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28食目 歓喜と混乱と蒸し心地


 俺と後輩が夜毎に執筆を行い、その成果を世間様に曝け出しているサイト。

 "小説家になってもいいんじゃないか"と呼ばれるそこは、相当数の人間が利用している、国内最大級と言っていい小説発表の場だ。


 何千、何万という人間が己が想像を膨らませキーボードを叩き、無数の作品を世に送り出す。

 とはいえ基本的にそこはアマチュアたちによる発表の場。玉石混合入り混じっており、俺などはたぶん石の部類なのだとは思う。

 ただ中には突出した人気を得る作品も存在し、そんな注目を浴びた作品は、出版社の目に留まったりするのだ。



「こりゃ"玉"になったかもな……」



 会社から帰宅後、この日も食事を終えた俺は自室のPC前に座りこむ。

 ただ書き始めようとする前に、とりあえず一通り継続して読んでいる作品が更新されていないかを確認。

 そうして見た後輩の作品ページを眺め、俺は感嘆の声を漏らした。



「ぎょく?」



 俺の漏らした声に、部屋に居た妹は怪訝そうに反応する。

 この日もヤツは何故か俺の部屋に入り浸り、我が物顔でベッド上を占拠しスマホを弄るという、妹にあるまじき行動をしていた。

 ただ俺が突然に発した言葉が気になったようで、起き上がるとすぐ背後へ。



「見てみるといい。言わんとしている事がわかるはずだ」


「どれどれ? ……ヴあ、こりゃまたスゴイ」



 妹は目の前のPCを覗き込むと、潰れたウシガエルのような声を発する。いや実際にそれを聞いたことはないのだが。

 ともあれ妹がそんな声を出すのも当然。なにせ画面上に踊るタイトルに付けられたブックマーク数は、俺たちの記憶を遥かに超えるものであったのだから。


 つい半月ほど前までは、俺とどっこいどっこい、あるいは少し上といったくらいのものであった。

 だが今はそんな時期など無かったかのように、膨大な量のブックマークを獲得していたのだ。

 具体的に言うならば、俺より桁が2つも多くなっている。

 こうなるともう張りあうとか、先輩の意地がどうとかいう話ではなくなってくる。


 しばしPCの画面を凝視する俺と妹。

 だがそんな沈黙を打ち払うように、妹は俺の肩へと優しく手を触れ呟いた。



「お兄様、今だけは私の胸で泣いていいのよ」



 振り返ってみれば、そこに立つ妹の表情はとても穏やかだ。

 言葉の気味悪さはさて置くとして、その目を見てみると浮かんでいる感情は慈愛、……というよりも憐みに近いだろうか。



「なんなんだ、その鬱陶しいキャラ作りは」


「いや、てっきりこういう展開を望んでいるのかと思って」


「展開としては嫌いではないぞ。だがその相手が実妹という点が甚だ不満だ。せめてその胸を2サイズ大きくして出直してこい」



 確かに展開としては、非常に男冥利に尽きる部類なのだろう。

 創作上の展開としても、現実に起きる展開としても好ましい類とすら言える。

 だがコイツの貧相一歩手前な胸では、逆に切なくなってしまいそうだ。相手が妹であるという時点で、十分ゲンナリさせられるというのに。



「相変わらず無礼な兄貴ね。これから大きくなるかもしれな……」


「無理だろ、その齢で。あり得るとしたら脂肪を溜め込んだ時だが、そういう意味ではすぐ間近かもしれんな」


「それは流石に。っていうか誰がデブだっ――」



 ここ最近の夜食やら何やらで、妹は順調に脂肪を溜め込みつつある。

 今はまだ顕著に外見へ現れるほどではないが、おそらくいずれは形となってくるはずだ。運動も嫌いなことだし。

 なのでそういう意味では、こいつの胸がいずれ大きくなるのは既定路線。

 大きくなる……、というよりも肥ると言った方が正解か。


