表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/462

第59章 テストの順位が発表される話

テストの最終日、友部に、今から俺の妹に会いに家に行くから案内して欲しいと言われます。

 家に着くと、門から、静が、飛び出してきた。

 自転車から降りた友部に飛びつく。

「いらっしゃいませ。透子様」

 両腕を友部の首の後ろに回して抱きついている。身長差があるので、友部は少しかがんで右手は自転車を持ったまま左手を背中に回して抱き留めた。

「お邪魔します。静ちゃん」

「透子様、今日もきれい」

 なんだよ。ほおずりなんかしているぞ。もう、夢中だな。でも、友部も決していやそうな顔はしていない。むしろうれしそうだ。まあ、妹というものが、いつも、こんな風に自分を大好きでいてくれるなら、確かに、みんな、妹が欲しいだろうな。

 自転車をおいて、玄関に入る。ぴかぴかに掃除してある。自分の部屋は念入りに掃除しても、ほかの場所の掃除は決してやりたがらないくせに、さすがに今日は、気合いが違う。花まで飾ってあるぞ。わざわざ買ってきたのかな。

「透子様、私の部屋にどうぞ」と、階段を上がる。俺もついて行く。

「お兄ちゃんは、絶対、こかないでよ」と振り向く。

「わかってるよ。自分の部屋に行くだけだよ」

 俺の部屋は、階段を上がって静の部屋の向かい側だ。

「お茶とかも、ちゃんと、もう、部屋に用意してあるから、心配しなくていいからね。来なくていいよ」

「わかったよ」

「それから、自分の部屋の中、かたづけといてね。ドアを開けた瞬間に汚い部屋が見えたりすると申し訳ないから」

 そこまで気にするかよ。こんなにいろいろ言われると、妹がいた方がいいかどうか、さすがに微妙だな。

「わかったよ。だけど、そんなに散らかしてないよ」

「うそ、さっき、ちらっと見たらひどかったよ。あと、透子様がお帰りになるまでは、2階のトイレは、絶対、使わないでね。下のを使って」

「はいはい、わかりました」

 二人が部屋に入ったあと、こっそりトイレをのぞいてみる。なるほど、ぴかぴかに掃除してある。こっちも、花まで飾ってあるぞ。なんだよ、ペーパーまで花柄模様だ。やっぱり一流の人間は、やることが違うな。

 トイレのドアを音がしないようにこっそり閉めて、部屋に戻ってみると静の部屋から二人の楽しそうな笑い声が聞こえた。いいことですね。美少女二人、とても楽しそうに会話を楽しんでいらっしゃるようで……

 俺は、ふと思いついて、下へ降りると、機械油を持って外へ出る。友部の自転車のところへ行く。改めて見ると、本当に古そうな自転車だ。妹だったら「こんなの、いくら使えたって言われても、みっともなくて乗れない」というだろうな。ちゃんと手入れはしてあるようだが、何でキーキー言うのかな? 

 試しにオイルをさしてみる。うん、少しましになった、と思う。ついでだから、少しさびも落としてみようかな、と、俺はさび落としの油を取りに行く。たまたま、買ったばかりだったからだ。まあ、黙って落としても、叱られることはないだろう。たぶん、気がつかないかも……さび自体いつの間にかつくものだし、ぴかぴかに落とせるわけじゃなく、いくらかましになるだけだから。そう思って、小一時間、さび落としをする。いくらかはきれいになった。

 これで、俺もいくらか恩返しが出来たかな。まあ、たぶん気がつかないだろうが、と勝手に自己満足して部屋に戻る。

 少し疲れたので、ベッドに横になる。テストは終わった。やるだけのことはやったと思う。今回はベストを尽くせたという満足はあった。この満足も那加がくれたものだな、と思う。以前の俺は、努力もしないくせに結果が出ないことを嘆いてばかりいた。それに比べたら進歩はしている。ただし、努力出来たことに満足はしても、結果は、きっと出ないだろうなと思う。今、ドアを二つ向こうに挟んだところにいる、絶対美少女は、俺なんかの手の届かないところにいる存在だ。

