表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/76

28.姉御が大変だ

「あそこだ――――!」

大福ねずみは、姉御の枕元で飛び起きました。

 姉御に夢の話をしようと枕に飛び乗りましたが、姉御の姿がありません。廊下で物音がしたので、急いで空きっぱなしの襖から顔を覗かせると、姉御がスーツ姿のマッチョな男二人に抱えられていました。

「なっ? オ~~ノォァ~~~~~~」

驚いた大福ねずみは、おかしな悲鳴を上げました。


「姉御! どうなってんだよ~、起きろよ~! ちょ、誘拐? まさか、誘拐~~?」

大声で叫んでも、姉御は目を覚ましません。その時、大福ねずみの鼻は、嫌な薬の臭いを感じました。

 これは誘拐だ、と確信します。姉御は、薬を嗅がされて起きられないのです。

「誘拐だ~! 離せこのマッチョメ~ン、どうするつもりだ~!」

必死で走り回り騒ぎ立て、呼び掛けましたが、姉御の反応はなく、マッチョメンにも無視されました。

「くそ~、マッチョメンには聞こえないのか!」


 それならばと黒スーツに飛びついて顔を目指し、しっぽで目に狙いを定めましたが、鷲掴みにされ放り投げられてしまいました。

 遠投されている隙に、アパートの重い扉が閉まる音が聞こえます。

「冗談だろ!」

 戸が閉じてしまうと、小さなねずみの姿では追い付くすべがありません。すっかり部屋に閉じ込められてしまいました。とにかく、大声で助けを呼んでみますが、誰かが気付く気配はありませんでした。

「早くしないと~。どんどん遠くにいっちゃうよ~。誰か助けて~~~~」

力の限り、目を固くつぶって叫びました。泣いている場合ではないのです。


「なにかあったの?」

すぐそばで声が聞こえて、驚きと喜びで目を開きました。

 眼前の畳から、りょうちゃんの顔が生えていました。

「こ、こんにちは~」

驚きとトラウマから、とっさに挨拶することしか出来ませんでした。

「助けて、って切羽詰まった声が聞こえたから、来てみたのだけれど。今アパートには、誰もいないみたいだし」

 まさかのりょうちゃんです。他にもっと穏やかな感じのがいなかったのかよ~と思いました。怨霊化されれば、大福ねずみには成すすべがありません。


 しかし、今は緊急事態です。大福ねずみは勇気を出して、姉御が連れていかれた様子を話しました。りょうちゃんは驚いていましたが、同時に何か考え込んでいるようでした。

「おかしいわね……知らない人間の気配はしなかったし、私が知っている鍵を使って入ったはずよ。私の防犯センサーに抜かりは無いわ」

少し悔し気です。

「と、とりあえず、全身はやして下さい~」

生首きのこに限界を感じた大福ねずみがお願いすると、りょうちゃんは、にゅにゅっと畳をすり抜け、清楚な全身を現しました。


 改めて、りょうちゃんの言葉を反芻します。

「じゃあさ、内部の犯行ってこと? 特定は出来るの~? 誰の鍵だった~? っていうか、内部って具体的に誰~?」

意気込んで尋ねてみても、りょうちゃんは煮え切らない感じでした。

「あやしくなければいちいち特定したりしないから、詳しくは分からないわ。ごめんなさいね」

「姉御の気配とかは? どこに行ったとか、気配で分かったりしない?」

りょうちゃんが申し訳なさそうに首を横に振ると、大福ねずみはガックリと俯いてしまいました。俯いた鼻には、畳のい草の香が空しく届いてくるばかりです。


 その時、聞き慣れた音楽が流れてきました。姉御の携帯アラームです。映画のテーマ曲だとか言っていた、口笛を駆使した、用心棒的曲でした。大福ねずみは、希望を感じて顔を上げました。

「携帯だよ! りょうちゃん、掛けてよ~。東村だったら、人探しとか出来るよ、きっと!」

アラームを切り、りょうちゃんの前に電話を押して来ます。

「えぇー? 東村さんはちょっと……大福ちゃん、掛けられないの? メールじゃ駄目?」

 怨霊は、自分を祓った霊能者に嫌悪感を示しました。ついでに、頭から血が一筋垂れてきます。


「オイラの声は、電話じゃ届かないんだよ。悠長にメールのやり取りしてる場合かよ。緊急事態だろ! 姉御がどうなってもいいのかよ~!」

 グジグジ言うりょうちゃんに言い返しながら、大福ねずみは自分の言葉でヒートアップして、イライラマックスになりました。

「血を垂らすな! グジグジ言うな! これ以上俺を怒らせるな~!」

りょうちゃんは、大福ねずみの怒りのオーラにビビリました。

 流石に姉御さんと住んでいるだけあって、只者ではないと感じます。一気に血が引っ込みました。

「わかったわ……私も姉御さんが心配だもの!」

 二人は強く頷きあいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