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第33章 公約について語る話1

まるでアイドルの握手会のようになってしまった選挙運動。そこへもう一人の会長補赤塚先輩が現れます。


 赤塚先輩は、少しニヤリとして俺のほうを振り向いた。

「まるでアイドルの握手会のようだよね。これが、鯨岡流の楽しい学校の作り方っていうわけなのかい。まあ、確かにみんな楽しそうだけど……ソフト部の女の子たちは少し困ってもいるようだけど……君がお願いしたのかい」

「いえ、手伝ってくれるというので昨日からお願いしたんですけど、俺も、まさかこんなことになるとは思ってなくて」

「だったら、もう終わりにしてもいいかい?」

 赤塚先輩の後ろから現れたのは、酒出の恋人の大宮先輩だった。もしかすると赤塚先輩と一緒に来たのかもしれない。

「あ、はい。俺もそうしようかと、思っていたところです」

「じゃあ、終わりにしよう」。

 大宮先輩は、隣にいた酒出の方を向くと、近寄った。ちょうど男の子と握手していた酒出の耳元で言う。

「というわけで、今日はもう終わりにしよう。もう、みんなと部活に行っちゃっていいよ」

 そして、今度は、集まった生徒たちに向かって言った。

「ソフト部の女子の応援の時間はおしまいです。ソフト部はもうひきあげますので、この後は、ぜひ、鯨岡くんの言葉に耳を傾けてあげてください」

 ソフト部の女子たちが引き上げると、群衆は今度は俺の周りに集まってきて、話を聞こうとする……はずもなく、ぶつくさ言いながら、潮が引くようにきれいに帰ってしまって、そこに残されたのは、俺と大宮先輩と赤塚先輩だけになってしまった。

「おやおや」

 と赤塚先輩が言った。

「みんなきれいに帰ってしまったね。君の公約より女の子との握手のほうに興味があるようだよ。せっかく、高い志を持って、鯨岡君が立派な公約を掲げても、まあ、うちの有権者なんて、この程度なんだよな」

「はあ、そうですね」

「でさ、その公約なんだけどさ。聞きたいことがあるんだよ。例えば……」

 赤塚先輩は、足元の、公約を書いた立て看板を持ち上げて、それを眺めながら言った。

「マラソン大会に賞品を出すとか、部費を増額するとか言ってるんだけど、そのお金はどこから出るの? まさか鯨岡君のポケットマネーじゃないんでしょ?」

 赤塚先輩は、少し意地悪な目をしてそう言った。たぶん、生徒会の予算については、自分のほうが知っているという自信があるのだろう。赤塚先輩は、大柄な人で、身長も180以上ある。少しいかつい感じのスポーツマンタイプだ。そんな大物先輩に、いじわるな目で見られると、俺みたいな三流は、それだけで萎縮してしまう。まして,同じぐらい背の高いスーパースターの大宮先輩にも見つめらているからなおさらだ。

 しかし、公約については、那加にきちんと勉強させられているので、俺も返答に困ることはない。

「もし、どうにもならないときは、それも考えますが、どうにかなると思っています」

「生徒会の予算は、すべて、年度当初に使い道が決められていて、余分なお金なんて一円もないんだよ。生徒総会で決まったんだから、後からなった生徒会長がどうにかできるものではないんだよ。生徒総会で予算書は配ったよね。きみも持ってるはずだよ」

「持ってますよ」

 俺が内ポケットから予算書を出したので、先輩たちは少し驚いたようだった。

「例えばこの本部費の中の通信費、2万円の予算になってますよね。今年、これ、もうなにかに使いましたか?」

 赤塚先輩は首を振った。

「いや、まだ使ってない……と思う」

「この2万円を賞品に使えばそれなりに豪華な賞品が出せると思いませんか?」

「いや、だめだ」

 と赤塚先輩が言下に否定した。

「いいかい鯨岡君、予算というものは、費目というのが決まっていて、最初の目的以外のものには使えないものなんだ」

「いえいえ、流用すればいいんです。赤塚先輩は、この予算を作った時、生徒会にいましたよね」

「ああ」

「じゃ、この通信費の決算、覚えてますか?」

「ああ、確か去年はゼロで2万円の残だった」

「その通りです。去年は1円も使わず、そのまま繰越金になってます。だったら、予算を見直して、この2万円を有効に使えるように組みなおしたほうがいいですよね。それは検討なさったんですか?」

「いや、そもそも予算というのは先生の言うとおりに作るものなんだ」

「まあ、最終的にはそうなんでしょうね。そして、先生も忙しいし、面倒くさいから、前の年と同じように組んでという状況が続いてきて、1円も使わない費目に2万円の予算をつけるというような、おかしなことが起きてきたんです」

「まあ、そうかもな」

「そんな風に予算を作っておいて、費目にこだわるなんておかしくないですか? 有効に予算を使うことが、楽しい学校を作る第一歩じゃないですか?」

「確かにな、通信費についてはそうかもしれない。でも、じゃあ、部費の増額というのは、どうなんだ。部費も毎年変わらないんだが、これを変えようとすると大変な騒ぎになる、と俺は先生から何度も聞かされた。どこの部も部費は足らない。もっと欲しいと言ってくる。だけど、もし一つの部の部費を増やそうとするとほかの部のを削らなければならなくなる。削られるのは絶対に嫌だから文句が出る。だから、部費の額を変えようとすると、けんかになって収拾がつかなくなる。だから前年と同じというのが一番無難なんだよ」

「言いたいことはよくわかります。でも、俺は、すべての部の部費を増額するんで、そう文句は出ないと思いますよ」

「そんなことができるのかよ。予算は決まってるんだぞ」

「それができるんです」


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