12話 彼は忘れた頃にやってくれる。そう、彼の名は……
感想ありがとう……ありがとう……。
書く気力が少し湧いたのでパパッと書き上げました。書き終わったすぐに投稿してます。
……あれ?もう空が明るいや。ははっ
それからしばらくネタ武器を見せた後。
「もう、もういい。これ以上出さないでくれ。気持ち悪くなる」
「……俺たちの……常識、が……グフッ」
「!?相棒!しっかりしろ!アイボォォォオ!!」
「聖剣が……たく……さ……ん」
「おい!相棒!お願いだ!しっかりしてくれ!お前がいなくちゃ……俺一人でこの魔境をどう乗り越えればいいんだよぉ!!」
半泣きである。
「ん〜?具合悪いんでしょうか。今楽にして上げますよ〜!【天使の祝福と神の寵愛】〜!」
回復支援系ジョブ最高位の聖女、聖人を100レベルにして、種族を神族にすると使えるようになる至聖魔法の一つで、治した事のある全ての異常状態と死んだすぐ後なら死亡判定からも治し全快させる究極魔法をぶっ放しやがった。
するとどうなるか。
「こ、これは……!?」
「あ、相棒!」
「あ、ああ……あ?」
いまいち効果を理解出来なかったようだ。
……まあ冷静に考えれば100レベルが珍しい?この世界で、しかも神族に転生しないと出来ないような魔法を知ってる訳ないな。
あ、因みにこの魔法は主に攻撃として使われる。死亡からの回復なんて他の回復魔法でコスパ良いのあるし、何よりこれが使えるまで来ると異常状態も時間経過でしか治らないとかザラに出て来るし。
さらに使ったら再度使用できるまでに30分待つ必要がある。本当に非常事態とかヤバイ時に使われる緊急回避魔法か、アンデッド系ボスへの攻撃魔法としてしか使われなくなる可哀想な魔法だ。
また、もう一つ、ある至聖魔法もそんな不遇認定される物がある……がこれは割愛。
いや、使えるんだよ?至聖魔法。ただその中の二つが使えない……訳でもないけど使い辛いってだけで。
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「色々寄り道したけど……おい?聞いてるか?」
「……ああ」
「聞いてるぞ……ただ」
「「常識、か……」」
「?……まあいい。俺たちは娘を治し、二人は俺たちに常識を教える。これでいいな?」
「あー、おう」
「……そっちがそれがいいなら俺らからは何もない」
「そうか。じゃあ、そういう事でだ。
ああ、聞きたいことが二つあるんだが、いいか?」
「……答えられる範囲ならな」
「左に同じく、だ」
よし。聞きたいことっていうのは、書斎にあった俺の英雄譚(6話)……がどの程度の知名度が有るのかだ。
「あーっと……ウノ、まあ俺の名前なんだが……この名前に聞き覚えは?」
「は?……あ、あぁ……うーん、ないな」
「……あ"」
「……嫌な予感がするが、どうしたバファロ」
あ、ローブは大男の事バファロって呼ぶのね。それより知っているのか雷電。
「何か心当たりがあるのか?」
「あ、ああ、あるにはあるんだが……」
「遠慮せず言ってくれ」
さあ、どうだ。
「ああ……あー、っていても俺もそんなに知らねぇんだけどよ。昔、俺が子供だった頃に母さんのうちの一人──俺は孤児だったから孤児院、つまりは教会のシスターな──が、商人から又聞きした英雄譚ってか物語の、その英雄の名前がウノだったな、と」
「……はあ!?」
……ふむ。24年も経ってるし、そんなもんか。って事はあの英雄譚はいつ書かれたんだ?俺が消えて24年。で、大男が子供の時……こいつ何歳なんだ?ま、まあいいか。
少なくとも英雄譚が出てから10年は経ってそうだな。
元々関わってた国以外の人は忘れてる可能性が高く、英雄譚発祥国の……たぶん俺の家があったセイリア王国だな。その国でも若い奴なら知らない可能性が高い。
逆に貴族や王族、30代からご年配は覚えてる可能性があるって事か。
「その英雄譚ってどんな話だった?」
「……んー、確か……
どっかの国の王子を助け、その王国の首都を強大な魔物達のスタンピードから一人で守って国を救い、王子の友人となりまた会う事を誓った英雄。だが彼は戻らず、王子は今も親友の帰還を待ち続けている。って内容だったか。大体の大筋はこんな感じだったはずだ」
「……」
おい、ローブ。無言でこっちを見てくるのやめてくれ。
……多分ある国ってのはセイリア王国で決定だ。王子を魔物から助けて、護衛してるところに暗殺者が来てそれを蹴散らして。王と謁見して報酬の話をしている時にスタンピード──何らかが原因で魔物達が大量に集まり近くの町や村を襲う現象。──が起きて、それを蹴散らして行くという……
