41.転移と置換
町を出たが周囲にシマロバは見当たらない。
ダチョウを呼び出してラナを乗せ、シマロバが多い辺りまで走るとするか。
「わー、今日も混んでるわねー。」
「そうだな、またナワツボ平原まで行くか。」
一息つくこともなく再び走り出す。
しばらく移動していると突如ダチョウの前にヌーが出現した。
「キャッ!」
咄嗟のことで避けることができずにダチョウの足がヌーの頭部に直撃した。
ヌーの首が折れ、顔が明後日の方向を向いてスッと消える。
ダチョウはあまり体勢を崩すことなく走り続けていた。ちょっと鍛えすぎたか?
それよりもラナにダチョウの強さがバレたか…何とか誤魔化そう。
「あー、びっくりした。ねえ、このダチョウ随分強いのね?」
「こういう事があるんだな。高速移動も考え物か…」
「質問の答えになっていないんだけど?」
「こればかりは気をつけようがないな。
いや、戦闘中の人からなるべく離れて移動すれば…」
「ねえってば!」
「結局どこに再出現するかわからない以上は
速度を落とすくらいしか対策は取れないか…」
「もういいわよ…はぁ。」
何とかなったか…しかしよく考えたらダチョウが強いくらい今更って感じだな。
その後は交通事故?が起こることもなくナワツボ平原に到着した。
「ダチョウで早く着くとは言っても座りっ放しは体が強張るわねー。」
ラナは伸びをした後、屈伸運動などをして体を解している。
「じゃあシマロバ狩りをしてくるわ。
退屈だろうからどこかに出かけててもいいわよ。」
と、ダチョウを駆り、シマロバに向かって行った。
「ドウスル?今日モノンビリトシマロバ狩リ見物カ?」
今日もとは言うが、昨日は結局皆を背に乗せたり
地竜を狩りに行ったり色々してたと思うぞ…
「そうだな、ヨルムがそれでよければ木陰にでも入ってダラダラするか。」
「暑クモナイノニ木陰ニ入ル意味ガアルノカ?」
「気分だよ気分。木陰に入って寝そべったり木に背を預けたりすると
休んでるなーって感じがするだろう?」
「我ハトグロヲ巻イテイル方ガ落チ着クカラナ、ソノ感覚ハヨクワカラナイ。」
なるほどな、種族差があれば理解できないこともあるか。
「まぁ人間ってのはそんなもんだ。たぶん。」
「少シ疑ワシイガソレハ合ッテイルノダロウ。タブン。」
近くにあった立派なバオバブの木陰に入る。しかし見れば見るほど珍妙な形だ。
悪魔に抜かれて逆さまに埋められたなんて言われるのも無理は…ある気がするな。
「ソウイエバ我ノ体内カラ脱出シタ時ニ使ッタノハ
厳密ニ言エバ転移デハナイト言ッテイタガドウイウコトダ?」
確かにチラッと話したな。
ちょうど近場に手頃な大きさの岩があるな。腕を組んでポーズを作る。
「これでわかるか?」
自身に置換を使い、岩の中に移動した。
「ポノガ石化シタ!?大丈夫カ!?」
ダメだったようだ。そりゃそうなるか…
再び置換を使い岩の中から俺の石像の隣に移動する。
「…?イッタイドウナッテイルノダ?」
理解が追いついていないようだ。
「俺の認識が間違ってるかもしれないから順を追って話そう。」
「頼ム。」
「転移というのは目的地に割り込むか、もしくは
目的地に何か障害がある場合はズレるものだと思っている。」
「我モソウ思ウゾ。」
「割り込んだ場合は自分の体積の分、周りが影響を受けるだろう?
体がすっぽり収まるくらいの巨大な容器に水がいっぱいまで入っていたとして
そこに転移すると水はだいたい自分の体積の分だけ溢れ出ることになる。」
「ソウダナ。」
「割り込まない場合はその条件が液体だったら転移先は容器の外になるし、
固体だった場合は前の例と同様、水が溢れることになるよな。」
「ウム。」
「俺が使っているのは位置を入れ替える魔法だ。
目的地に何かあろうがなかろうが強制的にその位置に移動できる。
さっきの例なら水は溢れ出ないが元いた位置には水が移動してくるわけだ。」
「アソコニアル岩ト入レ替ワッタワケカ。
理解ハデキタガソレガ実現デキルカハ話ガ別ダ。」
「あと違うのは対象かな。転移だと自分もしくは触れた物もという感じだろうが
俺のは自分を含め、気体、液体、固体、無機物、生物…と多分何でもいける。」
「ヒョットシテ攻撃ニモ使エルノカ?」
「気に入らない奴の体に変な形の穴を開けたりもできるぞ。」
「随分ト凶悪ナ魔法ヲ生ミ出シタモノダナ…」
「使い方次第さ。遠くの敵を素早く倒す必要がある場合とかじゃないと
大体は殴った方が早いしな。」
「マア話ハワカッタ。少々ノ事デハ驚カナイト決メタノニ
早速驚イテシマッタナ…コチラモ何カ考エルトシヨウ。」
「悪意があってやったわけじゃないんだからお手柔らかに頼むよ。」
その後、ヨルムは唸りながら俺を驚かせる方法を考えているようだった。
別に勝負してるわけでもないんだからそこまでしなくてもいいだろうに…
青かった空が夕焼けに近くなってきた頃、ラナが戻ってきた。
「ふー、今日はたくさん狩れたと思うわ…って、何よその石像?」
「よくできてるだろ?名付けて【腕を組むポノ像】だ。」
「へー…精巧にできてる…じゃないわよ。
何で変なことにばっかり労力を使うの?」
「無駄を楽しんでこその人生だろう?」
「我ハ持ッテ帰リタイクライダガ…」
「持って帰っても邪魔だからな。元の場所に戻しておこう。」
置換を使って岩の中に戻した。
「じゃあ帰るか。」
「そうね。」
「ソウダナ。」
ラナはダチョウのまま、ヨルムは俺の首に巻きついて帰路につく。
「イツカアノ岩ガ風化シテウマク発掘サレタラ
古代遺物トシテ飾ラレルンダロウナ。」
「それは光栄だな。」
「腕を組んだ軽装のおじさんの石像なんか飾られるかしら…?」
そんな会話をしながら町に戻るのだった。




