表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
94/280

貴女がシャーベットさん?

 差し出されたシャリアディースの手。

 一緒に来るか? って、そんなこと言われて、わたしが頷くと思ってるんだろうか、コイツは。それは、あんまりにも馬鹿にした話じゃない?


「行かない」

「本当に?」


 いや、本当にも何もないんだけど。

 シャリアディースの人間のものじゃない瞳がわたしをじっと見る。頬に手を伸ばされて、わたしはそれを避けた。


「……効かないか。今では君の方が魔力が上のようだ」

「わたしに何しようとしてたのよ」


 それには答えず、シャリアディースは唯一の出口である階段の方へ歩いていった。止めないよ。さっさと行けば。そういう思いで頷くと、シャリさんは皮肉っぽく笑って去っていった。


「さてと……ジャム、いつ起きるかな」


 氷の城の最上階には、朝の光が差し込んできていた。

 夜明けだ。ピカピカ真っ白なお日様が、まだ紫色の残る空に顔を出していた。


「どうやって帰ろ〜」

『送っていって差し上げましょうか?』

「へ?」


 面白がっている感じの、優しそうな女のひとの声がして、わたしは周りをキョロキョロ見回した。でも、誰もいないよ?


『ここよ、ここ。アスナ』

「え? えええっ!?」


 見上げてビックリ、しゃべっていたのは像だとばっかり思っていた、大きい女のひとの形をした氷だったから! まさかまさか、このお城と一体化してるほど大きな女のひとが?


「水の精霊、シャーベットさん!?」

『正確にはシャーベ・スベルベルトね。でもいいわ、シャーベットって美味しそうだし、綺麗だし、妾にピッタリだもの』


 あっ、ここにもナルシストが!


「送っていってくれるって言いましたけど、どうやって?」

『海は妾の領域、波に乗せて連れて行くわ。……シャリアディースが申し訳なかったわね。妾が寝ている合間に、色々あったみたいだわ』

「寝てたんですか」

『ええ。海の汚染が酷くって! 海竜に海を守るよう命令して、妾は海の浄化にかかりきりだったの。だから、それ以外に余計な魔力を使ってしまわないよう、体を氷に変えて寝ていたのよ。起きたのは、あんまりにも愉快な出来事が目の前で繰り広げられていたから……!』


 あれか、ハリセンでシャリアディースをぶっ叩いたことか!


「そうだったんですね。ギースレイヴンは暴れ海竜のこと、シャリアディースのせいだと思っていたみたい。海の浄化はどんな具合ですか?」

『まだまだね。海も、大地も、空気も汚れているわ。それを妾、クォンペントゥス、ソダール、そしてジフ・オンが浄化している。特に海と大地は汚染が酷くて、それに対抗するために魔力を使い、魔力が枯渇して汚染がさらに深刻になる……悪循環ね』

「それでギースレイヴンの魔力は枯渇してたんだ!」

『でも、今ここに、シャリアディースが集めた魔力の塊があるわ。それを使えば、少しはマシになるかしら』


 シャーベットさんは、虹色の珠を指差した。それは直径で三十センチくらいの大きさで、カプセルの置かれていたベッドの下に転がしてあった。扱いが雑!


「これ? じゃあ、使っちゃいましょう!」

『あら、いいの? それだけの魔力があれば、魔法が好きなだけ使えるし大金持ちにもなれるわよ』

「そんなのいらないから」

『そう。貴女なら同じくらいの魔力、持っているしね』

「げっ、精霊になっちゃう!?」


 慌ててステータスを確認する。そういえば、向こうで見て以来、一度も覗いてないや!


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】久坂 明日菜

【性別】女

【年齢】17

【所属】日本

【職業】女子高生

【適性】※※※

【技能】お菓子づくり

【属性】ツッコミ

【魔力】98/100(%)

【備考】シャリアディースによって連れてこられた・魔力が満ちると精霊になる


 ☆ ☆

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「ぎゃ〜〜〜!? ヤバい、ホントにヤバい! どうしよう、今すぐ精霊になりそう!」

『なりたくないの?』

「なりたくない! 帰りたいの! コンちゃんのお嫁さんにはならない〜!」

『あんのエロウサギ、また性懲りもなく!』

「シャーベットさぁん、何とかして〜〜!」


 シャーベットさんは「う〜ん?」と腕組みをして首を傾げた。待って待って、そんなことしたら床が崩れちゃう! 落ちちゃうから!?


『あ、ごめんなさいね。ほら、もう大丈夫。アスナ、そのアスナの魔力、元の世界に帰るために使いなさいな。ほら、これで解決』

「友だちにお別れを言いたいの! だから、それまで魔力を満タンにしたくない。時間稼ぎに、この魔力、どこかに捨てられないかなぁ?」

『なるほど、そういうこと。なら、余った魔力が落ちていくようにしてあげる。必要なときは、それを拾って使ったら、体に溜まった魔力と合わせて家に帰れるでしょう?』

「シャーベットさんナイス! ありがとう〜!」

『どういたしまして。じゃあ、海岸まで運ぶわよ。妾の掌にお乗りなさい』

「待って、ジャムがまだ起きないの……」

『魔力切れの仮死状態でしょう? でも、シャリアディースのかけた呪いは解けて、魔力はすでに溜まりつつあるわ。寝てるだけだから安心して。さ、彼は妾がつまんで乗せるから、先にアスナはここに乗って』

「は〜い!」


 シャーベットさんの差し出す掌にわたしは飛び乗った。ジャムが入ったカプセルが、シャーベットさんの指につままれて、わたしの隣に置かれた。


『さぁ、行きましょう。ついでに、虹色の珠を空に放ってちょうだい。泡になって飛んでいくわ』


 そう言うと、シャーベットさんが動き出した。氷のお城が崩れて、朝陽にダイヤモンドダストが煌めく。綺麗……! 思わずため息がこぼれちゃった。


 あんなに苦労して歩いてきた道のりが、シャーベットさんの一歩、二歩で過ぎ去っていく。すごいなぁ。


『アスナ』

「あっ、そうだった!」


 わたしはバレーのトスの要領で、虹色の珠を空にえいっと放り投げた。するとそれは弾けて泡になって、シャボン玉みたいになって飛んで行った。


「クリームくん……」


 どうか、届きますように。

 あの土地の魔力が回復して、浄化がうまく行きますように。そしていつか、また元のように緑が根付く大地になりますように。わたしには、祈ることしかできないけど、どうか幸せに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