6話 ユメハさん登場!
〜本日のお品書き〜
アミラたんかわいい
下ネタ注意
天然お姉さん
の3品です。
あれ?今回途切れるの多くないっすか?
6
ふと、目を覚ますとこちらを覗き込む女性の顔が。
「あら、アミラさん目を覚ましたしたよー」
「お館様、お加減はいかがですか?」
バツの悪そうな、そして不安そうな表情を見せるアミラとふわふわした笑顔の女性が目に写った。
「痛っつつ……あれ?なんでねそべってんだっけ俺……あ」
思い出した。レベルを低くしてた俺の後頭部めがけて扉が……そりゃあ合計レベル900と500~600なら気絶しても不思議じゃねーな。
「すみません……急に扉をあけてしまって」
頭を下げる女性……ってかユメハだ。
「いや、いいよ。扉の前で止まってた俺も悪いし。アミラも、別にいいからな」
「ぅ……はい。重ね重ね申し訳ありません」
「ん。んー今何時だ?俺が気絶してたのってどのくらい?」
キョロキョロと時計を探してみる。
「そんなに時間はたってませんよー。私がすぐ気つけの魔法かけましたから」
「そうか……」
まだふらつくが頭を振って立ち上がる。
「そういえば腹が減ったな。飯を用意してくれるか?」
まだ不安そうにするアミラに、出来るだけ笑顔を見せつつ腹を空かせてますよアピールをする。
「!はい、今日はご馳走ですよ。では、お館様、ユメハ様、どうぞ食堂へ」
▼
次々と料理が出てくる。ステーキ、パエリヤ、多分ハーブ包み焼き、フライ、サラダ……
「お、おい?こんなに食えないぞ?」
「いいんです。食べきれなかったらお館様の魔道具『万能箱』に入れればいいんですから。あそこの中なら劣化はしませんし、温めるのも魔道具を使えばいいんですから」
魔道具万能だな……いや、作ったの俺だけど。
この家の魔道具は全て俺が作ったものだったりする。昔はプレイヤーが作ったものや元々この世界にあったものが店で売られいたが、変なところで職人魂に火がつき、店売りよりもいいものを仕上げてやろうと自分でレシピ探って作り上げたんだ。お陰で一時期金欠になったがそこらのものよりは良いと思う。
……魔道具コンテストとか言うものがあって、俺が苦労して作り上げた全ての魔道具をもって応募したが悉く予選落ちしたなんて事もあったなぁ。ガチの生産職は俺の魔道具より2つか3つ上手だった。くそう。
万能型はこーゆーところが辛いなあと枕を濡らしたものだ。
「ですからお館様?たーんと召し上がってくださいませ」
心なしか声が弾んでる。……どれも旨そうだ。
「はい。それでは食べながらで結構ですので料理の説明をさせていただきますね」
「いや、お前も食べながらでいいよ?」
未だに立ってるアミラに座るよう促す。
「ですが……」
「いーっていーって。客がいる時は別だがいない時くらい一緒に食べよーぜ?はい座った座った。そんじゃーいいか?いただきまーす」
「いただきますー」
「……いただきます」
「お、このステーキ旨いな。なんの肉だ?」
「え?ああ、ステーキですね。ワイバーンです」
「ブッ!?」
「?どうされました?」
そうか、これがワイバーンか。そういえば自分で言ってたな、今日はワイバーンかなって。
「い、いや、ワイバーンってこんなに美味かったんだな、って」
「左様ですか。ワイバーンや龍系や竜系の肉は美味しいですよ」
ニッコリと微笑むアミラ。くそう可愛い。
「ん、んん。お、この串カツも旨いな。パエリヤもゴロゴロ入ってる肉がいい」
「はいそれもこれもワイバーンですよ」
ワイバーン。うまし。脂がかなりあるのにあっさりしていて気持ち悪くも頭がいなくもならない。まさにファンタジー肉代表。
