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5.組合長との話

「では、私はこれで失礼します。」


アマンダは受付に戻っていった。部屋には俺と組合長の2人きりだ。

組合長は向かいの椅子に腰をかけた。


「儂はアビンザの冒険者組合長をやっとるウィリスという者じゃ。よろしくのう。

 そちらはポノさんじゃったか。図鑑を見せてもらってもいいかのう?」


うん?ここに来てから一度も名乗っていないはずなんだが…


「質問を挟んで申し訳ないが何故俺の名前を?」


「ふぉっふぉっふぉ。図鑑の裏を見たことはなかったかのう?

 そこに名前が記されておるじゃろう。」


余りにも簡単なタネに拍子抜けしてしまった。確かに見てなかった…


「本来であれば登録した後に簡単な説明を受けるからのう。

 気づかないこともあろうて。」


「盲点だった。ええと、図鑑だったな。」


アカネからもらった図鑑を出現させる。


「これは…確かにどこの国の図鑑とも色も模様も違うのう。

 さて、ここからが本題なのじゃがこの図鑑はどうやって手に入れたんじゃ?」


この世界をよく知らない状態だ、それっぽい嘘もつけないだろう。

正直に話すしかないか。


「信じてもらえるかわからないがアカネにもらったんだ。」


組合長は驚きの表情を浮かべ、同時に少し怒っているようにも見える。


「アカネ様にじゃと!?冗談では済まされんぞ?」


「証拠を出せと言われても困るが…そうだな、

 この世界でこいつを登録してる人はどれくらいいる?」


そう言って地竜のページを見せると組合長は更に驚愕の表情を浮かべた。


「あの地竜を狩ったというのか!あやつは狩れる者がいなくなってから

 ずっと魔子が増え続けてなおのこと手がつけられなくなっていたんじゃが…」


「魔子?」


「この世界での力の源じゃよ。あらゆる物に含まれていて、

 物によって含まれている量が違うんじゃ。この辺の動物で言えば

 常に草を食べているから時間が経てば経つほど強くなる。限界はあるがのう。」


「なるほど。初回に倒した時が一番ドロップ品が多かったのもそれが原因かな。」


「ドロップまで…いや、経った時間を考えれば当然かのう。

 というか図鑑にも魔子含有量が載っているじゃろう?」


「どこにそんな項目があるんだ…見当たらないぞ。」


地竜、ゾウ、キリン…どこを見ても載っていない。


「そんなはずはあるまい。確かにここに…ないのう。なんなんじゃその図鑑は…」


「俺に聞かれても…というか文句ならアカネに言ってくれ。」


少し疲れていた様子の組合長の表情が険しくなる。


「色々あって忘れておったが一つ忠告しておく。

 儂は信心深い方ではないからあまりうるさくは言わんが、

 この世界ではその名を軽々しく呼ばん方がよいぞ。ましてや呼び捨てなど!」


「そう怒らないでくれ、本人から言われたからそうしてるんだよ。

 俺だって最初は敬称くらいはつけようと思ってたんだが。」


「アカネ様と言葉を交わしたじゃと?どこまで信じていいのかわからんわい…

 そういえばアマンダが言うとったがゴンザナシの剣を受けても

 血が出なかったらしいのう。本当はお主は人族ではないのか?」


「この体は依代で本当は俺も神なんだって言ったら信じるか?」


「…俄かには信じがたい…がそうでもないと説明がつかんことが多すぎるのう。」


「信じてもらえたとして進めるが、この件は内密にしてほしい。

 身分の高い者が俺を囲おうするかもしれないし。」


「わかった。お主を登録した後、各地の組合に伝えておく。」


「助かるよ。この世界には遊びに来ただけなんだ。

 人同士の争いに絡むつもりは全くないが、

 敵対する意志があるなら相手が国だろうが徹底的に潰す。」


「自惚れ…ではないのじゃろうな。肝に銘じておくわい。

 ただ、冒険者登録するからには多少は依頼をこなしてくれるんじゃろうな?」


「内容と頻度によるかな。他の冒険者にできないならたまに手伝ってもいい。」


「ふぉっふぉ。そりゃ助かるわい。

 なに、ここの冒険者に達成困難な依頼などめったには来ん。」


「それくらいならやらせてもらうよ。そろそろ用は済んだかな?」


「地竜の素材を買い取らせてもらえんか?随分前から依頼が出ておったんじゃ。」


達成困難な依頼など…何だって?まあ恩を売っておくのも悪くないか。


「全部ってわけじゃないなら構わない。どれがいくつ必要なんだ?」


「組合にそんな金はないわい!