 ともあれその点ばかりは妹も看過できないようで、不満たらたら食ってかかろうとする。

 しかしその言葉が降り注いでこようかという時、不意に自身の携帯が鳴るのに気付いた。


 鳴り続けるそれを手にして見れば、相手は件の後輩。こんな時間に、妹ではなく俺にかかってくるのは珍しい。

 いったいどうしたのかと思い、通話の表示をタップ。

 耳に当て「どうしたんだ?」と聞こうとするも、それは向こうの声によって遮られた。



『せせせせ、せんぱい! 助けてくださいぃぃ』



 携帯の向こうから聞こえてきたのは、当然耳に馴染んだ後輩のもの。

 けれどその声は普段と違い、かなり切羽詰った感が強く、混乱という言葉を前面に押し出したかのよう。

 何が有ったかは知らないが、基本的には落ち着いている彼女なだけに、こうも慌てた様子というのはなかなかに珍しい。



「いったいどうしたんだ、こんな時間に珍しい」



 混乱を絵に描いたような、あわあわと言葉にならぬ声を発している後輩。

 俺はそんな彼女へと、とりあえず落ち着かせるべく近況に関する話を振ってみることに。



「そういえばブックマークが随分と伸びてるじゃないか、俺ではもう手の届かないところに行ってしまったな」


『あ、ありがとうございます。でも先輩だってきっと……、って、それなんですよ!』


「もしかして急に伸びて混乱してるのか? 大丈夫だって、喜びこそすれ怯えるような類じゃないだろうに」


『怯えますよぉ……。だって――』



 落ち着かせようと振った話だが、後輩はなおもその動揺を強める。

 確かにもしも俺がこれだけの評価を受ければ、しばらく動揺し奇行に走ってもおかしくはない。

 ただどうやら彼女、大量に受けたブックマークそのものというよりも、それによって発生した別の事柄によって混乱をしているようであった。



『本にして、売らないかって連絡が』


「本? ……もしかして、出版社から打診されたのか!?」


『は、はい……』



 これはまさかの展開だ。いや昨今の流れからすると、これだけ多くのブックマークを得たのだから、そうなってもおかしくはない。

 ともあれこの後輩、書き始めてたったの数か月で、自作を世に商品として送り出す栄誉を手にしたらしい。

 ……それにしても目敏いというか青田買いというか。


 なんにせよ、これで彼女が混乱している理由はハッキリした。

 たぶんこのままだと混乱を継続し、色々と妙なことをしでかしてしまう可能性も。

 なので俺は軽く咳払いをすると、混乱の只中を彷徨う後輩へ一つの提案を持ちかけた。



「とりあえず今から来るか? その調子だと、何をやらかすかわかったもんじゃない」


『そ、そうさせてもらいますぅ……』


「気を付けて来るんだぞ。明りの側を通ってな」



 とりあえずこっちに来させ、そこで話を聞いてやれば色々と落ち着くに違いない。

 そう考えた俺は後輩に家に来るよう促し、注意をするよう伝えてから通話を切った。


 動揺している状態で来させるのは少々不安だが、真っ直ぐ来れば交通量の多い道を通らずともいいし、まだそこまで特別遅い時間でもない。

 それに確か彼女は明日が休日、少しくらい酒を呑ませてうちで休ませれば、ある程度平静も取り戻してくれるだろう。


 その後輩が来る前に、酒と肴の準備でもしておこうかと立ち上がる。

 すると妹は会話の内容からおおよその状況を察したか、なにやら感慨深げに頷いていた。



「そっかぁ、結局先を越されちゃったか」


「先を越されたってのは正確じゃない。なにせ俺には縁のない話だからな」


「言えてる。とりあえず、あの子が来る前にリビングの片づけでもするかな。……かなり散らかってるし」



 妹からはかなり創作上のアドバイスを頂戴しているが、俺の考えた話がベースではここいらが限界。