「んぉ?これレバーか?パサパサに……あんまならないんだな。それに少し筋が多い。がそれにしても旨いな」
「それは良かった」
ほっと一息つくアミラ。そして黙々と食べるユメハ。影薄いなコイツ。
「ん?あーこれ睾丸だー。おいしー」
「ブッ!?」
と思ったらシモブッ込んで……別にシモだけどこれは仕方ないか。もくもくと食べるユメハ。気づいても言うなよ乙女なんだから……。
「?ごひゅじんさまどひたんですか?んくっ、食べないんですー?」
くりくりとした目で見つめてくる。口元にソース、ワイバーン睾丸の睾丸を頬張りながら。
「文脈に悪意を感じる……」
閑話休題
「あ"~もう食えねぇ」
「お腹いっぱいです~」
ユメハもゆったりと寛いでいる。
「じゃあ下げさせていただきますね」
「あ、俺も手伝うよ」
「私もー」
遠慮するアミラをよそに魔道具の中に残り物を入れていく。
「よーし、これで終わり!あとは皿洗いか」
「ダメです!これだけは!これだけは私一人で!」
残り物を入れ終わり腕まくりをして皿を取ろうとすると、横からシュババッと皿を掻っ攫われた。全ての空の皿を手にするとすぐさま洗い場に持って行ってしまった。
「……なんだったんだ?」
閑話休題
「ご主人様ー」
「ん?どうしたユメハ」
風呂も済ませ、そういえば書斎にどんな本があるんだろうかと気になり確認に来て、そのまま読書にハマっているとユメハが入ってきた。
「いえ、ちゃんとした挨拶ができてませんでしたからー。では……んんっ……ユメハ、ただ今ご主人様の元に帰りました。そして……ご帰還、とても喜ばしく思います」
改まったユメハが膝をつく。というか、普通にキリッと喋れたんだね。
「頭上げてくれ。24年だったか。済まなかった。ごめんな、連絡もせず居なくなったりして」
「いえ、アミラから聞きました。ダンジョンかそれに類似する場所に単身赴かれていたとか。傷もなくご無事で……良かった」
「あー、心配かけたな。本当にすまん……と、そうだ。ユグトランドに行ってたんだって?その時のこと聞かせてくれないか?」
「はい、あれは──」
「あ、口調戻していいぞー」
「あ、はいー。あれはですね──」
▼
あれはですねー、セイクくんが出て行ってから早22年たったころですかね。アミラちゃんと二人、人の来ないこの森でひっそりと……いえ、アミラちゃんに修行させつつでしたからそんなにひっそりしてませんでしたねー。
その頃にはもう私と戦えるくらいでしたから筋はそんなに悪くなかったと思いますよー。それに教師が私とセイク君でしたので、二人とも純粋な攻撃魔法はどうも……ツヴァ様が居てくれたら変わったんでしょうけどねー……。
……え?何でツヴァ様をって……ご主人様?忘れたのですか?ご主人様が紹介してくださったんですよー。それに、ツヴァ様やユキ様にもレベル上げ手伝って貰っていたじゃないですか。……あー24年もですものね。
あ、んん、話を戻しますねー。その時、一人の人が訪ねてきました。これまでも何人かいらっしゃったのですが、明らかに今までの人とは違った顔をされていたので、回復魔法を唱えたら、その人がすっごく怖い顔になって。「回復魔法!あ、貴女が、願いを何でも叶えてくれる館の!つ、付いてきてください!!」と引っ張られて。
いきなりでびっくりしちゃってぽかって頭を杖で叩いちゃったんですよ。
あ、これやばいな、って思って家まで運んで、起こして事情を聴くとあらたいへん。ユグトランドに疫病が蔓延していると言うではありませんか~!
