「ああ、時間をとらせてしまってすまなかったな。またどこかで会おう。」

「次会う時までにAランクに上がれるように頑張るよ。」

「それは大変そうー。だけど頑張るよー。」

「私の鞍のせいで足止めしちゃってすみませんでした。お元気で。」


「ああ、ではまたな!」

「またナ。」

「またお会いしましょう。」


こうして白い牙(ヤポンスキー)の3人は去っていった。


「さて、俺達はゾウ狩りに行くとするか。」

「そうだねー。Aランクは遠いけど頑張らないとー。」


ゴンザナシ達はダチョウを出して騎乗するとゾウを求めて去っていった。


「じゃあ私はヌー狩りに戻るわね。」


ラナもダチョウに乗って去っていった。残されたのは俺とヨルムだ。


「急に人数が減ったな。」


「ソウダナ。人ガ多イト我ノ出番ガ減ルノガ悲シイ。」


「遠慮しないで喋ればいいだろう。」


「何カ見エナイ力ガ働クヨウデナ…」


それは俺も武具屋で体験したな…


「さて、今日は何をして暇を潰そうかな。」


「特ニヤルコトガナイナラマタ全身ニ巻キツコウカ?

 アノ時ハ気持チヨサソウニ寝テイタゾ。」


確かに窮屈な感じはしないし不思議と心地いいんだよな。


「少し気疲れもしたし、そうするか。」


「言ッテミルモノダナ。デハ遠慮ナク。」


ヨルムはそう言うと首に巻きついたまま体を伸ばし、

瞬く間に俺の全身を覆い尽くした。


『思ったんだが普段乗せてもらってる時よりもとぐろに乗った時よりも

 この状態の方が楽だな。可能ならこのまま移動してもらおうかな?』


「本当カ!?モチロンデキルゾ!」


『何しろ体に全く力を入れなくていいからな。見た目はともかく楽は楽だ。』


「ソレハイイコトヲ聞イタ…今後ハ是非ソウシヨウ。」


『ああ、でも俺の視界が塞がるから行ったことがあるところ限定だけどな。」


「…元々我ニ乗ルノハソウイウ場所ダケデハナイカ。」


『…それもそうだな。ヨルムさえ良ければ今後はこれで頼むよ。

 大人数でヨルムに乗る時はいつも通りになると思うが。』


「願ッテモナイコトダ。我ハ嬉シイゾ。」


『それじゃあ俺は少し寝ることにするよ。おやすみ。』


「我モシバシ寝ルカ。オヤスミ。」



そのまま時が過ぎ夕暮れ時に入り始めた頃、途中で合流したのか

ラナ、ゴンザナシ、マトンの3人が揃って戻ってきた。


「ただいまー…ってまたやってる…いいなぁ。」

「ただいま、って凄い状態だな。息苦しくないのか?」

「ただいまー。ポノとヨルムは仲良しだねー。」


「戻ッタカ、オカエリ。」

ヨルムはそう言うと体を縮め、首だけに巻きついているいつもの状態に戻った。


「もうこんな時間か、おかえり。息苦しくはないぞ。」

そもそも呼吸をする必要がないからな…



俺のダチョウにラナを乗せ、帰路に着いた。

5人で町に戻る途中、ラナが切り出した。


「そういえばゴンザナシさん、マトンさん、私の鞍ってそんなに変ですか?」


「あ、いや…えーっとね。」


「もう正直に話そうよー。」


「そうだな…ラナちゃんが使っている鞍が【ノースフィスト】っていう作品に

 出てくる悪役が座ってる鞍にそっくりなんだよ。

 それでインパクトのある登場シーンのポーズが

 肘置きを使って頬杖をついて足を組んでいる。っていう感じだからついね…」


「その作品は知りませんけどそんなに笑うほどなんですか?」


「いや、まさか実際に似たような状況になるとは思ってなかったからさ…」

「その鞍を作った人は絶対【ノースフィスト】を意識してたと思うなー。」


「そうですか…お気に入りだったのに…」


「ごめんよ、ラナちゃん。」

「ごめんねー。元気出してー。」


「ラナが気に入ってるならそれでいいじゃないか。」


「ソウダゾ。本当ニ好キナラ他人ノ目ナド気ニナラナイモノダ。」


「そうね…私はこれからもこの鞍を使い続けるわ!」


どうにか丸く収まったようだ。

それにしてもこの世界にも【ノースフィスト】が存在していたとは。

アカネが以前言っていた他の神とやらが広めてるんじゃないだろうな…



狼人族達が狩りをしていた場所に近づいてもその姿は見当たらなかった。

もう帰ったのかもしれないな…少し寂しさを感じながらも移動を続ける。



町の入り口が近づいてきた。そこには門番とは別に3つの人影が見える。

近づくにつれ人影が段々鮮明になってきた。白い牙(ヤポンスキー)が待っていてくれたようだ。

先程別れを告げたのに…なんて野暮なことは言うまい。


俺は走って来たのでそのまま、ラナとゴンザナシとマトンは

ダチョウを降りて3人に近づくとモノノフから順に話し始めた。


「今回は色々な経験をさせてもらって感謝する。

 アシロ王国に来ることがあったら是非連絡をくれ。」

「楽しかっタ。またいつか会えるといいナ。」

「この度はお世話になりました。この出会いに感謝します。」


「こっちも楽しめたよ。今度来た時は一緒に酒でも飲もうじゃないか。」

「私はあまり関わりがなかったけど…鞍が役に立ったようでよかったです。」

「次はあんた達に手合わせが頼めるよう、強くなるつもりだ。」

「勉強になったよー。また会おうねー。」

「モット強クナッタラ我ガ相手ヲシテヤッテモイイゾ。」


少しの間、会話は続いたが時間が来たようだ。


「名残惜しいがそろそろ時間だ。コノフ、チノワ。」


モノノフ、キンゾコノフ、トモダチノワの3人が横一列に並ぶ。


白い牙(ヤポンスキー)一同、貴方達を生涯忘れないことを誓う。」


3人は片手を胸に当て、目を閉じてこちらに一礼した。

初見だがその優雅な…洗練された所作を見て思わず言葉を失ってしまう。


「…ではまたな。」


「…ああ、またな。」


白い牙(ヤポンスキー)の3人はエルクに乗って町の東側に走っていった。

おそらくあちら側に転送装置があるんだろうな。


「Aランクの冒険者ともなるとあんな所作も身に付いているんだな。」


「格好よかったわ…」


「俺達も頑張らないとな。今は追いつける気がしないがいつか必ず…」


「そうねー。地道に頑張ろー。」


「戦闘ヲ見ルヨリ心ガ動イタナ。」


何にせよ無事に地竜の討伐は終わったし肩の荷は下りた。

気まずいまま別れることにならなかったのは本当によかった。

自分の失敗に対しては反省、ラナのセンスには感謝しないとな。

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