プロローグ:ゲーム開始
ピキューーンッ、ズドドドドドドォォ。
戦場に響く銃声と爆音が俺の闘志を駆り立てる。燃えてきたぜ。
3時、12時の方向から敵機3機。トリガーを引く。ちっ、次は4時からか。キリがねえなぁ。しょうがない。フルバーストモードで一気に片づけるか。くらえゴミどもっっ。
ズギュゥゥゥゥウウンッ。
「ふぅ。終ったか。」
―――いつもそんな夢ばっか見ていた。
俺は影山元。
両親が仕事で海外に暮らしていて、今は2階建てという一人にはもったいない家で暮らしている高校2年生だ。
つけっぱなしの扇風機、カーテンのレース越しに差し込む痛いくらいの光、そろえかけのルービックキューブ、数日前に飲んだジュースの空き缶、布団からはみ出した自分の足。
俺はいつも通りの景色をみて、いつも通り額の汗をふいて、いつも通り朝食を食べず、とにかく俺にとってのザ・日常を今日もはじめようとしていた、、、はずだった。
というのもまあ当然といえば当然のことで、そういえば昨日、地球に夢にも見なかった宇宙からの来訪があったのだ。
はたして夢なのか、悪夢なのか。
まあこんなことをいきなり言われても、またいつもみたいに痛い痛いwとか思われることだろう。今はおかしいやつに聞こえるかもしれないが、とりあえず俺の話を聞いてくれ。
正確に言うと、宇宙人がやってきたのは昨日の日本時間の正午。
晴天だった東京の空を中心に、突然闇が地球に広がり始めた。
と、思っていたらなにやらSF映画で見たことがあるような物体が降ってきたのだ。
驚きと興奮のあまりそんなことぐらいしか記憶には残っていない。なぜならそのとき俺の脳の9割は、
宇宙人キタアアアアアァァァァァwwwwwww
とか、
ワロタァァァww え、うそだろwwwwwwww ヤバスw
だとかといった、草ぼーぼーのコメントの濁流に支配されていたのだから。
無論、びっくりしたのは俺だけじゃない。街どころか世界中がパニックをおこした。
おかげで昨日からテレビはたまに途切れるニュース速報と砂嵐で独占。宇宙人がやってきた場所である我が国日本では避難避難で交通事故のオンパレードだ。
いったいどこに逃げようというのだろうか。
それに、宇宙人の賢いことに世界の主要軍事機関および施設はすべて破壊され、日本どころかもはや世界中が地球侵略という信じがたい出来事を飲み込まざるを得なくなっていた。
つまり助けを呼んでも誰も来ないし、食料も自分で用意しなくてはならない状況である。
幸い俺は重度のめんどくさがり屋で運動嫌いだからあと2週間分のカップラーメンとコーラは蓄えてある。どや。まあ、コンビニからも近いし、食糧難には陥らないはずだ。
っと、ここまでが俺の状況分析。
こんなに早く冷静になり現状を把握できたのは、俺が毎日欠かさずアニメを見て二次元にみっちり浸っているからであろう。
俺の話はこのくらいにしておいて、地球侵略に関する本題に戻ろう。
―――2018年、7月2日、月曜日、朝。
「頼むぞ、ついてくれっっ。」
と、3回祈りながらテレビのスイッチを押す。
案の定テレビでも砂嵐による侵略がほぼ完了されていた。
ダメかと思いつつも、あと30分くらいはつけっぱにしておいてみることにする。
さて、今やらなければならないのはただ一つ。武器の調達だ。
俺はカップラーメンという便利すぎる食べ物のせいで自炊をしない。よって誰もが真っ先に思いつくであろう包丁という武器を手にすることは残念ながらかなわない。
まあ、宇宙人に対抗できる武器なんてないだろうということで、格好だけでも整えておこう。アニメ好きの高校生男子が一人暮らししている家に、そもそもまともな格好ができるようなものはあるのか。
何を血迷ったのか、悪いめんどくさがり屋の癖が出たのか、たまたま開けた引き出しの中に眠っていた、中2の頃ドはまりしていたエアガン一丁を、俺の主武器にすることにした。
そうだ、服装はどうしようか。家中を探索し、悩みに悩んだ末、、、
「これだ!!」
最近見ていたアニメの主人公に影響されて、高校の制服の上に黒いパーカーという中二病全開の服装に決めた。パーカーに少し緑の線が入っているのは少々気がかりだが、格好だけは、まあ主人公っぽくなったと思う。
そういえば、さっきからリビングのほうでザーザーうるさかったのが聞こえなくなったなあ。
まてよっ⁉
「そ、それであなたたちの目的は何なのかね。」
「もくてきぃい?うーん。最近ぼくたち退屈しててさあ。なんせ宇宙を何百年もだぁらだぁらと移動してるからさあ。。。」
「本当に何なんだ。こいつらの目的は。」
「それでぇ、おとといぐらいぃ、いいこと思いついちゃったのよぉ。」
「それは何なんだね。」
「楽しいゲームぅ。ききたいぃ?ききたいぃ?じゃあ教えちゃうねぇ。」
階段をダッシュかけおりてドアをあけた視線の先には、よくニュースで見るお偉いさんと、明らかに人間ではない、そう、いわゆる宇宙人が対談していた。
とりあえず深呼吸をする。
訳が分からない点がありすぎて、俺の脳の思考回路はショートをおこしそうだ。
「宇宙人は日本語を話せるんだなあ。」
なんて落ち着いて感動することはできなかったが、会話に関してだけ言えばその対談は、何の問題もなく進行しているように見えた。
俺はしばらくその前代未聞の対談を、片手でメモを取りながら集中して聞いていた。
「総理大臣さぁん。ちょっと手に力入れてみなよぉ。」
「なんだと?」
「総理っ、危険です。こいつらの言うことを聞いては、、」
「じゃぁ君がやってみるぅ?面白いからさぁ。」
「っく。こ、こうすればいいのか?うっっ、く。うわあああああっ。」
ピキューーン。パリィインッ。
俺はやっぱり夢を見ていたのか。なあんだ。そうか。だ、だって、手からビームが出るなんてそんな、s、そんな夢みたいなことがあっていいのだろうか!!
俺はそこから瞳孔を目一杯ひらいてテレビを見つめた。
「ねぇぇ?おぉもしろいでしょぉ?アハハ、アハハハハ。」
対談室からは、テレビ越しにも明らかな驚きが伝わってきた。
「あ、ありえん。そんなことが、、、いかんいかん。それで、これと君たちの目的とは何の関係があるんだね?」
「人間にもわかるようにィ、簡単にいうとぉ、、、ぼくたちとぉ、人間でぇ、戦略ゲームをやるの。」
「戦略ゲームだと?ばかばかしい。」
次の瞬間画面が光ったと思うと、総理が腹に大きな穴をあけて壁に吹っ飛んでいた。空気は完全に緊張で凍りついていた。これを見ていた世界中の人全員が、やっと状況が最悪であることを実感しただろう。
そのあとも対談は続いた。結局メモには一文字もかけなかった。
小一時間たったところで目的を理解することだけはできたようだった。宇宙人の目的をまとめると、本当にただ戦略ゲームがしたいだけのようだ。後日そのルールの詳細がニュースで流れるらしい。
これは、突然やってきた宇宙人のおかげで生き生きとした戦闘生活が送れるようになった、元・冴えない男子高校生、俺の大奮闘の物語である。
もしお時間がありましたら厳しめの評価をいただきたく存じます。
読んでいただきありがとうございました。