 流石の妹もこうなっては抗うのを諦めたらしく、軽く肩を竦めカラカラと笑うばかりであった。


 ともあれ上を行ってしまった後輩を温かく見守ることにした俺たち兄妹は、苦笑を浮かべながら迎え入れる準備に動く。

 妹はリビングの掃除に、一方の俺は台所へ料理をしに。ただ冷蔵庫を開き食材をあさるのだが、これといって目ぼしい物が無い。

 あるのは普段朝食に使っている安いベーコンや卵、それと今が旬で安くなっていたアスパラ。明日の帰宅時に買い物をしようと考えていたため、碌な食材がないのだ。



「アスパラベーコンってのも有りだが、ちょっと普通過ぎるか。今は気分の落ち着くような物がいいよな……」



 おかずとしても、酒のツマミとしてもアスパラベーコンは優秀だとは思う。なにせ簡単で単純に旨いのだから。

 俺や妹などは大好きだし、おそらく後輩も喜んで食べてくれることだろう。

 というかそもそも、アレを作ろうとして買ってきたアスパラだ。


 けれど今回はもう少し頭を捻りたいところ。

 今ある食材の範疇で、酒のツマミとしても優秀で、なおかつ後輩の精神が和らいでくれそうな物。



「スープ……、じゃないな。ならコイツでいくか」



 俺はそう呟くと、冷蔵庫内のそれら食材を纏めて取り出した。


 湯を沸かし、そこに土突きを落として根元の皮を剥いたアスパラを入れ茹でる。

 湯で上がったところでアスパラを取り出すのだが、落とした土突きや剥いた皮も出汁に使えたりするため、そいつもついでに放り込んでもう少しだけ煮ておく。

 ベーコンは小さ目の短冊に切って炙っておき、火を止めた湯はザルで越し、固形ブイヨンを溶かして冷ましておく。


 その間に卵を割って溶き、ほんの少量の白ワインと冷ました出汁を混ぜる。

 耐熱の容器にベーコンと茹でたアスパラ、それと卵入りの出汁を流し入れラップをし、少しだけ穴を空けてレンジへ。



「なに、もしかして茶わん蒸し?」



 とりあえずほぼ準備は完了し、レンジの扉を閉める。

 するとそれを見届けるのを待っていたのか、いつの間にやら背後に立っていた妹は、正確に作っている物の名を当ててきた。



「俺は嬉しいぞ妹よ。ここまでの行程を見て、料理名が言えるほどに成長するとは」


「流石に馬鹿にし過ぎでしょ。いくらなんでもわかるっての」



 俺としては感動モノな言葉も、妹にしてみれば当然であったようだ。

 けれど以前のコイツであれば、きっとこの時点においてもまだ何か理解していなかったはず。あるいは無関心で出来上がった物を食べるだけかだ。

 もう何ヶ月か続ければ自主的に手伝ってくれるようになるのかと、淡い希望を抱きそうになってしまう。


 ただそれを口にする前に、家に響くチャイムの音が。

 掛かった時間からして、ちゃんとまっすぐに来たらしき後輩を迎えに、妹は玄関へと向かう。

 扉の開く音と共に、黄色い歓声を上げる妹。どうやら玄関で歓待と祝福を一通り済ます気のようだ。



「お、お邪魔します……」


「ゆっくりしていきなよ。とりあえずもう出来るから、先にリビングで待っていてくれ」



 現れた後輩は、ちょこんと台所へ顔を出しながら、申し訳なさそうに挨拶を口にする。

 今になって自身の行動が、酷く迷惑な物であるとでも思えてきたのかもしれない。

 ということは多少なりと、歩いてくる最中に平静さを取り戻しつつあるということだろうか。


 そんな彼女へ待っているよう告げ、俺はレンジの扉を開く。

 容器からラップを剥がし、楊枝を刺して火通りを見る。良い頃合いであることを確認し、皿に移し人数分のそれをリビングへ運んだ。



「茶わん蒸しにワイン? 日本酒とかじゃなくて?」


「今日はな。中身にも使っているから、こっちの方が合うと思う」