 今回も、たぶん、勝てない。まあ、いいや。どっちにしてもあと1週間で結果が出る。そして、たぶん、まだ眞知には会えないだろう。

 いつの間にかうとうとしたらしい。ノックの音で起こされた。開けると、妹だ。

「透子様がお帰りになるわ、お見送りしましょ」

 玄関で友部が靴を履いている。

「あ、ジラ、お邪魔しました。静ちゃんのクッキー、とてもおいしかったよ。お土産にたくさんもらっちゃった」

 手に持った紙袋を掲げてみせる。妹自慢のクッキーだ。俺も食べたことがあるが、確かにおいしい。今回は、俺に、お裾分けは、、全くなしか。

 玄関の前で、友部の自転車を見送る。残念ながら、まだ、少しキーキー音がする。でも、さっきよりはずっと軽くなった。俺も、少しは役に立てたかな。

 夜の食卓は「美少女の訪問」の話で大盛り上がりだった。といっても、静が一人でしゃべっているのを、みんなが聞いているという感じだったが。たくさんスマホで取った写真を見せられた。「ほんとすごい美人ねえ」「確かに頭も良さそうだね」と、両親もしきりに感心している。

「俺も、本物の美少女に会ってみたいなあ。今度、日曜日にでもご招待しろよ」と父親が言い出した。

「お父さんたら、いい年をして美少女に会いたいなんて」

 と母親。

「そういう母さんだって、会ってみたいだろう?」

「えへへ、そうね。母さんも、正直言うと、直に会ってみたい。だって、たかちゃんの……」

 少し言いよどんだ。

「理想の人なんでしょう?」

 理想って? どういう意味だ? まあ、とにかく、友部はすべての大大地高生にとって、理想の人ではあるだろう。

「静ちゃん、今度、食事にご招待してみて。私、腕によりをかけるから」

「うん、いいよ。お誘いしてみる。また、きっとくるって、約束はしてくれたんだ」

 全く、うちの家族は、考え方がいつも前向きだ。どうして俺みたいな三流の子どもが生まれたのかなと時々思う

「そう言えば、トイレに張ってある、お兄ちゃんの単語カードを見て笑ってたよ。ずいぶん頑張ってるのねって……下のトイレにもあるんだよって言ってたら大笑いしてた」

「静、トイレをきれいにするついでに、はがしておいてくれてよかったのに……」

「お兄ちゃんのを、勝手にはがしても悪いかなって思って……」

 俺にそんな遠慮をする妹じゃないだろ。わざと残しておいて、友部に見せて俺を笑ってやろうと思ったんじゃないのか? まあ、いいですけどね。俺を笑って二人が笑い合えるんなら、お役に立ちますがね。

「でね、お兄ちゃんに言っておいてって、言われた。『私も、今回は負けないように、めいっぱい頑張ったよ』それから、『トイレの中の勉強ではちょっと負けたかもしれないけどね』って言っておいて、だって」


 その日は金曜日だったので、テストは次の月曜日から、続々とかえってきた。全体的に悪くはなかった。むしろ、よかったと言うべきだろう。100点もいくつかあったし、96点とか98点とか、前よりも難しかったにもかかわらず、前よりいい点が取れた。一方、友部は、前回ほどではなさそうだった。前回は返されるたびに、「また百点」と周囲が騒いでいるのが聞こえたが、今回は、さすがにそれほどではない感じだった。

 俺のコミュニケーション英語は、総得点は94点だったが、例の自由英作文は満点が取れて、俺は思わずにやっとしてしまった。数学は満点を逃した。最後の難問でちょっとしたミスをしてしまった。那加の予想が的中したことに喜びすぎて、答えを知っていたものだから、途中に書くべきことを不注意で抜かしてしまって減点された。ただし、友部も100点は取れなかったようだ。

 1位が取れるにしても取れないにしてもわずかな差だろうとは思えるくらいの点数はとれた。

 そして運命の日はやってきた。ある日の昼休み。順位が発表されたという話を聞いて、職員室前の廊下にかけていった。もう大きな人だかりが出来ていた。1年生の総合順位の紙を探す。あった。俺、鯨岡高志は1000点満点中966点。ダントツの……2位だった。俺の名前の上に975点、友部透子の名前が、まるであたりまえのように、輝いていた。。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