厭な席
昔アルバイトをしていたカフェでの話。
街の中心にあり、そこそこ流行っていたが、ある1席だけ皆が嫌がる席があった。
色々なお客さんがその席に座ったが、皆ソワソワし、コーヒーもほとんど残した状態で席を立つ人が多かった。
常連のお客さんに至っては、その席に座るのを凄く嫌がるお客さんもいた。
ある日、例の席に家族連れを案内した。
両親は楽しそうに談笑していたが、息子さんだけ凄く驚いた表情で机の上を眺めていた。
何か見えてるのかもしれないねと同僚と話していたところ、突然子供が泣き喚き出した。
母親がいくら止めても泣き止まず、周りの目を気にしてか、家族は会計をするために席を立った。
さっきまでは凄く大きな声で泣いていた子供が受け付けに来た瞬間に泣き止んでいる。
なんとなく子供に何があったのか聞いてみる。
「机の上に真っ赤な人がいてずっと怖い歌を歌ってたの。」
真っ赤な人?
怖い歌?
色々と聞いてみたいことはあったが、家族は足早に店を出て行った。
なんとなく、それ以来その席にはお客さんは案内しなかった。
ちなみに店はまだある。
場所は伏す。