想い人
2作品目です。
前書きの書き方がようやくわかりました!
まだまだ至らない所がある文章だとは思いますが、楽しんで読んでいただけたら幸いです!
「早く行きますよ。」
そう言って私を急かすのは大好きな貴方。
歩くのが遅く、足が短い私は遥か後ろから、その背を追いかける。
多忙な貴方は一週間に一度しかない休みを使って私を素敵なカフェに連れて行ってくれる。
その帰り道。帰ったら一緒に何をしようかと、夕焼けに見守られながら歩く。
貴方は早歩きで歩く私にそっと微笑みかけ、また背を向けて歩き出す。
今日で貴方の家に来て8年。駆け足で追いつき貴方の横顔を見上げる。
口元がいつもより緩んでいるのは気のせいだろうか。
「そんなに見つめて、貴方は本当に可愛いですね。」
愛おしげにクスリと笑う。
それはとても強い雨の日。広い家に迷い込んだ私はずぶ濡れになりながら落ち着ける場所を見つけ雨宿りをしていた。
「こんな雨の日に…。どうしたんですか?」
まだ幼い私には濡れた体のまま過ごすのはかなり危険だ。
私は困った顔で貴方を見上げる。
「風邪をひいたら大変です。雨が上がるまで家に上って行きなさい。」
この家の主人である貴方はあの時も私にこの笑顔を見せた。
これは最近知ったことだが、普段の貴方は能面を貼り付けたように一切笑わない。家に来た女性が私にこっそり教えてくれた。
家に着くと、貴方は私の足を拭いた後、
「会った時に比べてだいぶ顔の毛が白くなってしまいましたね。長生きしてくださいね。大好きですよ。」
私は犬。貴方のペット。
End.