 テーブルに出来上がった茶わん蒸しを置き、人数分のグラスと白ワインのボトルを置く。これは茶わん蒸しに混ぜたのと同じ物だ。

 では早速と手を合わせ食べようとするのだが、向かいに座っていた後輩が、おずおずと声を漏らす。



「あの、先輩」


「話なら後でも聞けるさ。とりあえず今は、先にこの温かいヤツを片付けちまおう」



 彼女はなによりも、色々とぶちまけてしまいたいのだと思う。

 どうしたいか定まっているかはわからないが、とりあえず人に話を聞いてもらいたいのだと。


 とはいえ後輩を見てみると、まだかなり落ち着かない様子を見せている。

 この状態で話してしまえば、どんな爆弾発言が飛び出すかわかったモノではない。

 もう少し気を落ち着かせ、順序立てて説明できるようにするべく、まずは一旦思考を余所に向けてやった方がいいはず。


 そう考え食べるよう促すと、後輩はまず一口だけワインを口に含んでから、ソッと茶わん蒸しにスプーンを伸ばす。

 すると一瞬目を見開き、確かめるように咀嚼をしてから、もう一度だけワインへ手を伸ばした。



「ホントですね、茶わん蒸しからちょっとだけお酒の香りが」


「普通は完全にアルコールを飛ばした方がいいんだろうが、酒のツマミとしてならこういうのも有りかなって」


「しっかりお酒の味ではなく、風味が残っているという感じですね。それに卵の濃厚さも」



 後輩はそう言って表情を緩めると、ワインと交互に茶わん蒸しを食べていく。

 どうやら思いのほか気に入ってくれたらしく、きっと今の今まで頭の大部分を占めていた事柄も、今は思考の隅へ退けているようだった。


 見れば妹も交互に手を伸ばし、満足そうに咀嚼している。

 俺も温かいうちに食べてしまうかと、茶わん蒸しを一口。するとまず鼻に白ワインの爽やかな香りが抜けていく。

 それにアスパラの青い香りやサクリとした食感、ベーコンの脂と弾力。そして卵の濃厚な風味と喉を撫でる滑らかな質感。


 特に白ワインと旬なアスパラによる、初夏を思わせる爽やかな香りが心地よい。

 ついつい呑む方のワイングラスへ手が伸び、その中身を減らしていく。

 スプーンを刺し入れる度に姿を現す具材に機嫌を良くし、一心不乱に食べ進めていく。

 そうするとあっという間に容器の中身は空となり、茶わん蒸しの熱とアルコールによってほど良く温まった身体のおかげで、まったりとした空気がリビングに満ちていた。


 そんな空気を好都合と思ったか、クッションの上で脚を崩していた後輩はこちらを向き直る。

 素早い動きで正座へと体勢を直した彼女は、恐縮そうに頭を下げるのであった。



「すみませんでした、先輩。あたし、つい気が動転してしまって……」



 どうやらもうすっかり、動揺も収まったと見える。

 彼女は会社で俺に対してするように、ピシリとした動きで礼をし、謝罪の言葉を向けてきた。


 ここ最近は妹を通して随分と親しくなってきた。けれど最低限の一線は引いておくべきと考えたようだ。

 プライベートの場である以上、多少他人行儀であると思わなくもない。けれどこの律義さが俺には少し好ましく、同時に微笑ましくも思えた。

 そして彼女にとってもう一つ気になることがあったようだ。



「それに先輩の方が先に書き始めて、ずっと頑張っていたのに。その先輩を差し置いてこんな……」


「流石にそんなことまで気にしなくていいんだぞ。ちゃんと自分の手で掴んだ権利なんだ、誰に憚ることなく誇っていいんだ」


「ですが……」


「それにこんなことを言われちゃ、逆にこちらの立場が無い。まるで先輩であるのをいいことに、生意気だと言っているみたいじゃないか」



 ちょっとだけ意地悪を織り交ぜ、俺は後輩の言葉を笑い飛ばす。

 すると彼女は自身の発言が若干失言気味であったと考えたらしく、またもや慌てふためくのであった。


