73.約束の日
翌朝、昨日の狩りの長さが響いたのかラナはなかなか目を覚まさない。
このままだと約束の時間に遅れてしまうかもしれないので移動して
上下分断を解除した。部屋を出る前に一応声をかけておく。
「このままだと遅れるかもしれないから先に出るぞ。ゆっくり寝てくれ。」
「いってらっしゃい…」
起きてるのか寝ているのかわからない状態で返事が返ってきた。
宿を出て酒場に向かう。
『今更だがおはようヨルム。いよいよだな。』
『オハヨウ。ポノノ出番ガナイトイイナ。』
『半分はそのために昨日ミスリルの実験をしたんだし大丈夫だろう。』
『ナルホド。ソウイウ意図モアッタノカ。』
『反面、ドロップはいい物が出ないかもしれないが
討伐に失敗するよりはいいかと思ってな。』
『首長地竜ノ方ハ残念ダッタナ。』
『その内また狩りにいくさ。手間なのは移動くらいだし。』
食事を済ませて町の外に出ると既に狼人族の3人とゴンザナシ達が談笑していた。
時間に余裕をもたせたつもりだったが最後になってしまったようだ。
「すまない、遅くなってしまったか。」
「いや、約束の時間までは余裕がある。
俺達、白い牙のために来てくれて感謝する。今日はよろしく頼む。」
これは突っ込んじゃいけないやつだよな…
「モノノフの言う通りダ。気が昂ぶって早く着いてしまっタ。」
「そうですよ、ポノさんは悪くありません。今日はよろしくお願いしますね。」
「おう、ポノ。約束通り我慢してるぜ。」
「おはよー。ポノー。」
「約束の時間まではもう少しあるがどうする?出発するか?」
「そうするか。私達はエルクで移動するがそっちはどうする?」
「俺は走ってペースを合わせるよ。」
「ダチョウだとエルクより遅くなってしまうから俺とマトンも走ってついていく。
俺達は戦うわけじゃないし魔子が減っても構わないからな。」
「頑張って走るよー。」
「では出発しよう。」
白い牙の3人のエルクを俺とゴンザナシ達が走って追いかける。
途中で狼人族が狩りをしているのが見えてきた。
彼らはこちらを見つけると区切りのいいところで手をとめて歓声を上げ始めた。
3人を鼓舞しているのだろう。
「みんなで応援しているのか。3人がどれほど慕われているのかがわかるな。」
「そんなことはないさ。だがありがたいことだ。
彼らの気持ちにこちらも応えないとな。」
「燃えてきたゾ。」
「コノフ。さすがに早すぎますよ。」
狼人族達の歓声は姿が見えなくなっても聞こえてきていた。
その辺のキャバ嬢とは違うということだな…
ナワツボ平原に到着したが目的地は更に先だ。止まることなく移動を続ける。
3人のエルクもゴンザナシ達のペースも落ちない。さすがだな。
その後もしばらく移動が続き、ある地点に到達してからは進路を左に取った。
そういえば聞いてなかったが狙うのは三角地竜か。
そろそろ目的地に着くかという頃、ヨルムが話しかけてきた。
『シマッタ…我モスッカリ忘レテシマッテイタ。
ポノ、少シマズイコトニナルカモシレナイ。』
『どうした?何か問題があるのか?』
『見レバワカル。ドウ切リ抜ケルカハポノ次第ダナ。』
と、先頭を走っていたモノノフが声をあげた。
「何だ…?あれは。」
やってしまった…見るとミスリルの剣を回収するために
空中に浮かせていた直方体の土の塊がそのまま残っていた。
その土があった部分には大きな穴が空いていることだろう。
「浮遊島の一部が落ちてきたのカ?」
「だったら地面に落ちてそうですけど…」
浮遊島なんてあるのか。棚ボタだがいい情報をもらった…じゃない。
「落ち着いてくれ。あれは昨日ここでやった実験の余波というか…」
「ポノの仕業かよ…人騒がせだな。」
「どうやったらああなるのか気になるなー。」
一応は三角地竜の縄張りに到着したが白い牙の3人とゴンザナシ達は
こちらを見ている。何か説明しないと納得してくれなさそうな様子だ。
こうなったら開き直るとしよう。悪いことなど何もしていないのだから!
「何か聞きたいことがあるのか?一人一回までなら答える。」
「あるはずなんだが何から聞いていいのかわからなくてな。」
モノノフは難しい顔をしている。
「見た目から戦士の類だと思ってたんだが違うのカ?」
「特にどちらというわけでもないな。近接でも魔法でもいけるぞ。」
これでコノフの質問は片付いたぞ…次は誰だ。
「どのような目的があって土の塊を空中に浮かせたのですか?」
「とてつもなく重い物を落としてしまったからそれを回収するためだ。」
これでチノワも片付いた。
「断面が長すぎる上に真っ直ぐすぎると思うんだが一体何で斬ったんだ?」
「武器で斬ったわけじゃなくて魔法で切断しただけだ。」
ゴンザナシもクリアだ。
「土がバラけもせずに浮かんでいる理由はー?」
「土の周りの空気を気体のまま位置を固定させたんだ。」
マトンもいけたぞ。残るはモノノフか。
「とてつもなく重い物とは何だ?」
「…限界まで魔子を吸収させたミスリルの剣だ。」
『ポノノ好ミノタイプハ?』
『優しくて顔が横に広くて笑顔がかわいい人だな。』
一つ余計なのが混ざってたが嘘は一切ついてないしこれで解決したな。
「とりあえず元の状態に戻すよ。あれの下には同じ大きさの穴があるからな。」
置換で土の塊を穴に戻した。切れ目もないし問題はないだろう。
「よし、それじゃあ張り切って地竜を討伐してくれ。」
一同は皆が皆納得できてない様子でこちらを見ている。
気が済むまで質問に答えてたらキリがないな。
「まだ聞きたいことがあるなら地竜討伐の後にしてくれ。
見事討伐できたらもう一回くらいは答えるよ。」
「非常に気になる…がそちらが本題だからな。」
「まずは地竜からだナ。さっさと倒して続きを聞こウ。」
「そうですね…いざという時はお願いします。」
「頑張ってくれ…!俺達の疑問のためにも。」
「ゴンザナシー。見学なんだからちゃんと見ようよー。」
自分のせいだが面倒なことになった…いっそ討伐失敗してくれないかな…