……失礼しました。でですね、その人の案内でユグトランドに行く予定だったんですがまあ遅くて遅くて。仕方ないので転移魔法で移動して、蔓延している所をピックアップして、酷い人から順に片っ端からヒール&アンチカーズ&アンチドーテをかけまくってから、オールキュアテーションをかけて上げました。いやーこのレベルまできてMP回復薬をがぶ飲みする羽目になるとは思いませんでしたよ~。
幸い、死者は出ずすみました。王さまからも頭を下げられちゃって。あそこの王さまは良い人でしたよー。止める家臣に向かって「あのままでは疫病による犠牲者が後を絶たなかったであろう。発見も遅れた、封鎖も遅れた。あのままではどこまで広がっていたことか……下手をしたらこの王都も疫病に飲まれていたのかもしれんのだぞ。国民を、そしてこの国を救ってくれた聖女殿に、この英雄に頭を下げずに何時誰に下げればいいと言うのだ。下げるべき時は今此処であろう。聖女殿、重ねて、礼を言う」って。丸暗記しちゃいましたー。
それで今まで王さまの計らいで王都を散策&潜伏している疫病を退治してました。後は暇でしたので、その原因も調べて王さまに提出。犯人が邪教徒だったんですよー。捕獲あーんどオハナシをして、理由を突き止めました。邪教徒らしく邪神復活だとか何とか。
そんなこんなあって、邪神教徒たちの襲撃も無くなりましたし、疫病の元となるウイルスも全部消しましたし。もうそろそろ帰っても良いかなーって思っていた所でアミラちゃんから連絡が。もしやと思ったら大当たり。連絡がきてからすぐに発とうと思いましたが、一応王さまとかお世話になった人に挨拶を済ませてから来ました!
▼
むふーっとたわわな胸を張るユメハ。いかにも褒めて褒めてと言わんばかりだ。あ、ちょっと尻尾が見えてきた……。
「おー、凄いな。偉いぞー」
実際凄いし、褒めたいんだが……その褒めて褒めてオーラが何故か褒める気をなくさせる。
「やったー」
えへへぇとてろんとした顔になる。クッ可愛い……。
「だが1つ不可解な点があるんだが……」
「んー?何ですかー?」
ニコニコ顔で聞いてくるユメハ。
「いや、ちょっとした疑問なんだよ。ユメハって結界使えるだろ?」
「ん?はいー」
「いや、その、結界の中に、結界内に回復系魔法をかけ続ける結界ってあっただろ?」
「ほえ?ありますけど……」
「いや、一人一人に魔法かけなくても、キュアもアンチカーズもアンチドーテも、オールキュアテーションもその結界使えば良かったんじゃないか?お前のレベル的に、結界の範囲もかなり広いだろ?」
「……あ」
ユメハさんはどうやらうっかりさんのようだった。
▼
落ち込むアミラに謝り慰め、部屋に返したあと、また書斎で本を読む。
「……」
本を読む。
「……」
ぺらり。
「……」
……………
突然だが、この書斎にある本を紹介しよう。此処にある本は俺が集めた物や俺自身が書いたもの、この25年、アミラたちが買い集めてくれた本だ。……多分俺の捜索のために集めたんだろうな。最近の英雄系とか伝説系とか、最近オークションにかけられた伝説級の武器とか……後でもう一回謝っとかなきゃな。
あ、あとは俺やアミラ達の好きそうな本。料理のレシピ本だったり、調合大全だったり、スキルスクロール(フリースキルの入手方法の1つ。書いてある条件をクリアした状態で読めばスキルが手に入る)だったり。……あ、俺の知らないスキルだ。
ともかく、割と多い数の本がある。どんな呪いも解呪する解呪薬や死んでから一日以内なら生き返らせ全快させる賢者の秘薬の作り方まであり、迂闊に世に出せない物が多い。
……ハーブの育て方種類別、盆栽の育て方入門書。誰だこれ買ったの。ユメハ……はなさそう。アミラ、かぁ?うーん。
最先端、天才錬金術師ロイ・マクスウェルの研究資料か。これは後で読む。ロッピー=ホッピーの魔物学?これも。古代の遺跡の調査資料、まとめ……読もう。英雄ツヴァに迫る!……読んでやろう。伝説の英傑死す!?突然消え、帰らなかぬ人となったウノの人生……って俺じゃねーか!よ…まない!