一人用のイベントがあった。
というかこの世界に来る前にやったイベントだった。やった理由は俺の最高傑作の『ニヴェルソード』を作ってる途中の息抜きだ。迫り来る魔物達を蹂躙し無双したいという不純な動機でやった。反省と後悔はしている。
だってそれが今反映されてんだもん。
「はぁ……」
「その……この英雄譚のウノって、やっぱり」
「……俺だな」
「……」
また二人は言葉をなくした。
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翌日。
え?なんで急に次の日になってんだよって?あの後は聖剣(笑)を片付けて微妙な雰囲気のままお開きになったからだよ。二つめを聞き損ねたじゃねーかチクショウ。
機会があったら聞こう。
そしてこれまた何とも言えない空気の中食事を済ませて出かける支度をしはじめた。
あ、ユメハとの仲(一方的に俺が悪い)は改善したから朝は食堂で食べてた。
ミテナイ ミテナイ ナニモ ミテナイ。ウノクン ウソツカナイ。
急かもしれないけど、ダラダラしてると本当にローブの娘の病が進行しちゃうからな。
ええと、持ってくものは、魔道具『旅路便利セット』と……。
あ、言い忘れてた。
この世界でもゲームだった時も同じなんだけど、戦闘中やイベント中はアイテムボックス(ゲームの時は普通にメニューから開けるヤツ)が機能しない。だからすぐ武装できる様にしたり、色々準備が必要なんだ。
俺はジョブのせいもあって武器は何でも使えるからいいんだけど、せめて剣とか槍とか……双盾刃は登録しとくか。
こういうプレイスタイルや、パパッと装備を変えたい時に使うのがコチラ!
魔道具『|エキップメントストレージ《おそろしく速い着替え……オレでなきゃ見逃しちゃうね》』をご紹介しましょう!
この魔道具はですね、あらかじめ装備を登録しておいて……このノリはやめよう。
まあ、簡単に言えばってかそのままの意味だな。登録したショートカットキー……音声入力を行うと装備が変更されるって言う割とみんな持ってたものだ。
形状は様々。俺のは指輪タイプ。他にも腕輪とか首輪……チョーカータイプもある。あ、又の名を変身ベルトって言ってた奴がいたな。改造人間にされて虫になるやつ。
いや、あいつのはコウモリだったか?他にもカニとかヘビとかハクチョウとか……全部アレじゃねーか。しかも劇場版。いいからクワガタとかアリとかバッタとかになれ。マダラオオトカゲでも可。まあいい。
それにいちいちアイテムボックスから出してても怪しまれる……とか危険があったりするし、財布に小銭を入れたりとかキャンプの用意とか、色々必要だしな。
……あ、でも冒険者ギルドに登録する時どうしたらいいんだ?今から登録しにきましたーって奴がそれなりにいい装備してたら変に思うだろうな。
その辺りはどうなんだろうか。
一応冒険者ギルドのギルドカードは持ってた。それもSランク冒険者のカードね。ストーリー上それがないと進めなかったりしたから。
でもそのカードをいざ出してみたら何故かランクの所が消えてた。ゲーム時代はそんなことがなかったからどうしたら良いかわからないんだよなぁ。
あ、ギルドカードの位はSが最高、その下にA、B、Cと続きFランクが最低だ。
折角のSランクが……と特に思い入れもなかったカードに対して少しやるせなさを感じてた。
あーゲーム時代のややこしい所だな。冒険者ギルドはクエストを受けたりする所だった。商人ギルドとかもあった。
対して俺らの言うギルドってのは、プレイヤーが集まる……他の言い方でクランみたいなものだ。
今後はギルドは冒険者ギルドの事。クランはクランって呼ぶようにしよう。
支度も適当に終わったし、テラスにいる大男に聞いてみようか。
「んあ?ああウノ……か」
「よう」
「……その、なんだ?ウノ」
「あー言いたいことは大体わかるぞ。でも今のままで良いから」
「そうか……」
息をフーッと吐きながら空を見上げる……疲れてんなぁ。精神的に。
「それで、何か用か?多分俺がいるって知ってたから来たんだろ」
「正解。まあ簡単な事だ。えーっと、
俺は前に冒険者ギルドに登録してたんだけど、ランクが消えちゃっててな。どうしたらいいかわからないんだ」
「あん?お前ランク無しだったのか?」
え?なにそれ。なんか言い方的にやばそう。犯罪者とか言われないよな?大丈夫?
