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第35章 公約について語る話3

赤塚先輩に公約の話をしていた俺。本当にそんなにうまくいくのかと言われます

「絶対にうまくいくなんて思ってるわけじゃありません。やってみないとわからない部分は当然あります。だけど、試してみる価値はあると思っています。もしうまくいけば、楽しい学校が作れるし、失敗しても、失うものはあまりないと思いませんか。これまで通りの予算の使い方をするだけですから。俺だって、100%の自信があるわけじゃありません。だからこそ、公約を掲げて選挙運動をしてるんです。俺にやらせてみたいという人が多ければ、チャレンジするチャンスを与えてもらったと思ってがんばります」

「なるほどね」

 と赤塚先輩は俺の立て看板をもう一度眺めた。

「この大大地フェスティバルというのは何なんだい」

「ミニ文化祭のようなものです。うちの学校、文化祭は3年に一度しかないので、各クラスが参加するイベントがあってもいいかなと」

「文化祭って、それはハードル高そうだな。本当にできるのかい? 予算も必要だし、準備期間も必要だし……」

「ですから、俺はグラウンドを会場にした縁日ふうのイベントを考えているんです。土曜日か日曜日の一日きりで各クラスは屋台を出してもらうか、特設ステージでの発表をしてもらって」

「なるほど、それなら少しは……だけど、それでも難しそうだな。一番の問題は、全く予定していないイベントを学校がやらせてくれるかだな。それと、もしこれからやるとすると寒い季節だし、雨なんか降ったりすると、屋外イベントは厳しくないか?」

「そうですね。おっしゃるとおりです。実は、正直に言うと、これについては、まだ十分に詰めては考えてはいません。もう少し考えます」

「あの、先輩」

 大宮先輩の隣にいた酒出が少し身を乗り出した。

「ジラは、こんなふうに見えますけど」

 こんなふうってどんなふうだ?

「でもとっても不思議な力を持っているんです」

「不思議な力? 魔法でも使えるの?」

「いいえ、その反対。なんといっていいかわからないんだけど、とにかく、特別なことでなくて、やろうと思えば私にもできること、まったく普通のことなんですけど、実際、私も一緒にやったんですけど、やっているうちに不思議に物事がうまくいくんです、最初はびっくりすることもあるけど、後になると、ああ、こうすればよかったんだ、どうしてこれができなかったんだろう、って思えるそんなことです。ジラがやることは。うん……魔法と言えば魔法なのかもしれないけど、だから、私は、ジラのこの公約もきっと魔法みたいにうまくいくって思ってます」

「そうなんだ」

 大宮先輩は酒出の肩のあたりをもって少し引き戻した。

「わかったよ。赤塚君、こいつの言うこと、あまり気にしないで。こいつ、ジラ……って言うのは鯨岡のことだけど、の熱烈なファンで、ジラのことになるともう夢中なんだ」

「私だけじゃないです。ソフト部の1年生はみんなファンだよ」

「お前が1番だろ」

「まあ、そう言われれば、否定はしませんけど」

「わかったよ。ありがとう」

 赤塚先輩は俺のほうを向いて手を差し出した。握手する。大きな強そうな手だった。

「鯨岡君には熱心なファンがいるんだね」

「いや、俺には過ぎた言葉です」

 まったく過ぎた言葉だ。何しろ、すべて那加が仕組んだことで、俺はただ忠実に従ったに過ぎないのだから。正直、俺は後ろめたい気分だったが、それを言うわけにはいかない。だが、酒出の言葉は、的確に、那加のすごさを表現しているなとあらためて思う。

「鯨岡君のことが、よくわかってよかったよ。それじゃ、また後日、立会演説会でお目にかかろう」

 立会演説会というのは学校側が用意してくれる唯一の立候補者のアピールの場で、体育館で全校生徒の前で公約などを発表する。

「あ、はい、よろしくお願いします」

 連れ立って去っていく3人を見送りながら、俺は、「確かに、魔法かもしれない」と思ったりした。何しろ中身はこんな三流の俺が、いつの間にか、少なくとも表面上は、一流中の一流の赤塚先輩に対抗して、生徒会長に立候補しているのだから。


 次の日の昼休み、俺は神立先生に呼ばれた。


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