……そういえば、俺以外のプレイヤーの存在ってどうなったんだろ。アミラの反応からして居ないみたいな反応されたけど……この書斎の本見ても、英雄はストーリー中に出てきた奴や話として聞いた過去の人ばっかりだし……絶対、居たら英雄として書かれるよな。特にプー太とか。あいつ大魔法でも大地でも何でも斬るし。(第2話、一文で出てきた神龍への一斉攻撃よりも高いダメージを一人で叩き出す人。ただしそのスキルは事実上戦闘で使えない上に使った後死にはしないが戦闘不能になるという可哀想な技)
まあ、なんだ。この世界にプレイヤーが誰もいないってのは、少し寂しいな。……ギルドのみんなも居ないならギルドホームはガランとするだろうな。
少し虚しさを感じる。
「はぁ、まあ、今更か」
伊達に12年悩んだわけじゃない。まあ、そんな事もあるさ。
むしろあいつらがいたら……あ、魔王とかになりそうな奴ら数人いたな。いなくて良かったと本気で胸をなでおろす。
ノリで魔王名乗るならまだいい。ただ悪質で排除され切ってないPKなら……。
あ、因みにべつにPK禁止なわけじゃないからな。PKもゲームの醍醐味だ。果たし状って専用アイテムもあったしな。
あとは潜伏からの暗殺とか。じゃないと暗殺者ロールとか、仕返しとかも出来なくなる。ただネットでキッズって呼ばれてる奴らとかはすぐ消えたと思う。あと明らかに悪質な実況者とかな。
有名無名関係なく排除していく運営はかっこよかったです。
と、脱線したな。
あ、俺の書いた本。低レベル縛りの山賊三兄弟に密着、24時!……居たなぁそんな奴ら。良い奴らだった。PKだったけど、低レベル縛りで自ら枷をつけて戦って、そんで勝利する。基本一人の人は狙わないなど割と沢山のオキテがあった。……はっ、また脱線。
え、えーと?……こんなもんかな、読みたいのは。
コンコン
「お館様、お茶を持ってまいりました」
「ん?ああ、ありがとう」
アミラか。両手塞がってるだろうし開けてやろう。
「ほい。ハーブティか。ありがとな」
「あ、ありがとうございます。はい。庭で栽培しているハーブですのでお味はあまり良くないかも……不味ければ作り直してきます」
「大丈夫だよ作り直さなくても。ん、香りが良いな。気分が落ち着く」
「あ、お館様……行儀が悪いので座って飲んでくださいね。それと、ハーブティにハチミツをお試しください。好みによって違いますが、美味しいですよ」
「んー。わかった」
素直に椅子に座る。美味いなあ。
「アミラも座って。一緒に飲もうぜ」
「……はい」
ここ一日で断っても無駄とわかったのか素直に座って茶を注ぐ。ハチミツを入れてみるか。最初はほんの少し。とと、ちょっと入れ過ぎたか?
「……!!これは、美味いな。ふわっとハチミツの香りとハーブの香りが混ざって、さっきらあまり味がなくスッと入ったが、今はそのスッとの中にほんのりと甘みが混じりアクセントになって……思わず語っちまうほど美味い」
「ふふ、それは良かったです」
「ああ、毎日でも飲みたいくらいだよ。これは読書が捗る。夜に一杯だけ飲んでも良いな。あとは──」
「ふふ、ふふふ。ありがとうございます。そんなに喜んでもらえるとは思いませんでした。はい。喜んで毎日作らせて頂きますね」
嬉しそうなアミラ。だがこれは本当に美味いぞ。もうちょっとハチミツを足してみる。
「……うん、今度は甘みが増して飲んでる感じがする。美味いな」
「顔にさっきの方が美味しかったって書いてありますよ?」
「え?あ、ああ……」
「ふふ、ふふふ」
「はは、ははははは」
ニコニコと微笑みふふふと笑うアミラと、少しハーブティを継ぎ足して味を調節していたウノが釣られて笑う。
二人の笑い声は夜の書斎を明るく彩り、良い雰囲気の中終わるのであった。おしまいおしまい。
「いや続くからな?」
ヒャッハー!!筆が進むぜぇ!!(夜中の間に書き上げた)
あ、ハーブティ美味しいです。一度飲んでから病みつきになりした。
ちなみに主人公の好みは私の好みです。ハーブの種類によって眠気覚ましになるものから精神を落ち着かせて安眠出来る物まで。
だが私が普段飲むのは 緑 茶 だ 。