最終話 特別な姉御
「おらー、全員、中庭に集合―!」
朝から、姉御がアパートの住人全員に、招集をかけました。
半分寝ぼけている大福ねずみを胸ポケットに突っ込み、中庭に仁王立ちしています。
それぞれの部屋から、みんなでぞろぞろと中庭に現れました。こんな招集は初めてなので、何だ何だと不安げです。主に、何か怒られることをしたかどうか考えているようで、足取りは重いようでした。
「全員集まったな。出席を取るぞー」
学校のホームルームのノリに、みんな緊張した面持ちで頷きました。
姉御は、大福はオッケー、と胸ポケットを覗き込んで頷いてから、大きく息を吸い込んで出席を取り始めました。
「座敷グレイ!」
「はい」
「りょうちゃん!」
「はいー」
「Cマーブルズ!」
「チャイ」
「Cリーダー!」
「……(ぐるっと回る)」
「ケサランパサラン!」
「……(ほわっと浮く)」
「漠巾着」
「はいはい、おります、おります」
「バーママ!」
「いるわよ~ん」
「東村!」
「はい?」
「ブチ黒」
「にゃーん」
「ブチ白」
「にゃい」
全員返事をしたのを確認すると、姉御がにまっと笑いました。
不敵な笑顔にびびった面々は、ごくりと唾を飲み込みました。
咳払いを一つしてから、姉御が口を開きます。
「チクビ山のタケミの温泉旅館買ったぞ! あっちで一緒に暮らしたいやつ、この指止まれ~!」
そして、高々と、空へ向かって指を突き出しました。
皆、何の話か分からないようで、首を傾げていましたが、温泉旅館だって、この前行ってたとこだ、買ったんだ、引っ越しだ、と声を上げて顔を見合わせながら、次第に顔に笑みを浮かべました。
いち早く事情を察した東村が、姉御にしがみつきました。
「あの旅行の時から……計画してくれていたんですね……」
それに続けと、住人全員が押し寄せて来ました。
「行く~~~~~~!!!!!!」
姉御は、のしかかって来た全員につぶされたのでした。
もみくちゃになりながら、胸ポケットの中に向かって、「お前は勿論、一緒に来い」と声を掛けます。それを聞いた大福ねずみが、フフフと笑いました。
「もちろん、なのだよ~」
姉御の手には、大福ねずみが書いたワード文書が握られていました。
おしまい
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