 そんな後輩の様子を肴にワインを一口呑んでから、「冗談だよ」と告げ、彼女のグラスにもワインを注ぎ直す。

 そして俺は自分のグラスを軽く掲げて、称賛の言葉を口にした。



「ともあれおめでとう。ここまでの努力が認められた証拠だ」


「は、はい!」



 掲げたグラスへと、後輩は軽く自身のグラスを当てる。

 チンと小気味よい音を鳴らし、互いにワインを一口。なんだかその一口は、さっきよりも少し穏やかな風味がしたようにも思える。

 たぶんこいつは、今の心情が味覚にまで現れた結果なのだろう。


 ……しかし非常に残念なのだが、俺は今のこの空気や喜びに対し、水を差す言葉を発さねばならないのであった。



「えっとだな、こんな状況で非常に言いにくいんだが……」


「なんですか?」


「うちの会社、副業が完全に禁止されてる。……たぶん、こいつもNGだと思う」



 俺は自身も正座をすると、申し訳なく思いつつ後輩にずっと引っかかっていた事を告げた。


 趣味としてやる分には小説を書くことに問題などないし、むしろ余暇を充実して過ごせるのだから歓迎してもいいくらい。

 ただその結果として、金銭が発生する出版物を作るとなれば少々話が変わってくる。

 アマチュア作家たちのイベントで売るくらいならともかく、こいつは正規の流通に乗って本屋に並ぶのだ。

 特別大きな額ではないと聞くが、数万であっても金銭が発生するのであれば、一時のものとはいえそいつは立派に副業。


 もし後々になって何かの拍子にバレた時、困るのは彼女の方だ。

 別に退職しろとまでは言われないだろうが、上司からはあまり良い顔をされない気がする。



「そ、そういえば就業規則にあったような」


「一応前もって上の方に事情を話せば、なんとか説得は出来ると思うが……。どうする?」



 それを回避するための確実な策としては、事前に上の人間へ許可を取ればいい。

 こいつさえクリアすればもう誰に遠慮することもなく、出版なり何なり出来るというもの。

 あくまでも余暇にやっていた創作が、偶然出版社の目に留まっただけ。上司もそういうことであれば、大目に見てくれるに違いない。



「それってつまり……」


「全部バラすってことだな、小説を書いてるってのを。間違いなく、どんな内容かも聞かれる」



 とはいえこの手段における最大の問題は、やはり事情をありのまま説明しなければいけないということ。

 おそらくコイツが最も後輩にとっては越え難いのだとは思う。

 個人的に彼女が書いている作品は、人前に出して恥ずかしい物ではないと断言できる。

 けれど作者当人がそう思えるかはまた別の話。あくまでも匿名であるからこそ、気楽にネットの海に放流できているという側面は否定できなかった。


 もし彼女がそれでも受けたいというのであれば、俺も一緒になって説得すればいい。

 俺の趣味もバレてしまうが、……まぁそこは仕方ないだろう。



「正直、恥ずかしいです……。諦めるしかないんですかね」



 ただ上司に打ち明けるというのは、後輩にとって許容できぬものであったようだ。

 別にプロの作家を目指している訳ではないため、どうしても優先されるのは仕事、そしてそこでの人目。

 俺に対して話すのが平気であるのは、やはり同じ書く側の人間同士という意識によるものだろうか。



「とりあえず返答の期日あたりまでしっかり考えてみなよ。折角の機会なんだからさ」



 とはいえこんな機会、早々振って沸くものではない。

 俺はワインのおかわりを注いでやりながら、しばし悩む時間が有っても良いのではと、彼女に思案を勧めてみるのであった。


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