「あーそんな顔すんな。多分思ってることと違ぇから」
「そうか……安心した」
「んじゃ説明な。ランク無しってぇのは……カードを一定期間更新してねぇヤツの事だ。後は死んだ扱いになったヤツの事だな。
ランクはわかるな?F〜Sあって……例えばCランクなら五ヶ月更新してねぇとランク無しになる。Bなら一年だな。AとSは更新は必要ないらしいが」
「ほうほう」
ならなんでSランクの俺がランク無しに?
……あ、死んだ扱いになってんのか。
「死んだ扱いで消されるヤツはあんまりいねぇが……まあ半月から一年、場合によっては二年か、生存確認が取れねぇと消される。
……消されたのか?」
「……」
「……そうか。まあ、英雄譚でも死んだ扱いだしな。消されててもおかしくねぇか」
「……ああ、そうだ、な」
そうか、英雄譚で死んだ扱い……24年間ずっと姿を見せなかったんだ。しかも誰も行き先を知らないし、出かけた様子もなかった。消されてない方がおかしいよな。
「それで?それを聞きたかった訳じゃねぇよな?」
「ん?ああ。それも聞きたかったことだけど、俺が聞きたかったのはこうなったらの後だ」
「てぇと、どうしたらいいか、か?」
「ああ、それにどうなるのかも教えてくれ」
「……あ〜?と、ちょっと待ってくれ」
ん?違ったか?どうしたらいいか、どうなるのか……あ〜ちょいややこしくなったか?
「えーとだな。まず消されてた場合なの対処な。
死亡か更新できずに消されて、また登録したいんだよな。ならカウンターでそのランクの消されたカードを提出すりゃあいい。再度登録料が必要になるし、Fランクからになるが発行してもらえる。
それから別料金が必要になるが試験を受けることができる。これは消された場合とかじゃなく、新規登録の時も同じだな。
試験は、まあ出される科目クリアしたらFからE、出来次第によっちゃあDランクまで上げてやるってものだ。
実力がありゃあすぐランク上げて高いランクのクエストをクリアして貰いたいってのが本音だな。
あと聞きたい事は?」
「あー、ありがとう。後はそうだな。その試験でCランクになる事はできないのか?」
「できねぇな。Cランクからは貴族からの依頼や護衛任務を任される事があるし協調性も大事になってくる。いろんな経験を積んでねぇとダメってギルドが決めたんだ」
「なるほど……ありがとう」
「これぐらいならいいってことよ。じゃ」
「おう。ありがとな」
のっしのっしと歩いてく後ろ姿を見ながら首をかしげる。
まだ何か聞かなきゃいけない事があった気がするんだよな。
……あ。
二つめ、たま聞き損ねた。
▼
「マスター。マスター」
「んー?なんだー」
「出かけると聞きました。私達はどうすればよろしいのでしょうか」
「んー?家で待機かなー」
「マスター。マスター」
「んー?」
「……私達は不要ですか?」
「え?」
なんだと思って振り向くとリオンが居た。無表情で全く表情が変わってない。
……筈なんだけど、不安や恐怖と言った感情が見えてくる。
「私達はホムンクルスです。いわば感情のある人形。用途は様々に渡ります。
ですがマスターは私達を必要としていないように感じます」
「え、あ、いや」
しどろもどろになる。あれ?この子こんなキャラだっけ?必要としてないように感じる?