 角と皮を一つずつ、それぞれ1億円で買い取らせてくれい。」


「思ったより高いんだな、高い分には全く問題ないが。

 角はともかく皮はでかいぞ。ここで出しても大丈夫か?」


「部屋よりも大きいわけじゃなければ問題ないわい。

 すぐこちらの図鑑に収納するしのう。」


図鑑から三角地竜の角と大型地竜の皮を取り出す。改めて見るとでかいな。


「さすがに壮観じゃのう。名残惜しいがいつまでも見ているわけにもいかんな。」


組合長は自分の図鑑を出して素材を収納した。確かに俺のとは色も模様も違うな。


「自分の図鑑にしまうのか?組合名義の図鑑があったりはしないのか?」


「これがそうじゃよ。代々組合長に受け継がれる腕輪で出せるんじゃ。ほれ。」


組合長は左腕を見せてくる。そこには確かにそれっぽい腕輪がある。


「そういう仕組みなのか、理解した。」


「物はもらったから支払いじゃな。角と皮で合計2億じゃ。」


そう言って図鑑から引っ張り出したのは2億!という文字と

誰かのサインが入ったアタッシュケースだった…なんでだよ!


「聞きたいことがあるんだが…そのサイン?は誰のものなんだ?」


「これはアカネ様のサインじゃよ。

 悪意を持って複製しようとすると神罰が下るから偽造は不可能じゃ。」


「そのケースはウィリスの私物か?」


「私物ではない。一定以上の金額を図鑑から出す場合には

 自動的にその量に応じた器に入って出てくるというわけじゃな。」


「それは便利そうだ。そのまま図鑑に突っ込めばいいのか?」


「そうじゃ。」


試しに図鑑に入れてみると新たなページが追加され、

そこにはでかでかと所持金:2億円と記されている。


「確かに2億受け取った。」


「これで取引は完了じゃな。助かったわい。儂は仕事に戻るでの。

 わからんことがあったらアマンダにでも聞くといい。」


「こっちも色々聞けて助かったよ。それじゃあ。」


応接室を出ると夕方になっていた。結構時間を食ったな。

まだまだこの世界について知りたいことは色々あるが、

今日急いで知る必要もないだろう…たぶん。

こちらに気づいたアマンダが話しかけてくる。


「随分話し込まれていたようですね。大丈夫でしたか?」


「何についてかわからないが大丈夫だ。世話になったな。」


そうして冒険者組合を出た。宿を探すには早い気がするし飯でも食うか。

来た道を戻り、酒場に入る。


日も暮れ始めていることもあり、酒場は大盛況で喧騒に包まれていた。

テーブル席はほぼ埋まっているのでカウンター席に座る。


「いらっしゃい!何にする?」


「何かおすすめの飯と酒をくれ。」


「あいよ!うちには選ぶほどメニューはないけどな!

 すぐできるから酒飲んで待っててくれ。」


と、すぐにビールらしき酒が出てきた。


一口飲んでみると予想通りビールだった。しかもよく冷えている。

汗もかかない体では爽快感が若干足りないが、よく動いた後のビールはうまい。

気分的なものもあるんだろうな。


「お待ちどう!鹿牛のステーキと白米のセットだ!」


一杯飲み終える頃にちょうど飯が出てきた。こりゃうまそうだ。


鹿牛はシンプルに塩胡椒のみの味付けだが白米によく合う。

白米も普通に暖かいのが嬉しい。あっという間に食べ終わってしまった。


美味い飯に出会った余韻に浸っていると隣の席に一人の女が座った。

どこかで見たような顔だな…ああ、三角地竜の縄張りで素振りしてた女剣士か。


「やっと見つけたわ!」

2020/03/23

文章の細部を修正&追加しました

話の流れは大きく変わっていません。

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