「マスター?」
「……この家を、守ってほしい。それじゃダメか?」
絞り出せたのはこの言葉だけだった。リオンはわかったようなわかってないような、合ってるような違うような。そんなことを言いたげに瞳が揺れていた。
「……畏まりました。マスターのご命令、しかとリオンが聞き届けました」
そういってリオンは部屋から出ていった。
出ていく途中、ちらっと見えた顔は、なぜだか赤子のように感じた。
それからしばらくして、コンコンッとノックが聞こえた。
「アミラです。今よろしいでしょうか?」
「……あっ、ああ、いいぞ」
ノック音がするまで呆けていた?
なんか今日調子悪いな。
「……?失礼します」
「……」
「あの、どうかされました?」
「ん、んん。なんでもない」
「そう、ですか……あ、用事があってきたんした」
「ああ、うん。話してくれ」
すーっと深呼吸して思考を切り替えよう。
すー……はぁー……すー……
「はい。お館様が出かけると聞いたので、私もお供しようかと」
「ゴフッ!?ゴホッゴホッ」
「だ、大丈夫ですか?えっと、はい、お水です」
「あ、ありがと……」
なんかさっきと同じ雰囲気だったから思わずむせた。アミラは多少強引な言い方で、リオンの方はあくまで主人の命令に従うって感じだったけど。
受け取った水を飲んで落ち着く。落ち着け。落ち……着いた。
「ふぅ。急にどうしたんですか?」
「それは……いや、なんでもない。
アミラ、お前も家で待機」
「えー!?なんでですか!?私チョー役に立ちますよ!?ほら、料理とか!あと家事全般!」
「料理なら俺ができるし、ユメハもできるだろう。家事ったって旅してる時にそこまで本格的な家事必要ないだろ」
「え、あ、はい。……そうですね」
「それで、ついていきたい理由は?」
「出番が少なくなるからです!」
「……は?」
「もっと言えばモブになっちゃうからです!次に出てきた時に、「あれ、こんなやつ居たっけ?」とか「そう言えば居たな」みたいなの嫌なんです!」
「……はあ」
「そもそも伏線張るだけ張っといて忘れられそうとか、そういうのもあります!ほら、女神様なんてなんかそれっぽそうな事言っといて今まで全く出番ナシ!もう忘れられてますよ!」
「……おい」
「それにですよ?そもそも私の容姿、覚えてます?忘れてませんか?最近普通にし過ぎてキャラが迷子とか思ってませんよね!?」
「おい」
「わ・た・しは!ネタキャラです!ネタキャラでありかわいいかわいいヒロインです!もうメイン張ってもいいくらいです!そこんとこ夜露死苦ゥ!」
「おい存在自体がギャグ」
「ひっどい!?」
「メタなこと言ってんじゃねぇ!それになんでテメェが女神のこと知ってんだ!?ってかそもそも「こんなやつ居たな」とか誰がいうんだよ!」
「読者だよ!」
「ぶっちゃけすぎなんだよ!!あと自分でネタキャラとか言うんじゃねーよ!!夜露死苦とかホント久々に聞いたわ!!」
「……一旦落ち着きましょう。
そもそもですね。最近が真面目過ぎたんです。まじめに物語やってたんです。
でもこの話の1話に言ったじゃないですか。ネタとメタが織りなすって。
たまにはメタらないと私のキャラが!存在が!ただのヒロインになってしまいます!」
「それでいいじゃねーかよ」
「そんなのキャラが立たない!」
「しるか!エロキャラとして確立してんだろ!これ以上自分にぶっこむな!」
「カオース!」
「カオース!」
「ワンモア!カオース!」
「カオース!じゃねぇ!!」
忘れていただろう。この話がコメディ……というかメタ物語だということを……。
▼
それから一時間お説教され、
「ほら、いいなさい」
「うぅ……ごめんなざい」
「もっと」
「ずびばぜんでじだ」
「ほら、心を込めて」
「もゔいだじまぜん」
「本当に?」
「……」
「オイ」
また説教が続き、廊下にはアミラが折檻される声がいつまでも響いたそうな。
彼の名はメタ。M78星雲を構成するものである
あ、この作品はメタ注意です。メタいのが嫌いな人は避けてください(激遅注意)。
次の投稿も不定期になると思いますがよろしくお願いします。